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いくひ誌。【311~320】

※響きあう産声の根源を求め、さまよう夜の鼓動に、お別れを言いにきたきみ、星の周回するうごめきに載る言の葉の数々は、百花繚乱に色めきたつ息、それがイブキ、生きることへの異議、忌み嫌う意味と、はぐくむことへの意気地、ウジがわき、無心。


311:【いやいや】
百年後を見据えて仕事をしている人間と仕事をしたいだって? あほか。仕事なんかしたくないわ。今だけ、この瞬間を噛みしめてたいわ。ただそれだけがだいじ。


312:【まだ偶然だと思ってる?】
これだけ判りやすく示してあげてるのにまだ分からない? まあいいけど。私が損をするわけじゃないし。


313:【いくひし、調子にのる】
「あー! あー!」「わーなに、なんなの」「おー!まー!えー!なー!」「だからなにー」「調子に乗ったろー!」「言いがかりー」「あー、ダメダメ。ちょっとそこ座れ。説教すっから」「ヤダよ、なんでよ、映画『君の名は。』のなんでもないよ並に、なんもしてないよ」「ウソだな。おまえちょっとってか大いに、看過できない規模で調子に乗ったろ、『アイアム調子』ってタイトルの雑誌の表紙に載っちゃったくらいの乗り方してたろ、ノリノリだったろ」「のってますん!」「どっちだよ!」「のってない、のってないよ、信じて」「信じたくない!」「ガンコ!」「あーあー。おまえのゆいいつの長所だった謙虚ってか『自虐の道ひた走ルンルン』がこれで消えたよおだぶつだよ」「やな言い方しないでよ、縁起わるいでしょ、むしろあれぇ? 長所ってか短所じゃないそれ?」「じゃあ短所だ」「潔よすぎ! もっと粘って、長所って言い張って!」「だって短所の塊じゃん」「認めるほかないけれども、しかし、もっとほかにあるでしょ、なんかこう末広がりで長くなりそうなところが」「ありたくない!」「ガンコ!」「まああってもいいけど、それはそれとして調子に乗ったのよくなかったね」「ねぇ、さっきからなんの話。いくひし調子にのってないよ。のりたくてものれないよ。階段登れない子犬くらいコロコロ転げ落ちちゃってるまいにちだよ」「なんでちょっとかわいい譬えした?」「だっていくひしかわいいし」「ほらまたー!」「なにさ」「無自覚か、無自覚で調子にスタンディングオベーションなのか!?」「すたんでぃんぐおべーしょんではないですけれども」「じゃあ違ってもよいのだがよ、なんかそう、言動のそこかしこからこう、なんつうのかなぁ、そこはかとなくイラっとさせる自信のつよさみたいのが見え隠れするきょうこのごろなわけ」「そう?」「気のせいではない」「先回りして否定しないでくれない?」「なら違ってもよいのだがよ」「さっきから前提くつがえしすぎじゃない?」「ほらほら、それよそれ。ツッコミもなんかいつにも増して強気ってか、ふだんならおまえがツッコまれてるわけじゃん? なしてそげな言い方するの? 傷つくでしょ」「ただの愚痴! それただの愚痴だから!」「たまにはいっしょに飲みに行ったりしようよ。さびしいでしょ」「うれしい愚痴ではありますけれども!」「やりたいことがあるからって、ふうん、そう。そうやって自分がいちばん大事なんでしょ。あたしのことなんてどうだっていいんでしょ」「否定しづらい! いや、そうだよ。いくひしはじぶんがいちばんだいじ。どうだっていいとは思わないけど、でも、やりたいことのためならあなたとの縁が切れてもいいと思ってる。ごめんね。でもさ、時間があればこうしてお酒飲むの付き合ってあげてるじゃん。それで我慢できない?」「ほらー。またそうやって上から目線で調子に乗ってー。ヒック。どうせあたしなんかさー。ヒック。どうだっていいとかさー。ヒック。陰でボロメコ言ってんでしょ」「ボロメコってなに?」「あたしの心はもうボロボロのメコメコだよ」「意味あった!?」「たまにじゃなくてさーヒック。あたしのそばにさーヒック。いてよーヒック」「ヒートテックの宣伝みたくなってない? いやいやうれしいけれども、そこまでの価値、いくひしにないよ? あ、そうだよね、ちょっと泣き上戸はいっちゃっただけだよね、うんうん、あるある。だいじょうぶ、あしたにはちゃんと忘れてるから、アルコールといっしょに抜けちゃってるから」「調子に乗ってんじゃねー!」「んー!!!!????」「ぷは。おまえごときがあたしの誘いをことわっれんはへーよ。いいは。おみゃえはみゃー」「もうグダグダってか猫! あなた猫になってるー」「もっかいちゅーさして」「んーー!!!????」「ぷは。もっかい」「いましたろ!」~~ぽわわわわーん~~「ってな夢を見たの」「気持ちわるいんだけど」「えぇー」「なあ。なんでしゃべった?」「や、どんな顔するかなって」「反応に窮するほどのドン引きだよ」「あ、照れ隠し」「調子乗んな」「のれないよー。どうしてだか踏み外しちゃうんだよね、のろうとしても」「あー、そう。ふうん」「なに」「オチ外すのもいい加減にしろ」「あちゃー」


