短編コンテスト応募作品シリーズ“音楽の恋”、ひとまず完結しました。読んでくださった皆様、お付き合いいただきありがとうございました。
短編コンテストに参加するにあたって、どんな恋の話にしようと考えたとき、ちょうど今ハマっているクラシック音楽を題材にしようと思い立ったのが運の尽きというか、シリーズの始まりです。最初は「夢の欠片」だけで終わらせる予定だったのですが、桃矢視点も書きたくなったので書いてみて、じゃあもう真彩にも出てもらおうということで、三部作になっちゃいました。
・美伽
「鬼恋~」の梓同様、普通の女子高生をコンセプトにしてみました。ただし梓とは違って、素直になれないツンデレ系。恋を逃がす幼馴染みのテンプレ、を目指してみました。
声楽専攻なのは、「愛の夢」を歌ってもらうため。むしろそのために、この子が出来上がったのかもしれません。
・桃矢
想うことに疲れ、想ってくれている子にふらついてしまった優柔不断男・その二(その一は「鬼恋~」の司)。彼も普通の高校生を目指してました。
ピアノ専攻なのは、もちろん「愛の夢」のせい。好きな子の伴奏をするのは、王道ですからね。で、二人を崖っぷちな状況にしたくて、才能を認められて転校する設定になりました。
・真彩
誰からも愛される、少女向け漫画・ラノベ的女の子らしい女の子――がコンセプト。素直じゃない二人の距離にもどかしさを感じ、割り込めると思ってしまったのが運の尽き。でも二人を恨まないと思います。
・「愛の夢 三つの小夜曲」
リストが作曲し出版した、三つの歌曲の正式なタイトルです。曲のそれぞれのタイトルは、一番は「高貴な愛」、二番は「私は死んだ」、三番が「汝、愛せる限り愛せ」となっています。
この三曲が出版される数年前、リストはそれまで連れ添っていた女性と別れています。旦那を捨てて駆け落ちし、三人の子供を産んで十年ほど一緒にいてくれた貴族夫人だったそうでして。ほんと、リストは何を言ったんでしょうね。
恋の話がお題、なら「愛の夢」にするか――と安直に決定。その後、調べるうちに元は歌曲だったことが判明し、歌詞を引用することに。そして美伽に歌ってもらうことになりました。
・「前奏曲 嬰ハ短調」
先日引退したかのフィギュアスケート選手が、バンクーバーオリンピックのシーズンで使用していた曲です。エピソードは、大体作品中で桃矢が説明している通り。ラフマニノフの代表曲の一つです。
エピソードを知った途端、美伽に褒めてもらいたかった桃矢にぴったりだと思い、弾いてもらうことにしました。私自身、この曲が結構好きだというのもありますが。
・「死の舞踏」(リスト)
これも、作品中で真彩が説明している通り。“死の舞踏”の世界を、聖歌の旋律で表現しようとした曲です。十数分と結構長いのですが、多様な変奏なので飽きないですよ。
恋の終わりに薄々気づいている感じを出せる曲を、と考えた結果、世界の破滅を歌う旋律を用いたこの曲に決定。しかし、解釈がかなり無理やりだった気がしなくもない……。
こんな感じでしょうか。