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オウマガの蠱惑、あとがき

 カクヨムにて、昨年の十月下旬から連載を始めた因習村ホラーミステリー長編作品『オウマガの蠱惑』を完結させました。これまで僕が書いてきた連作短編形式ではない長編としては四作目であり、史上最大規模の、三十五万字にも及ぶ作品となります。
 まず、何にしても、読んで頂いた皆様には感謝しかありません。
 こんな素人の考えた、長ったらしい、ホラーだかミステリーだか分からない話を、最後まで読み切って頂いて、ありがとうございます。応援やコメント、レビューを頂いた方々や、Twitterで宣伝ツイートをいいね&RTで応援して頂いた方々にも、多大なる感謝を。皆様から頂いたレスポンスが、活動の励みになっておりました。本当にありがとうございました。

 以下は、僕のどうでもいい覚え書きになります。

 今作を構想したのは、二年も前のことになります。確か、『生命の膿』を完結させてから書き始めたような気がしますが、あれこれとこねくり回してどうにか完結させるまでに、一年以上もかかってしまいました。
 僕もまさか、そんなことになるとは思いもしませんでした。毎度のことですが、長編を書く時はぼんやりとした構想をどうにか文字に起こしていくだけで、どれほどの規模になるかなんて自分でも分からないのです。
 その上、学も教養も無いので、なんとかミステリー要素を入れようと試行錯誤したものの、さっぱり上手くいかず、何度も書いては直し、書いては直しを繰り返すことになりました。それでも最終的には何とか形にしたつもりですが、もし、読まれた方から「こんなのホラーじゃない」「こんなのミステリーじゃない」と思われても、仕方のないことだとは思います。一応、作品として因習村ホラーミステリーと謳ってはいましたが、謳っていいものかどうか、僕自身も未だに分かっていません。
 それもこれも、思いつきと勢いだけで書き始めたせいでしょう。
 今作の構想の根源、もといきっかけとなったのは、
〝怪異が蔓延る田舎の因習村に来訪した余所者が酷い目に遭うという話はホラーでお馴染みの展開のひとつだが、もし、その余所者が生き延びた末、もっとヤバいモノをその身に背負って復讐の為に戻ってきたとしたら?〟
 という、中二病めいた妄想をしたことが始まりでした。
 本当に、そういう話を作ってみようというだけの理由で構想を始めたので、ホラーミステリーとして仕立て上げるのに、鬼のように時間が掛かってしまったのです。
 それに加えて、九州北部の山間部にある田舎という、僕が生まれ育った場所を舞台にしたせいで、人物や情景の描写にあまりにも多くの文字数を使うことになってしまいました。
 もちろん、物語の舞台となる香ヶ地沢、朽無村は現実に存在しない架空の土地ですが、作中の様々な描写は、僕がこれまでの人生で目にしてきたものを参考にしています。故に、良い意味でも悪い意味でも思い入れがあるせいか、ありとあらゆる描写が無駄に細かく、長くなってしまいました。
 だからといって、当然、何から何まで反映させたわけではありません。僕は別に因習村なんかで育ってないし、そこに住んでいた人たちが酷い人間だったなんて事実もありません。以前の近況ノートに記したように、二割くらいは自伝のつもりで書きましたが、今作は紛れもなくフィクションです。