314:【創作基準】
たくさんの物語の種がある。どれから芽吹かせようか。主として基準はふたつある。「アナフィラキシーショック波形」と「津波現象」である。ふたつは重複している部分があり、その重複した部分に合致したものからつくるようにしている。詳しい解説は割合する。ちなみに津波現象には、類似のものとして、「光陰現象」と「傷心盲目化心理」が挙げられる。光を視点にして物事を観測するとき、影はいつだって過去からこちらに伸びている。光は影によって生じている。すくなくとも虚構の世界においては。また、受け入れられない現実が目のまえに現れたとき、ひとはそれを見て見ぬふりをするが、じっさいには誤魔化しきれずに、とり溢した分をプラスの方向へ転嫁させようとする。とり溢した刺激が大きければ大きいほど、プラスの振り幅は大きくなる。未来の動向を予期するときの参考にどうぞ。


315:【識別眼】
ホンモノを見分けるための目は、本物を見たことのある人間にしか備わらない。本物は、虚構の世界には存在しない。ゆえに、ホンモノは、虚構の世界にしか存在しない。


316:【識別方法】
ホンモノを生みだす創り手を見極める方法はかんたんだ。創り手によって生みだされた作品を並べ、「どれがいちばん駄作か」を、ホンモノではないほかの者たちで投票して決めてみればいい。ホンモノを生みだす創り手により生みだされた物ならば必ず、いちばんの駄作が決まらない。


317:【無料化の行き着く先】
すべての物語、虚構が無料化したとき、いったい何が起きるのか。人々は、物語という名のジャングルに迷い込み、そこにオアシスへの地図を求めだす。自力で、食すに値する「実」を探しだすのは骨が折れる。ならば多少の対価を支払ってでも、自動で「実」を提供してくれる地図を欲するようになる。或いはナビゲーターを雇ってもいいだろう。かつては出版社が、それらナビゲーターの役割を果たし、そして雑誌が地図の役割を果たした。では、ネット社会ではどうか。ナビゲーターや地図までもがジャングルの「実」のひとつとして混在し、まったくすべてが茫洋としている。既存の考え方ではこれら迷宮から脱することはできない。ではどうすればよいのか。ジャングルを網羅し、瞬時に最適な「実」を提供してくれるような魔法のランプがこれからさき必要とされ、そして高い確率で出現する。かつて社会に印刷物が氾濫しはじめた時期、人々は社会の多様性と、そして混乱を懸念した。時が経ち、実際には多様性や混乱は起きないことが判明した。実体はことごとくが逆であり、多様性はナリを潜め、画一的な情報の断片のみが社会の表層を分厚く覆うようになった。混乱はなく、みなが一様に同様の規格にちかづいた。TV、そしてネット社会の到来したときも人々は、社会の多様性と混乱を懸念したが、じっさいは逆だった。なぜなら、多くの人々には多様な情報を扱うだけの引き出しが端から備わっていないためだ。自動販売機が登場したところで、缶コーヒーしか買わない人間にとっては、そこに多様性は見込めない。同様にして、本にしろネットにしろ、それらを扱う側の人間に多様性が備わっていなければ、或いは自覚的でなければ、魔法の蛇口が現れたとして、そこから流れ落ちるものは水ばかりとなる。見逃せないのは、魔法の蛇口が魔法の蛇口であると認知されながらにして、じっさいにはただの蛇口としてしか機能していない点である。多くの者が気づいていない。否、気づいていないだけならまだしも、勘違いをしている。自らが選び、触れていると思っているそれら情報の断片が、じっさいには単なる水道水であることを。情報の無料化がこのさき進み、あらゆる物語が無償で触れられるようになったとき、それでも人間は変わらずに、ゆえに社会は変わらない。もし変わるとすれば、それは人々が多様性を獲得し、そして魔法の蛇口を真の意味で扱えるようになったときだろう。人が変わるためには、人を変えるだけの機会が必要だ。それはときに災害(絶望)であり、娯楽(悲劇)であり、虚構(物語)である。本質は、システムにあるのではない。いつだってそれを扱う我々にあるのだ。


318:【家族になろうよ】
倉橋トモさんのマンガ「家族になろうよ」、BLありの子育てモノです、おすすめです。子育てブームきてるなこれ。


319:【確信】
いまベッドのうえで、寝たいけど寝たくないなーのきぶんを味わってたんだけど、ぴんときたわ。わし、小説好きな人間好きじゃないわ。小説は好きだけど、小説好きな人間はいやだわ。腹立つわ。でも、小説を必要としている人間は好きかもしれない。


320:【努力とはがんばることではない】
葛藤しない人間になんの価値が? 踏ん張れよ。

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