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【オレが転生したかったのはダークファンタジーじゃないっ!】

前略

この手紙がキミに届くかどうか分かりませんが、もう届こうが届くまいがどうでもいい気分です。
それでもこうして手紙を書くのは、書かないコトには頭が整理できないから。
それとキミにだけはオレの生存報告をしておきたいから。
でも書きだしてみると、それすらどうでもよくなってくるから不思議だ。

そうそう、まずは生存報告から。
オレがいきなり消えたんでキミも多少なりと驚いたと思う。
まぁオレ自身もかなり驚いたんだけど、今はだいぶ落ち着いている。
そうでなきゃ手紙なんて書いている余裕はないわけだし。

で、とにかく今現在。
オレは別の世界でちゃんと生きている。
キミが心配しているかどうかわからないけど、とりあえず心配はいらない。

そう書いておいていきなり言うのもあれだけど、オレ自身の生活はかなり心配です。
というか、かなり深刻な状況です。
もう毎日が心配で心配で、夜もあまり眠れていません。
食欲だけはあるけれど、そうそう、食事はかなり美味しいのです。
食べなれない、というか聞いたこともない食材ばかりだけど、調理された料理はかなり美味しいです。
うん、それだけが楽しみで、唯一の救いかな。

でもそれ以外は最悪です。
オレは異世界というのは冒険と聖剣と魔法と美少女に囲まれた、男の楽園みたいなところだと思ってました。
それこそが異世界ファンタジーだと。
血沸き肉躍る冒険を繰り広げ、世界に革新をもたらす英雄になり、ときには美少女との色恋沙汰を楽しむ。
そんな期待に胸を膨らませていました。

でも現実の異世界は予想とは大きく違いました。
不気味な色の空、荒れ果てた大地、腐ったような海、街の中は死体だらけで、いたるところで血が流れています。
隙あらば襲い掛かる怪物たち、卑屈になった町人たち、集団で襲いかかる理性のカケラもない盗賊、力任せに弱者を蹂躙する魔物たち。
そんなのばっかりです。というかそんなやつらしかいません。
もう心が休まる暇もありません。

そうですね、一言でいうならばここはファンタジーの中でもパリパリの『ダークファンタジー』の世界。
これからこの世界でどうやって生きていけばいいのか?
そんなことを考える暇もないくらい逃げ回って暮らしています。

なんだか、思い出しただけで続きを書く気すら失せてきました。
またペンを握る元気と余裕が出来たら続きを書いて送ります。

もちろん生きていればの話だけど。

草々

36件のコメント

  • ついに関川さんの本気が!

    面白いwww
  • もともとファンタジーって、ダークとかヘヴィなものでした。日本で発明されたのがライトなんですよね。

    だから、世界(主に欧米)で受けるのはもともとの意味でのファンタジーなんです。最近だとゴブリンスレイヤー。ちょい昔だとベルセルク。時代モノでジャンルは違いますが……って、話がズレるな。止め止め。

    何が言いたいのかというと、ここから設定を尖らせて盛ると、さらに面白いものになる!

    あれですか。ここは関川さんの新作研究所ということでいいですか?
  • あ、ごめんなさい。

    リレー小説なのね……。

    いろいろと誤爆(笑)
  • ガラナさんこんばんは!
    こちらこそ自爆っぽい雰囲気が(笑)
    けっこうみなさん忙しいのか、テーマ選択を間違えたのか……
    まぁもう少し続けてみます。
    まさにダークファンタジーを地で行く展開になりそう(笑)

    でもテーマ的には面白い気もしてます。
  • なんて面白そうな!
    主人公の捨て鉢な雰囲気が荒んだ世界を想像させます(^ν^)
    今は時間が取れないのですが、もし月末以降も続いていたら参加しようかなと。
  • 佐月さん、嬉しいコメントありがとうございます!
    せっかくなので異世界チャレンジ一年生をテーマにしたんですよね。
    もちろんご参加待ってます!
    誰も来なくとも自分で続きを書きながら(笑)
    リレー小説ではなくマラソン小説と化さないように祈りつつ。
  • 関川二尋の孤独なチャレンジがこうして幕をあげたのであった。

    あの時は気軽な異世界チャレンジのつもりだった。そうそう、チャレンジ1年生とか言っていたっけ。なにもかも懐かしい。

    真っ先に参加表明かと思えば誤爆した北乃も、後に熱心に参加してくれた左月も、溜まっていたマグマを吐き出すように書きなぐったユーリも、イケメン陰陽師を引っさげたひまわりも、やっぱりイソギンチャク展開になってしまった叶も……。

    いまは皆しんでしまった。

    関川だけは機械の身体を得て、独りきりのチャレンジを続けている。気づくとかれこれ異世界チャレンジ500年生になろうかとしている。

    いまとなってみれば、もはや何のためのチャレンジなのか? 何のためにチャレンジをし続けているのか? 

