兄が語る、死んでしまった弟の話。

水は彼岸と此岸を繋いでいる。

僕が産まれる前に、人類は概ね滅亡したらしい。小さな島の、かつては中心部だったのだろう石造りの町は荒廃して静まり返り、物心ついた頃から僕の世界に存在する人間は、ただ兄一人きりだった…

縁日である八月二十日。章生が住む海辺の町では、灯籠流しが行われる。 ※若干インモラル気味です。

真っ白な部屋で人の首を切り落とす夢を見る話。

この町では時々、人が消える。 僕が知らないだけで、もしかしたら人以外も消えているのかもしれない。犬も猫も鳥も虫も木も建物も……全てが消えて、空白に『何か』が流れ込む。空白は『何か…

地獄というのは案外近しい場所にあるのだな、とぼんやり思った。

『兄』は存在しないはずだった。

自主企画『因習村座敷牢人外青年祭』参加作です。 俺の家には兄がいる。兄と言っても本当の兄弟ではない。同じ家に住んでいるだけのおそらく他人だ。ただ、あんまり自然にそこにいて、家族…

深夜零時。 大学のレポートを書いているとスマートフォンが不意に鳴り、画面に表示された文字列が『兄貴』だったので電話を取ったら、開口一番がこれである。 ※流血あります。

夏の夜の話。

近頃、妙な夢を見る。 仏間で弟と話している夢だ。家のどこかで風鈴が時折りぃんと澄んだ音を立てるので、たぶん季節は夏なのだろう。廻り廊下の向こうに見える山々の緑は色濃くて、青褪めた…

※軽い近親愛表現があります。 ※短編集『怪奇の小箱』に掲載している作品です。

俺は善良な市民だよ。 そう曰った兄の部屋で人間の死体を目撃したのは、上京した当日であった。

夕刻の赤い光が射し込む部屋に、兄の死体が転がっている。 ※流血あります。

自主企画「死別ブロマンスを書いてほしい」に寄せて書きました。 旅は道連れ世は情け。

近頃、妙な夢を見る。 ある立派な造りの日本家屋に招かれている夢である。その家がどこの誰の家であるのか、私は知らない。しかし、夢の中の私は知っていて、何かをじっと待っている。

埋めたのは父さんだよ。