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#アウトロトロ 中断して「宙吊り」へ

 いろいろ読んでいるうちに、当初の目的地を見失うことはよくある話。目移りというわけではなく、当初目指していた山頂が、案外なだらかな丘の中腹程度だったなと、気づいたせいだ。
 かといって、丘を越えた先に目指すべき高み、もしくは低みが、あるとの確証はなく、ただ切り立ったモンブランを遠望するも、それは戦闘の壁絵のごときものではないのかとも思われる。
 五里霧中であれば、立ち込める霧に映る幻を記述する悦びもあるのだが、なにしろ空は晴れ渡っており、すべてがクリアなので「魔(間)」が浸潤する余地もなく。
 とはいえ、世界がこれほど晴れ渡っているはずは、元来ない。なにしろ、この世界とは白濁しているがゆえに在るのだから。その濁りを生み出し、濁りを澄明と捕らえる器官こそが「アーラヤ識」であると、そんなことを考えていて、はた、とノートを書く手が止まった。
 当初は3月中にまとまりをつける予定だった。それが、なんとか草稿を、と後退し、さらに読んでおくべき本が二三冊、芋づる式に出てきたのでそれを読んでメモを取りつつ、「原稿」と呼べるものは何もないまま、三月もはや四日である。
 ここで、完成期限を9月へと後ろ倒しして、今は、「宙吊り」という話をまとめている。
 こちらも、とらえようとする現象はほぼ重なっていて、ただ案外、筋立てのある物語形式を踏襲しているので、作者≠話者、という構造で書きやすい。つまり、こちらの話者は、今の私に遅れているのである。そして、今はその「遅れ」が小説の原動力となっているといった感じだ。

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