【ラボについて】
本作読んでもらった知人から「大学の理系のシステムになじみがなかったら、ラボのあたりの描写って感覚がつかみにくい」と指摘されたので、書いてみました。
コンパルさんは大学では理学部の化学系の学科に所属しています。「ラボ」はもちろんラボラトリーの略で「研究室」と同じです。意味はふたつあり、研究するための部屋、あるいは研究グループを指します。でも感覚的には、ラボは場所、研究室はグループを指すことが多いですね。
大学の組織では、たいてい、学部の下に複数の学科が存在します。学生は三年生あるいは四年生になると、所属する学科のなかにいくつもある研究室のどれかひとつに配属され、(卒業)研究を始めることが多いです。「研究室」は教授ひとりに准教授以下の職員がセットになった小さな研究グループであることが多く、教授の名を冠して「〇〇研究室」と呼ばれます。大学によってはひとつの研究室に複数の教授が所属している場合もあり(大講座制)、そのときはメインとなる教授の名前をとって××研究室と呼ばれます。
コンパルさんの通うA大学のヒワダ先生の研究室「ヒワダ研」には、ヒワダ教授、茶山准教授、助手の朱鷺さんの三教員がいて、そこに博士課程の大学院生が二人、修士課程の大学院生が四人、学部生(四年生)が四人所属し、日夜研究に勤しんでいる設定です。「研究室」は「講座」と呼ばれる場合もあります。研究室と呼ぶときには先生の名前が、講座と呼ぶときには研究の内容がつくことが多いですね。たとえば「物質循環講座」である「ヒワダ研」のような。
化学系の研究室は化学実験をする必要があるので、学生たちのデスクワーク部屋以外に、実験装置をそろえた部屋を持っています。その部屋のことを実験室あるいはラボと呼びます。研究室のメンバーが多いと、ラボも大きなものが複数必要になります。
学生たちがデスクワークをする部屋は居室と呼ばれることがあります。学生部屋と言ったりもします。化学系の研究室は実験スペースが必要だったり、大型の実験装置を置くスペースが必要だったりで、場所が足りないことが多いです。学生の居室が完全に勉強スペースになっていることは少なく、むしろ、実験室の隅に学生用のデスクが並んでいることが多いです。
それでも、研究打ち合わせや報告会、あるいは外部の研究者を招いてのセミナーなどを開催するのに、会議室的な部屋がひとつはあることが多いです。そういう部屋はときに飲み会部屋になったりします。それが「ラボ飲み」です。実験室は薬品を使うので、飲食禁止のところもありますが、セミナー室(や学生部屋)ではお昼を食べたり、仮眠をとったり、住居スペースのような使われ方もします。
研究内容にもよりますが、一連の作業に一日以上時間のかかる実験系もあり、不幸にもそのような実験を含むテーマを与えられた学生はしばしば研究室に泊まり込みを強いられます。実験の合間にパイプ椅子の上で仮眠を取ることもしばしばです。寝袋を持ち込む人もいます。