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「自分だけが知っている世界の秘密」

「自分だけが知っている世界の秘密」というのは、物語やアニメなどのフィクションではよく見られる“特別感”を演出する定番のモチーフですね。主人公が「実は誰も気づいていない事実に自分だけは気づいた」という認識を持つと、その瞬間、彼・彼女は「世界の中心にいる人間」にも思えますから。

ただ、これを現実に置き換えてみると、多くの場合「誰かが普通にスルーしているだけのこと」に対して、自分が「特別に気づいた」と思い込んでいるにすぎない、というケースがほとんどです。たいていは、皆そこまで興味がなかったり、深く考える必要がなかったりするので気づいていない(あるいは気にしていない)だけ。そうした「本人以外が特に価値を見出していないこと」を大袈裟に“世界の秘密”と呼んでしまうと、やはりどこか“痛々しさ”を伴ってしまうわけです。

それでも、そうした“個人的な気づき”を大事にしたい気持ちは、多かれ少なかれ誰しもが抱えているのだと思います。それがロマンとも言えますし、人が「物語」に惹かれる原動力のひとつでもあるのでしょう。フィクションという安全な枠の中なら、そうした“痛さ”も含めてワクワク感や物語の面白さへ昇華されます。しかし、いざ現実世界に持ち出すと「特別だと思っていたのは自分だけだったんだ……」というオチになりがちで、ちょっとばかり切ない、ある種“凡庸な”真実に収束してしまうことが多いのかもしれません。

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