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まるまる削ったエピローグです

 そう、いつもの書きすぎのやつです。

 今日はほんとです(笑)

●【アボリジニ転生短編小説】永遠の環 ~時を超えた魂の記憶~(約9,800字)
https://kakuyomu.jp/works/16818093091590544819

 上記の作品を1万字以内に収めるために削ったエピローグをここで公開させていただきます。

 ネタバレ……というか(あくまで私が個人的に考える)アボリジニの世界観の核心を書いていますので、本編終了後にお読みになった方が良いかもです。

 よろしくお願いいたします。

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●エピローグ:永遠の夢路 ~神々との対話~

 意識が遠のいていく中で、私の魂は不思議な領域へと誘われていった。それは、物理的な時空を超えた「永遠の今」とでも呼ぶべき場所。アボリジニの人々が「ドリームタイム」と呼ぶ、すべての時が交差する特別な次元だった。

 最初に現れたのは、虹蛇のワナガリだった。巨大な蛇体が虹色に輝きながら、空間そのものを蛇行している。

「よく来たな、二つの時を持つ者よ」

 その声は、音というよりも、意識に直接響く波動のようだった。

「私は……どこにいるのでしょう?」

「お前は今、すべての時が一つとなる場所にいる。過去も未来も、ここでは永遠の『今』として存在している」

 虹蛇の言葉とともに、空間が万華鏡のように変容していく。一瞬、私は遥か未来の地球を見た。気候変動で変わり果てた風景。そして同時に、氷河期の終わりの光景も見えている。それらは別々の時代の出来事ではなく、永遠の「今」の中の異なる表現として存在していた。

 次に現れたのは、創造神ブルマと太陽の女神ワルワリン。彼らの姿は、人の形を取りながらも、同時に自然現象そのものでもあった。

「人間たちは、時間を直線として見ることを覚えた」

 ブルマの声が響く。

「それは彼らに進歩をもたらしたが、同時に大切なものを見失わせもした」

 ワルワリンが続ける。

「永遠の循環という真実をね」

 私は理解していた。現代社会は、時間を過去から未来への一方通行として捉えることで、科学技術という果実を手に入れた。しかし、その代償として、すべてのものが繋がっているという根源的な真実を見失ってしまった。

「でも、それは取り戻せるはず」

 私の言葉に、雷鳥のガングルが姿を現す。

「その通りだ。なぜなら、それは失われたのではなく、ただ忘れられただけだからね」

 ガングルの羽ばたきとともに、稲妻が空間を走る。その光の中に、私は人類の記憶の総体を見た。科学的知識も、神話的理解も、それらはすべて同じ真実の異なる表現だった。

「記憶を持つということは、責任を持つということ」

 月の神ナガナラが、銀色の光とともに現れる。

「お前は二つの時を生きることで、その責任の重さを知った。そして今、新しい理解へと導かれている」

 確かに、私の中の理解は深まっていた。科学的な分析と神話的な理解は、決して相反するものではない。それらは、人間の意識が真実を把握しようとする時の、異なるアプローチなのだ。

 大地の精バイメが、赤土から立ち上がる。

「すべての知識は、大地の記憶の中にある。それを読み解く方法が、時代とともに変化しただけなのだ」

 私は、目の前に広がる光景に圧倒されていた。無数の時間線が交差し、編み込まれ、一つの壮大な織物を作り出している。それは単なる過去の記録ではない。未来の可能性も、同時に織り込まれているのだ。

「人類は今、重要な岐路に立っている」

 知恵の神ビンビールが語りかける。

「彼らは科学という道具を手に入れた。しかし、その使い方を誤れば、大地の循環を破壊することにもなる」

「でも、希望はあります」

 私は確信を持って答えた。

「科学的な理解と、古からの知恵が統合されれば、新しい道が開けるはず」

 すべての神々が、静かに頷く。彼らの姿が、自然現象そのものと重なって見える。雷鳴は神々の声であり、風は彼らの息遣い。川の流れは血脈であり、山々は骨格なのだ。

「お前の理解は正しい」

 虹蛇が再び語りかける。

「ドリームタイムとは、すべての時が一つに溶け合う永遠の『今』。そこでは、過去からの記憶と、未来への希望が、現在という一点で交わる」

 空間が波打ち、万物の根源的なつながりが見えてくる。DNAの二重螺旋も、銀河の渦も、アボリジニの渦巻文様も、同じ真理の異なる表現として存在している。

「これが、お前が求めていた本質的な理解」

 創造神ブルマの言葉が、空間全体に響き渡る。

「科学は『どのように』を説明し、神話は『なぜ』を物語る。その両方を知ることで、真実の全体像が見えてくる」

 私の意識は、ゆっくりと拡大していく。個人の記憶を超えて、種としての記憶へ。そしてさらに、生命そのものの記憶へ。

 そこには、驚くべき真実があった。人類の歴史は、実は永遠の「今」の中の一瞬に過ぎない。しかし同時に、その一瞬の中に、すべての可能性が詰め込まれているのだ。

「さあ、新しい旅立ちの時」

 神々の声が重なり合う。

「お前は二つの時を生きることで、橋渡しの役目を果たした。これからは、その理解を次なる形で表現する時」

 意識が、新たな次元へと移行していく。それは終わりではなく、新しい始まり。永遠の環の、次なる一歩。

 最後に見た光景は、壮大な渦巻きだった。それは銀河であり、DNAであり、アボリジニの聖なる文様であり、人類の記憶の総体でもあった。

 すべては繋がっている。
 すべては一つ。

 その究極の真実を胸に、私の意識は新たな次元へと溶けていった。永遠の「今」の中で、新しい物語が始まろうとしていた。

(了)

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