    わからない。

    あるいは、チャレンジというものが、もともと、そういうものなのかもしれない。とも関川は思うのだ。
  • とある日のことだった。いつものように孤独なチャレンジをつづける関川メカ尋のまえに~
  • 書き出したはいいけど、二話目ってちょっと重要ですよね(笑)
    なかなかアイデアが思い浮かばないですね。
    しかもこのジャンルは書き慣れないし。
    まぁのんびり楽しむのが一番です。
    ガラナさんもお時間できたらぜひ!
    もちろん自分のペースで。
  • 「とある日のことだった。いつものように孤独なチャレンジをつづける関川メカ尋のまえに~」


    ボクのターンはこれでエンドだ! 二尋ォ!!
  • 【オレが転生したかったのはダークファンタジーじゃないっ!】

    前略

    まだ生きてます。

    久しぶりに休憩がとれたのでこうして手紙を書いています。
    前の手紙がキミに届いたかどうか分からないけど、まぁ細かいことは考えない方がいいみたいです。
    少なくともこうして手紙を書くことで、なんとなくキミの世界とまだつながっていると感じられる気がする。
    今はそれだけで満足です。それでなくても心が折れそうな毎日だから。

    今日はこれまでのことを少し。

    あの日、オレが目覚めたのは荒れ果てた草原だった。
    時刻は夕方。血を流したような不気味な夕暮れ、巨大な月が光の輪の形になっていた。
    コレ、たぶん月蝕だったと思う。かなり不気味な雰囲気だった。
    すると今度は生暖かい風がゴウと吹き付けてきて、なにやら生暖かいキリに包まれた。

    いや、霧雨かな?
    と濡れた頬を手のひらで拭うと、ついていたのは真っ赤な鮮血だった。
    まぁびっくりした。というか、嫌な予感しかしなかった。

    それを裏付けるように
    「グオラァァァァァァ」
    と背後からなにやら不気味なうなり声が聞こえてきた。
    振り返ると毛むくじゃらの小さな獣、それも妙な甲冑を着込んで骨の棍棒を振り上げた獣が、禍々しい目でしゃがんだオレを見下ろしていた。

    なんだ、コレ?
    オレはまったくついていけなかった。
    この世界にも、この生き物にも、いきなり目の前に死が迫っているという現実にも。

    そう言う時、人はポカンとするんだね。
    ただただ口を開けて次に起こることを待ち受けてしまう。
    ああ、このままこの怪物の姿を見ながら死ぬのかな?
    そんな風に思っても、なにも出来なかったし、動けなかった。

    そうして痺れた頭でそいつを見上げていると、そいつの首に銀色の光が走った。
    次にずるりとそいつの首が落ち、オレの目の前にころころと転がってきた。
    アレ?
    と思ったら噴水のように胴体から血が吹きあがった。
    それはゆっくりと倒れてきて、まさにシャワーのごとくオレの全身を濡らした。

    そこでようやくオレは短い悲鳴を上げた。
    それはオレがこの世界に来て初めてやったことだった。

    と、そろそろまた仕事の時間です。
    次はこのオレを助けてくれた、救世主にして現在の雇用主のことを書くつもりです。
    こいつがホントにまたひどい奴で……

    過労死しなかったらまた続きを書きます(笑)

    草々
  • ガラナ、孤独な戦いはまだまだ続くぜ!

