カクコンも終わって改稿と次のプロットぼんやり思考してるだけだとグダってきそうなので読みさしの本を読み終えました。
というわけで、清水朔『奇譚蒐集録~鉄輪の娘と来訪神(オトナイサマ)~』を読みました。
面白かったーので……ネタバレ注意ー。
といつもの調子で始めたものの、こちらの文庫は令和五年の十二月一日発行なので、慎重に慎重に書かねばなりませんね。
……てかこれシリーズものの三巻目やないかい! はい。私は本を表紙かタイトルで買う癖があるうえに作者の名前を覚えないので新刊だろうが容赦なくこういうことおきます。
あ、でも今回は珍しく、買うか迷ったあとに帯で『神永学絶賛!』ってあったので買いました。八雲を読んだことはないけれど、作品名を知っていたからですね。
ほんで、民俗学系ミステリっていいよね! でもって大正ミステリですよ。書生っていいよね! ショタくて! 違うか。個人的にはひ弱主に結核のケがあるとベタでいいんですけど、でもこの主、鉄心入りの仕込み洋杖持ちだから脱ぐとバキバキタイプの疑いがあります。
あと設定上、主は帝大講師で薩摩とつながりがあるらしいので、九州大ですかね? 不勉強なので当時の学部学科は存じ上げませんが、どこなんだろうか。まあ別にいいですけど。
内容としては……諏訪ですから堪忍信濃の善光寺近辺にお使いで赴いた主アンド書生が寒村……でもないか、まあお使いついでにうろちょろしてたら聖域に片足突っ込んでしまい、来訪神(オトナイサマ)として十二年に一度の奇祭に参加せえやと言われるお話。
肝になるのは祭りに関わる三人一組の依代……依代? 民俗学的タームに明るくないのでアレですけど、要するに祟り神役、お仕置き役、もう一つ寡聞にして知らなかった祟り神の目となる役がいまして、なにしろ十二年に一度の祭りですから人生の大半を役目のなかで生きてドロドロとしたものが渦巻いていたり、いなかったり。
前に創作のナゾでも書きましたけど、この辺はもう新しいルールの学習が楽しいって感じですね。村に祭りがある→役割はこんな感じ→どういう由来か→そこに属する人々の陰謀。民俗学ミステリの大王道です。
文体としてはこう……なんでしょう、匂い立つ大正三人称。いえ語彙とか別に大正ではないんですけど、読んでると大正が香ってくる筆致はクオリティ高いと思います。あと私とちがって会話間の人物の動作が一つだけ(であることが多い)ので読みやすいと思います。
良かったところ。
真汐くん真汐くん真汐くん真汐くん真汐くん真汐くん真汐くん真汐くん真汐くん。
いえもちろん民俗学ものの真骨頂、時代の移り変わりとともに失伝したり意味が変遷したり言葉が訛ったりとかもいいんですけどね。でもまあ真汐くんですよね。乱歩とかなら秒で荒縄を打たれてますよ。たぶん。
気になったところ。
真汐くん。いえ、冗談ではなく、熱意とか危機感とかの割に肝心なところで注意力が散漫になっとう。
あともう一つ……はシリーズ全体の重大なネタバレになりそうなので回避ですね。なくてもよかったような、あったほうがいいような、非常に難しい要素でした。
まとめ。
今の時代に三巻も出せてるんだから面白くないはずないでしょう! という感じです。私が思う正統派民俗学型ミステリホラーですね。さあみんな真汐くんを愛でよう。
ただこれ、お話のつくりとしてはなんだろう……基本的には会話と調査で新しいルールを学ぶのが中心なので、合わない人にはとことん合わないやーつでもありますよね。
まあ小説で動きの派手さを語っても仕方ないんですけど私の作品そんなんばっかだ死んだ。
明日のラッキー思いつきフレーズ
『おくたぶれさんどしたってフランス南部方言感あるよな』