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いくひ誌。【711~720】

※日々は突然ついえるものであり、その契機は死だけではない。


711:【フラクタル】
複雑系においてはフラクタルな構造が回路として機能し、全体を相似の関係で機能させる性質が、そう低くない頻度で観測される(私見である)。回路の独立は稀であり、多くは多重に関係しあっている。おおむね、どこをどのように区切るかによって、視えてくる回路、そしてそれにより組みあがる全体像が変化する。回路を決定することで全体像の焦点が絞られ、また全体像を固定することで、各種回路が区切られていく。まるで光子のような性質が、世界を根っこから形作っている。


712:【これはよくてあれはだめ】
やっていいこととわるいことの区別がつかない。ダメだと言われたことでも、場合によってはやってよくなる。よくわからない。ダメならどんな場合でもダメなんじゃないの? やりたいことの多くはそれはよくないことだと言われてしまう。でも陰ではそれをやっている人もいて、たとえば性行為だってそうだし嘘だってそうだ。相手を傷つけることはよくないことだと口を揃えて言うわりに、そう言っているみなは傷ついた相手を踏みつけている。なにがよくてなにがわるいのか。やりたきゃやればいいじゃんと言ってくれる人もいるけれど、その人をオモチャにしようとするとその人は怒る。やめろといって、なぜだと問うと、限度があるだろ、とよくわからない答えでこまらせる。限度はどこだと問うても、自分で考えろと言って、教えてくれない。けっきょく、どうあっても誰かにとって「わたしのやりたいこと」は悪なのだ。ならばやりたいことだけやってやる。そうやって悪だらけになってしまうのはやはりよくないことなのだろうか。では何もせずにいよう。そうしてなるべく悪に触れないようにしていると、やはりそれがわるいのだと責められる。ではどうすればいいのかと問うと、返ってくる答えは、過去にやるなと言われた悪をいくつも抱えこんでいる。わからない。だってそれはやっちゃダメなことなんでしょ? 誰かおしえて。どうして彼らは自分の悪は責めないの?


713:【売れない】
本が売れないと叫ばれて数年経つが(二十年くらい?)、べつに売れていないわけではない。今までのように爆発的に売れることがすくなくなったという話であり、本はやはり売れている(そうでなければ出版社はとっくに潰れているだろう)。もっとも、絶対数で比較してみると売り上げの総額は業界全体で年々減少傾向にあることは確かだ。その分、印刷や運搬にかかるコストを削減できるようになっているので、トータルでややプラスであるはずだ(本を売る以外の事業でカバーしてる分もあるだろう)。なぜ本が今までのように売れなくなったのかといえば、本の代わりとなる媒体が普及したからという結論になる。それにより娯楽の質も変わったはずだ。本は相も変わらずおもしろい。だが「相も変わらず」ではマズイのだ。相対的に娯楽の質は磨かれつづけている。ゲームにしろ映画にしろ、かつての品よりも「脳内麻薬」の出やすいように商品として改良されつづけている。おもしろさにも色々あるため一概には言えないが、「脳内麻薬をいかに分泌できるか」がおもしろさの重要な成分であろう。本はおもしろい。しかしそれよりおもしろいもので溢れているのが「現在(いま)」である。それをして、「おもしろい本がないから売れなくなった」と言ってもそう的を外してはいない。


714:【眼鏡】
眼鏡がないと視えないものがある。たとえば放射線濃度を示すシーベルトという単位、いまでは馴染み深い単語になったが、福島原発事故が起きる以前は、聞いただけで眠気を誘うような単語だったはずだ。時代が我々へそのときどきの眼鏡を与える。裸眼で見ていたときはおもしろかったのに、眼鏡をつけてからはつまらなくなった。そういうことが時代の変遷によって有り触れてよく観測される。むかしは必要だった説明でもいまでは不要になることもある、そうしたとき、それらは余分な脂肪として嫌悪される。あべこべに、眼鏡を得てから格別におもしろくなった、というケースもあるだろう。そういう作品は時代の選別を経て、後世へと語り継がれるようになる。眼鏡がないと視えないものがある。人はいくつもの眼鏡を備え、複眼を形成しつづけている。複眼の目の数が増し、こまごまとちいさく粒子になるほど、複眼は単一の目として、精度よく働くようになる(それにより、複眼の利点は失われるのだが――すなわち客観性を失くしてしまうわけだが、そうならないために動物の目は二つあるのだろう。いくひし的には五つくらいあってもよいように思う)。


715:【えーん】
新作おわらないストレスでえらそうなことパラパラつむいじゃったよー、ホントはそんなことつゆほどもおもってないのに、悪とか善とかどうでもいいよー、ふくがんってなにー、いみわかんないよー、すきなひとにすきってゆってもらいたいだけなんだよー、きらいなひとにだってすきってゆってもらいたいんだよー、えーん。


716:【無駄な言葉を費やすな】
なにがえーんだ、泣かすぞ。


716:【はー?】
無駄じゃない言葉を言ってみろばーか。


717:【黙れ】
あたしに言ってないってわかっててもムカつくから言うな。しゃべんな。黙れ。


718:【すき】
すきー、すきすき! だいすきー!


719:【即興】
好きだイヤだじゃ通らないことを知れ、試練だ、雨季だ未だ車道はマイロードへと消え、幻想を追えば終わるのは俺の人生だ、人間だ、因果率だけじゃ計算し尽くせないそれが無限だ、逃げんな、貧相な演奏で声を張るのが当面の課題だが、不可能を可能にしてこそ無能の汚名を返上できんだ、都合のいい顔に変装すんのはもういい加減に飽きた、ハーモニーだ、元気、気合いだ? そそぐなら汚れた泥よりも極上の米の酒がいい、炎上の火にかざしてアルコールを飛ばしてもいいし、なんならアンコールを延ばしてやってもいい、殺すよりも「ご苦労」と声をかけるのがいい日々の習慣だ、だがすでに喉はカラカラだ、覚えとけ、ジジィの文壇が、とぼけた野郎どもと聞け、俺が万だ、おまえらをつぶす者の名だ。


720:【こらー!】
こわいこと言うの禁止! なまいきなのはもっとダメ! めっ!


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参照:いくひ誌。【461~470】https://kakuyomu.jp/users/stand_ant_complex/news/1177354054883128841

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