    これがオレのターンエンドだっ!
  • 無茶しやがって……。

    最後のほうなんて、作者本人の近況(たぶん)そのまんまじゃねえか。リンクしてるじゃねえか(たぶん)

    無茶しやがって……。
  • 大丈夫。無茶なことないですよ(笑)
    まぁいつものことですが、楽しむのが一番ですからね。
    無理してやると続きませんから。
    ということで、ガラナさんも気が向いたときにはぜひ。
    私もしばらく書いてみようかなぁ、と思ってるところです。まぁウォーミングアップですね。
    そのうちまたガツンとテーマのあるものが書きたいなと(笑)
  • 【オレが転生したかったのはダークファンタジーじゃないっ!】

    前略

    しぶとく生きてます。

    なんというか戦いはあまり得意ではないけど、働くということに関してはけっこう大丈夫みたいです。
    睡眠不足と長時間労働と長く続く緊張状態に身体も心も悲鳴を上げていますが、それでもそのあたりの耐性は強いみたいです。
    ダテにブラックな職場で勤めていたわけではありません。

    ついでに伝えると、ポイントは自分が機械になったつもりで働くことでしょうか?
    ありとあらゆる欲求というモノを捨て去り、ただただ自動で動く反応機械として生活していくのです。
    最初はつらいけど意外と慣れるものです。

    まぁそれでも引き際を意識することは忘れちゃいけません。
    自分が壊れてしまったら元も子もありませんからね。そんな時は全てを捨てて逃げましょう。
    それこそ心を閉ざして逃げに徹しましょう。
    オレはこれまでそうして生き延びてきたから、これは間違いないです。

    なんでこんなことを書いたかというと、そろそろ逃げる算段を始めたからです。
    その前に、前回の手紙の続きだね。
    そもそもオレがどこにいるかキミにまだ説明してなかったよね?

    今日は救世主にして、我が最悪の雇用主、無慈悲なボスについて書いておこうと思います。

    サルトン族(前回手紙に書いた怪物の一族のこと)の危機からオレを救いだしてくれたのは美貌の女剣士でした。
    身長ほどもある長くぶ厚い剣を肩に乗せ、怪物の返り血を全身に浴びたグラマラスなビキニ姿。
    その髪は燃えるような赤、口元には妖艶な微笑み、壮絶な姿でありながら不思議な美しさをたたえたその姿。
    年のころは同じくらい、いや、少し下で二十歳くらい。

    まぁ異世界に来たてのオレは当然期待した。
    この出会いから冒険と恋が始まるのではないかと。
    まして相手は腕っぷしの強そうな美人剣士。
    しかもビキニ姿とあっては鼻も膨らむというものだ。

    でもちょっと考えると、こういう出会いはオレにとって都合がいいだけで、あちらさんにとっては日常の範囲内のコト。
    まぁそれはおいおい分かってくるのだけど。

    「アンタ、転生者でしょ?」
    その女剣士はちょっと偉そうにそう聞いてきた。
    「まぁ、そうみたいだ。まだ状況がつかめてないんだけど」

    「だったら好都合だね。アタシが助けてあげるからさ、アンタはあたしの店で働きな」
    やっぱりちょっと偉そうな態度で、今度は命令してきた。
    「店?」

    「そ、お店。心配しなくても大丈夫。寝床も食事もちゃんと用意してあげるよ。ついてきな」
    「た、助かるよ、なんてお礼を言えばいいか」

    まさに渡りに女神。
    オレは自分の幸運に感謝した。
    なんて順調な滑り出しなんだと。

    「礼なんていらないよ。アタシは自分のためにそうしてるんだから。でも、その前に」
    彼女はナイフを取り出すと、その場でサルトン族の解体を始めた。
    まぁオレは吐く前に背中を向けて、ザクザクビチャビチャという物音を聞いていた。
    それでもやっぱり匂いがしてきて吐いちゃったけど。

    「じゃ行こうか」

    それから二人で荒野を歩き、途中で小型の怪物を何匹か仕留め、それも肉片にしてさらに帰り道を急ぐ。
    やがて粗末としか言いようのない町にたどり着き、その裏通りにある彼女の【店】にたどり着いた。

    もう真夜中だというのにコウコウと灯りがつき、大勢の客でにぎわっていた。
    まぁ簡単に言うと小汚い酒場。

    そしてココがオレの新しい職場だった。

    ちなみにこの店の名前は【ザワメキ】という。

    なんか疲れてきました。
    だから今日はこの辺で。
    ホント帰りたいです。
    キミのいる世界に。

    草々
  • うううううう><
    関川さん。
    タイトル、【生存報告】ではないですか。

    父に赤紙が来ました。
    父の父から。
    東京から金をよこせって。
    それは、【ダークな金のたまご】……。
    ◇◇◇
    手紙形式にするのは、大変ですね。
    今、他のサイトで須能 雪羽さんと連作詩を書いております。
    すると、相手のを受けるのですよね。
    とても勉強になると思います。
    楽しいですしね。

