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「アウグストゥスの巫女」完結しました+設定裏話

 本日で「アウグストゥスの巫女」完結しました。読んでくださった皆様、お付き合いいただきありがとうございました。



 この話は元々、学芸員の少女が博物館の‘見えざる主’である青年と出会う物語でした。ティベリウスにあたるこの青年は中世の革命軍の英雄の傍らにいた世間知らずで甘えん坊な性格の設定で、主人公はトラウマ持ちでなかったり、博物館の場所も丘の上だったりと、色んな設定が違ってました。コラードとルネッタは名前以外、ほぼそのままですけど。
 で、賞に応募して落選して数年後、塩野七生女史の「ローマ人の物語」にハマったのがきっかけで、イタリアの孤島と古代ローマ風の設定で書き直そうと思い立ち、今の物語になりました。


 ・アルテティア
 「~ティア」をつけた地名にしようと思っていたので、そこに何を加えるか考えていたときに、英語の「art」にあたるイタリア語を「ローマ人の物語」で見つけ、決定しました。芸術とか技術とか、そういうのを地名に込めたかったので。

 ・クルトゥス島
 これはノリと語感で決めたやつです。モデルはイタリアのカプリ島。地中海に浮かぶ観光地で、実際に古代ローマ皇帝ティベリウスが隠棲した島でもあります。でもって、現地にはティベリウスがローマを恋しがっていたなんて話が伝わってるそうです。「ローマ人の物語」だと、著者は一蹴してますが。

 ・ドルミーレ
 これも語感で決めたやつですね。一応、イタリア語とかラテン語の単語を色々見たりしましたけど。

 ・ガレアルテ
 これは「アルテ」を博物館の下の町につけたかったので、そこに何かをプラスして……という感じで決めました。観光地だし博物館の下だからお土産物作る工房とかいっぱいあるよねきっと、ってふうだったような……。

 ・ルディラティオ
 語感で決めたやつ。これもイタリア語とラテン語の単語を色々見て考えた覚えがあります。

 ・ルディシ
 語感で決めたやつ。アルテティア風のものにならないように、と意識しながら考えていた覚えがあります。



 ・アウグストゥス
 世界史とかだとオクタヴィアヌスとイコールで結びつけられてしまう言葉ですが、元々は「尊きもの」という意味の単語で、そこらの神聖なもの――祠なんかにも適用できるものだったそうです。これを元老院が権力者となったオクタヴィアヌスに贈ると決定して以降、皇帝は代々この称号を名乗るようになったとか。
 ちなみにこのオクタヴィアヌス。「ローマ人の物語」では、ティベリウスにかなりひどい仕打ちをした、非道な一面を持つ政治家として描写されてます。ティベリウスの父親を勝手に反対派認定で粛清しようとするわ、そんな自分が殺そうとした相手にお前の嫁くれと言うわ、そうして義理の息子になったティベリウスには愛妻と別れて俺の娘を娶れと言うわ……。その娘さんも、幼少時からほったらかしだったくせに、何度も政略結婚させてるんですよね……。でも跡取りとなりうる息子や孫をことごとく亡くし、結局はティベリウスを後継者にするしかなかった。因果応報と思わないでもないです。

 ・ティベリウス
 こちらは登場人物としてではなく、史実のティベリウス帝についてです。
 上記に書いたように、オクタヴィアヌスに人生のいたるところで舵を握られてしまった感のある人物です。若い頃からあちこちに軍人として派遣されてはその才を発揮していたそうで、帝国北方守護の要であったとか。しかし共に転戦していた弟が戦死したり、オクタヴィアヌスとの意見の対立から隠遁生活をしたりと、軍事でも不運に見舞われていた模様。
 政治家としては、派手な政策はせず地味なものでもこつこつやっていくタイプで、それに加えて民の前にもあまり姿を見せなかったため、民にはウケがよろしくなかったというようです。さらには治世の半ばでカプリ島に引きこもってローマに戻らなかったため、議員にも不評だったとか。元老院もしくはローマそのものに興味が失せていたか、嫌われても我が道を行く人だったんでしょう。すごいメンタルですわー。
 ちなみに、裁判にしばしば足を運んでは傍聴し、時には自ら被告人に質問することもあったそうです。

 ・皇帝たち
 作中のティベリウスを含む三皇帝は、フラウィウス朝の父子がモデルです。
 暴君と名高いネロ帝の治世末期、古代ローマは内外の問題によって政情不安になり、ネロも地位を追われ、軍人たちが皇帝の座を奪いあう内乱に突入します。国外の問題とこの内乱を収めて皇帝になったのがウェスパシアヌス帝で、兄のティトゥス、弟のドミティアヌスと帝位を継いでいきました。
 でも父帝の功績は、その次の時代――いわゆる五賢帝のハドリアヌス帝の功績だったり。作中に出てくる他の皇帝の話や名前も、古代ローマ皇帝のものから借用してます。
 ちなみに、古代アルテティアの政治体制の流れや、初代国王の素性、王政期に治世の末期に姿を消した国王がいることなども、古代ローマの歴史からです。



 とりあえず、ここまで。次は登場人物について語ります。

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