 しかし、同時に、僕自身がこれまで見て、感じてきたものを大いに反映させたことも、紛れもない事実です。
 それを二大巨頭とするのならば、ひとつは前述した田舎というものへの思い。もうひとつは、近年の洒落怖に対する思い、でしょうか。
 僕が洒落怖というジャンルを知ったのは、初めて携帯を持たせてもらえた高校生の頃でした。どこかの誰かが匿名で掲示板に書き込んだ怖い話という、それまで触れてきたものとはまったく種類の違う、本の形をしていない怪談集に夢中になった僕は、暇さえあれば当時のガラケーの小さな画面で、視力が悪くなるほど熱中して洒落怖を読み耽ったものでした。
 途中、離れた時期もありましたが、大人に成った今でも、僕は洒落怖というジャンルが好きで、たまに名作を読み返したり、掘り出し物を探したりすることもあります。
 ところが、有名になったせいなのでしょうか。近年、洒落怖と呼ばれるジャンルが、世間から怖いものとして見られていないように感じてきました。
 これはあくまで、僕個人の体感によるものですが、洒落怖に登場する恐ろしい怪異や怖い事象が、まるで安っぽいスナック菓子のように軽いネタとして消費されているのを多く目にするようになった気がします。
 それは、洒落怖が多くの人に認知されて有名になり、創作の種としての市民権を得て人気になったということでしょうから、喜ぶべきことですし、別にそういったものが無くなればいいだなんて過激な思想は持っていませんが、そういう流れを見ていて、「洒落怖って、もっと怖いものだったよなあ」、「昔、熱中して読んでいた洒落怖って、こんなに怖くないものだったかなあ」と思うことが多くなりました。話自体の真偽やクオリティは別にして、洒落怖というジャンルが軽く見られていることに、ぼんやりとモヤモヤしていたのです。
 そこで、
 〝嘘くさい、怖くない、馬鹿みたい。そういう風に思っているかもしれないけど、実はこういう怖いことなのかもしれないよ。裏にはこういう恐ろしい真相があるのかもしれないよ〟
 という、いわば洒落怖というものの怖さの再解釈を作中に練り込んでみた次第です。
 それが上手くいっているかどうかはわかりませんし、洒落怖も洒落怖で「貴様のような能無しによる再解釈など片腹痛いわぽぽぽぽぽテンソウメツ」と思っていることでしょうが、僕自身は作品の背骨にすることができたと思っているので、満足しています。
 他にも、僕なりの怪異や呪い、触れてはいけない禁忌などのモノに対する考え方や、その対処法、在り方なども、どうにか取り入れることができました。その一環で、ずっと出したかった霊能者のキャラクターを出せたのは嬉しかったです。
 見返してみると自分でも滅茶苦茶なキャラクターだなとは思いますが、出すならこういう奴がいいというのをふんだんに取り入れることができたので良かったです。かなり気に入っているキャラクターですし、まだ色々と書きたい部分が多いので、鳳崎は今後も作品に出していこうと思います。なので、いつになるかは分かりませんし、誰からも求められてもいないかもしれませんが、続編は書こうと思っています。できたら、シリーズにしてみたいですね。

 とまあ、妙ちきなことを長々と生意気に垂れてきましたが、最後に重ねてもう一度、皆様に感謝を申し上げます。約三カ月に渡って連載した、三十五万字にも及ぶ長編作品に、最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました。想像していたよりも多くの方々に読んで頂けて、とても嬉しいです。応援やコメント、レビューを頂いた方々や、Twitterで宣伝ツイートをいいね&RTで応援して頂いた方々にも、多大なる感謝を。皆様から頂いたレスポンスが、活動の励みになっておりました。本当にありがとうございました。



 追記

 連載中に、〝因習村〟という概念について話題になっていたので、僕なりの見解をここに示しておきます。
 僕は本来、〝因習村〟という言葉は、あまり声高に使うべきではないと思っています。
 それが既にカテゴリーとしてそういう概念、ないし意味合いを持つ言葉として確立、普及してはいると思うし、作品の説明をするに当たっての便利な表現だというのは理解しています。だからこそ、今作のキャッチコピーとして使用していますが、僕自身、田舎に住んでいる身としては、使っていてあまり気持ちのいいものではないし、同じように嫌な気持ちになる人も一定数いると思います。
 だからといって、別に言葉自体が無くなればいいとは思っていませんし、他の誰かが使っていたからといって糾弾するつもりも、言葉狩りをするようなつもりもありません。
 ただ、現実とフィクションを混同し、創作物の尺度で現実の田舎やそこに暮らす人やそこで起きた事件事故を測って差別的なことを言ったりするのは間違っていると思うので、その旨をここに表明しておきます。

 蛇足

 近況ノートの方に、今作に登場する村や家の簡略図、間取り図を掲載しています。読後になってしまいますが、ご覧頂くと今作を理解する際の一助になるかと思われます。
 また、Twitterの方で、〝#オウマガの蠱惑〟で検索して頂けると、僕が連載中にぼちぼちと呟いていた今作のトリビア的ツイートを見ることができます。物語の根幹に関わるような重要な裏設定などではなく、あくまで補足的な小ネタやくだらない人形遊びなどに過ぎませんが、お暇なときにでもご覧頂けると嬉しいです。

1件のコメント

  • 遅ればせながら読了しました。
    ラストは鳥肌がビリビリしっぱなしでした。細やかな設定や謎解きのシナリオに惹き込まれて夢中で読み進めました。
    鳳崎のファンになりました。ぜひまた登場するのを心待ちにしています。
    素晴らしい作品をありがとうございました。
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