    また、楽しみにこちらに参りますね。^^
    ましろ こゆき🌼
  • 【オレが転生したかったのはダークファンタジーじゃないっ!】


    グラマラスなビキニ姿に釣られたわけではないが、オレは彼女の提案に従うことにした。先を行く彼女の背を追いかけ、その尻に食い込んで履いてるのかどうかも疑わしくなるビキニラインの消失点を追いかけ、時折見える見えてはいけない煩悩の元を追いかけながら、街へと辿り着いた。門番はおらず、それどころか生活圏と外界とを区切る塀も門もなく、かつて均等に並べられていたであろう石畳は見事にその列を乱されてただの障害物に成り下がっている。路面のいたるところには乾いた血液がこびり付き、そこここで行われたであろう殺戮の証拠を隠す様子も見られなかった。
    廃屋と見紛うばかりの荒屋の前では薄汚れたローブを羽織った子供たちが身を寄せ合い、物乞いの真似事に興じている。どう贔屓目に見てもこの街で正義が行われているとは思えず、むしろ貧困と歪んだ思想に支配されていると考えざるを得ない。
    ビキニラインの消失点――もとい、オレを助けてくれた女性は子供たちに近づくと何の前触れもなく銀線を走らせ、その中のひとりをふたつの肉塊へと変えた。他の子供たちはその挙動に驚きはしたものの、すぐ我にかえった表情になって先ほどまで仲間であったはずの塊から臓物を引き出し、奪うようにそれを咀嚼し始める。
    餓鬼――その言葉が脳裏に浮かぶ。
    その六道において餓鬼道に生まれた者。飢渇に苦しめられ、決して満たされることのなかった無威徳鬼が、彼女の手によって有威徳鬼さながら満たされようとしている。
    オレは胃からこみ上げる酸い物を必死で堪え、彼女の後に付き従うより他になかった。
    薄暗く瘴気に満ちた路地裏を進むと一軒の酒場があり、その元々立て付けがよろしくなかったであろう扉を蹴破るように彼女は店内に足を進めて行く。先客たちの喧騒は一瞬止むも、それが彼女の仕業だと見て取った途端に興味をなくし、またそこここから喧騒が広がり始めた。
    彼女は振り返ってオレを一瞥すると、「ついてこい」と顎をしゃくって合図を飛ばしてくる。店の奥、酒棚の間に設置された、この店にしては頑丈な作りの扉を開け、そこから続く地下階段へとオレを招き入れた。

    ザワメキ。
    それは店の名称でもあり、同時にこの場の状況を実に上手く表現した単語だ。一見金のない奴等が屯する小汚い酒場にしか見えないここザワメキだが、その地下には会員制の闘技場が隠されており、何億もの金が一晩で動く。それを知ることになるのは、さして遠い日ではなかった。
  • ましろさんへ
    生存報告みたいですけど、いたって元気です。
    コンテストも終わり、次に何か書きたいな、というウォーミングアップです。
    相手の反応とか展開って意外と予想できないもので、そこから話を考えるのはとても刺激的ですよね。
    この面白さを分かち合えればいいなと、そんな動機で始めてます。
    ということでいつもありがとうございます!
  • 佐月さん、さすが面白い!
    コメディとダークファンタジーの混ぜ方が実に好みです。
    ストーリーも予想の斜め上を行きましたね。
    続きがどんなのがいいか考えつつ、他の人が続くかもしれないのでちょっと様子を見てみます。
  • 地下闘技場www

    続きを少しカクしたんですが、全開コメディ展開になって、せっかくのダーク感が雲散霧消したのでしばし待機します。
  • ガラナさんの全開コメディーも見たい気もしますね。
    しかしダークファンタジーって難しいですね。
    ベルセルクとか鋼の錬金術師みたいな線かなぁ、と思いつつ書いてます。
    出来上がるものが違ってますけど(笑)なんかコメディー要素をまぜたくなりますよね。
  • オレは奇策を駆使して地下闘技場を勝ち進んだ。
    やがて地下闘技場最強の戦士との対決を余儀なくされる。
    仮面の女戦士だ。こいつに勝てば名実ともにオレが最強の戦士となる。

