数日ほど、彼女以外の作品も含めて、カクヨムに投稿された色々な小説を読んでいるうちに、カクヨムの生誕を記念した大きな企画が開催されていることに気付き、その中のひとつは、小説なんて…

　あてもなく、というわけではない。たぶん自分はここへと向かっている、とそんな予感に従ったのだ。桜並木を抜けると、そこには毎日のように見てきた建物がある。深い闇夜を背景にしてそびえ…

　あの小説のように、名前はまだない、とでも言いたいところだが、大体人間社会と交われば、なんらかの名前を付けられる。ついさっきまで相棒だった葛原からも、オレはひどくセンスのない名前…

　緋色くんは、私の初恋だった。すくなくとも自覚している限りでは。 　明確にそれが恋だと気付いたのは、小学校低学年がもうすぐ終わりを迎えようとしている頃だった。そのある一時期、決し…

　別れましょう。たぶん私たちは出会うべきではなかった。 　ふと言葉が、よみがえる。別れの際、泣くことも、怒ることもなく、彼女が俺に告げた言葉は、ひんやりとしていた。こんな未来を知…

　私の活動している創作サイトで、最近盛り上がっている企画がある。そのサイトの六周年を記念して、数日に一回、約一か月の間、出題されたテーマに沿ってショートショートや掌編小説を書く、…

　私、何歳だ、と思う。 　という彼女の問いに、僕が八歳と答えた結果が、さきほどの言葉だ。つまりその言葉が確かならば、彼女は八十八歳、という年齢になる。八十八。その数字の、奇妙な符…

　端正な顔立ちの彼が楽しそうに話す姿を見ながら、このひとの楽しげな言葉に、彼女が笑っている顔を想像して、胸が、ちくり、と痛み、無性に悔しくなった。その痛みや悔しさの理由を、あの頃…

　その映画は、ブルース・ウィリス主演の『シックス・センス』だった。観たことはないが、内容はなんとなく知っている。タイトルを彼女が告げた時、僕の第六感が頭の中で警告音を発した。彼女…

　僕は、平凡、という言葉が死ぬほど嫌いだ。平凡の基準なんて曖昧で、ひとそれぞれ違うから、本当の意味で、平凡、と呼べる容姿もなければ、人生もないはずだ。そうに決まっている。相手によ…

　おい、あいつ、二刀流らしいから気を付けろよ。隣のやつが言った時、あぁこいつも時事に毒されたか、と思った。海を渡ったかつての球児が、メジャーリーグという世界でМＶＰを受賞した、っ…