    「……お、おかん」

    「ひさしぶりだね。最近みないと思ってたらアンタもこっちに来てたのかい。ま、いいさね。さ、剣をとりな」

    「そんな……何故? 無理だよおかん!」

    「戦士に言葉は無用さね。戦士が交わす言葉は剣。アンタが来ないなら! こちらからいくよ! ――シュッ」

    オレの心がざわめいた……。
  • ↑こんなんですやん。ダークなんて土台無理ですやん。どうしろとw
  • 関川は待っていた。
    得意の『Rusty Nail』も熱唱し尽くした。
    昭和のデカイグラサンが曇るほどに……。


    関川が待っていたのは、松尾山に陣取る大勢ユーリ・トヨタ隊だ。


    過去八十余度の戦いにおいて無傷で生還したという豪の者。カクヨムに知らぬ者はないとまで謳われた、生粋のカク武人。ユーリ・トヨタ。

    彼が参陣してくれれば、この戦。勝てないまでも後世まで語り継がれるものとなるだろう。仮に後世まで語り継がれぬとしても、数少ない参加者の胸に痛快の印が圧されることになる。数少ない参加者がそもそも居ないとしても自分の魂には刻まれる。よしんば飽きて自分の魂に刻まれないとしても……。一人変なテンションでうちの近況ノートに書き込みまくる大馬鹿野郎を退けることができるかもしれない。うちに書くならその労力を自分とこに回せよと心からおもう。テメエのところを更新しろよと心からおもうのだが、彼奴はほんとうにダメなヤツなのだ。ツボったら途中からおかしくておかしくてしかたがないのだ。そんなヤツがわたしはだいきらいだ


    ――参考図書『職業としてのカクヨム小説家』(著・モラ上春樹)



  • ふう。
  • パタン……
    関川はセンスを閉じると一つため息をつき、ゆっくりと立ち上がった。
    「見事! ガラナ枢機卿よ、貴公の心意気、しっかと胸に刻んだ」
    眼前に広がるは無人の荒野。
    それでも関川は大音声で号令を放つ。
    「征け! 全オレ軍! 戦いはまだ終わっていない!」

    ……という心持ちでせっせと続きを書くのだった。
  • 【オレが転生したかったのはダークファンタジーじゃないっ!】

    闘技場は実に簡単なもので、ただ四方を低いロープで区切っているだけ。そのロープも腰の高さしかない。
    そのせいだろうか、あまりに近い距離で繰り広げられるファイトは暴力の匂いも生々しく、うだるような熱気が狭い会場に立ちこめていた。

    「なんなんですか、ココは?」
    オレはビキニのパートナーにそう聞いた。
    この会場の中はかなり蒸し暑くなっている。彼女の肌にもじっとりと汗が浮き、油でも塗ったようにつやつやと輝いて見えた。

    「闘技場よ。武器も殺しもなんでもアリのセメント・マッチ」
    「セメント?」
    「真剣勝負ってこと。あんたの時代じゃそういう言葉使わないかな?」
    「初めてきいた。それより、なんだってこんなとこに?」
    「稼ぐために決まってるでしょ? ちょっとここで待ってな」

    それから彼女は店の奥にあるカウンターに一人で向かってしまった。
    そのまま慣れた様子でなにやら交渉をしている。

    オレはすることもないので、仕方なく店の中央のリングに目をやった。

    今は一匹の怪物と、人間が殴り合いの戦いを繰り広げていた。
    観客はすっかり興奮しきって、けしかけるような怒号と足踏みが会場の空気を震わせている。
    中央で戦うモノたちもこの熱気にあてられるように、殴り殴られの白熱のバトルをくり広げていた。

    と、ついに人間が怪物に決定打を放った。
    よろけて倒れた怪物にまたがると、やたらめったら拳を振り下ろす。
    どうやら勝負はついたようだ。ただここには審判はいないし、ゴングらしきものもなかった。
    人間はぐったりした怪物に、血まみれの拳を何度も何度も振り下ろす。
    それはもはや虐殺といっていい様相を呈している。

    「はい、これ着るといいよ」
    彼女が持ってきたのは、金属の胸当てと、革のヘルメットだった。
    「こんなんでも、ないよりはマシだからね」

    いやな予感がした。

    「うぉぉぉぉぉ」
    突然リングで雄たけびが上がり、さっきの人間が両手でガッツポーズしているのが見えた。
    足元には雑巾のようにズタボロになった怪物が倒れ、もはやピクリとも動かない。

    「まさか、オレに戦わせるつもり?」
    「もちろん。全額アンタに賭けたんだからね」

    二ヒヒという感じで彼女は笑った。
    でもオレはこういう笑顔にはちょっと見覚えがあった。
    これは人を騙す時の笑い方だ。彼女にではないが、何度も騙された経験があった。
    声は無邪気だし、ニッと上げた唇の端も、同時に頬にできるえくぼも可愛いが、目だけはちっとも笑っていない。
    そういう笑顔だった。

    「わるいけど、ムリだよ。そういうことならオレはここを出る」

    「そうはいかないんだなぁ。もうエントリーしちゃったからね」
    彼女はその笑顔をやめ、冷酷に告げた。
    そして小指の先を唇にくわえると、鋭い笛の音を鳴らした。

    「次はコイツが戦うよ! 相手はサルトン族、さぁ賭けとくれ!」
    彼女の声に誰もが振り向き、それから歓声が狭い室内に満ちた。
    もっともっと血を見せろ、まだまだ足りない!
    そんな声なき声が会場を満たしている。

    もはや後戻りできなくない。
    ここで逃げればこの観客たちに殺されかねない……
    そういう雰囲気だったし、この読みは間違いなかった。

    「大丈夫だって。相手はサルトン族だから楽勝で勝てるよ」
    「サルトン族?」
    「そう、草原でアンタに襲い掛かったヤツ。ザコ敵みたいなものよ」

    と、リングの中央に骨の棍棒をもったそのサルトン族が引きずり出された。
    だがこの場の雰囲気にのまれているのか、すっかり怯えているようだった。

    身長はオレの方が上だし、体格も大人と子供くらいの差があった。
    見た目は怪物だが、防具もあるし、これならなんとかなるかもしれない。

    「仕方ねぇ、でも戦うのはこれっきりにしてくれ」
    「ちゃんと稼がせてくれたらね!」
    そういうと彼女はオレの頬にキスした。
    どうやら戦いの興奮が彼女にも伝染してるようだ。

    オレは彼女が用意した武器、木の棍棒を肩に掛け、興奮したギャラリーをかきわけ、リングに立った。
    「悪く思うなよ」
    オレがそう言うと、サルトン族は怯えたようにリングの端まで下がった。

    「じゃあ、試合開始!」
    彼女の声が響き、同時にリングの中央に何かが投げ込まれた。
    サッカーボールよりも小さい何かは、赤い液体を撒きながらコロコロと転がって止まった。

    それは、サルトン族の首だった。
    オレが襲われた時に彼女が切り落としたものだろう。
    あの女はそれを持ち帰っていたのだ。
    たぶんこの瞬間のために。

    瞬間、相手の目つきが変わるのが見えた……。
    なんかヤバい。
  • ガラナ氏に誘われワンカップ片手に地下闘技場にふらりと来たものの

    ……こ、この魔闘気は只者ではない!

    一度顔を洗って出直すとします
  • ユーリ殿。礼を申す。
    これで面目が立ちもうした。この不肖北乃詰め腹を切らずに済みもうした。

    「生粋のカク武人であるユーリ殿の馬上姿を見たお味方の士気が奮ってござる」

    「まっこと、先ほどまで死人のようだった兵達があのように笑顔を見せてござる故」

    「もとより命など捨ててござったが、せめてもの末期の水となりましたなぁ」

    「これで死にゆく兵達も未練はありますまい。我ら兄弟も後に続こうぞ。死に場所をユーリ殿が彩ってくださった。ありがたいことよ」
  • ユーリさんが来た!

    とはいえ、あまり無理はしないでくださいね!
    楽しめそうだと思ったらでかまわないですよ。
    もともとそういうコンセプトですから。
  • そしてガラナさんの働きかけでしたね、なんかたくさん気を使っていただいてありがたいです。
    その心意気がとにかく嬉しいです。どうもありがとう!
    ということでガラナさんも無理せずに楽しめる範囲で。
    私も自分が楽しめる範囲でチャレンジします(笑)
  • あと、ちっちゃいお知らせを。
    チェッカーズのエピソードを一つ追加しました。
    いつもならノート立てるところですが、ココで小さくお知らせ。
    うん。誰かこの宣伝を見てくれるといいですね(笑)
  • 🐾
  • 祝!中間突破!🎉
  • 関川さん
    こんにちは。

    第4回Webコン中間選考通過おめでとうございます。
    ヽ(^。^)丿♪
  • 関川さん
    中間選考突破、おめでとうございますーーっ!
    「モノノ怪クリニック」は何度読んでも本当に面白くて、ぜひ書籍化まで叶えて欲しいです。
    これからも応援していますー!^-^
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