ひさちぃ

茉凜の心理の考察

　茉凜は、純粋で無垢な心を持ちながら、弓鶴に対して深い愛情を抱き、その存在を自分にとって特別なものと感じています。しかし、彼女の抱く感情は、実は弓鶴の中に潜む美鶴に向けられていたものであり、そのことに茉凜は気づいていません。

　茉凜は、弓鶴の内面に隠された脆さや孤独を理解し、その痛みを感じ取って彼の支えになりたいと強く願っています。そのため、彼女は自分が弓鶴にとって必要な存在であり続けることを使命として捉え、彼の幸せのために自分を犠牲にしてでも尽くす覚悟を持っています。しかし、茉凜はまだ知らない、彼の中にいるのは彼の姉である美鶴だということを……。

　茉凜の感情は、彼女自身が理解している以上に深く、彼女の恋心は弓鶴（実は美鶴）に向けられたものであるという皮肉な状況を生んでいます。茉凜は、自分が愛する相手に対して最善を尽くしていると思い込んでいますが、その対象が誰であるかという根本的な誤解が、彼女の行動を悲劇的なものにしています。

　彼女が担っている『深淵の黒鶴』のセーフティとしての役割は、茉凜の使命感をさらに強め、彼女の自己犠牲を際立たせています。弓鶴を守るために全力を尽くす茉凜ですが、その献身は彼女自身の負担となり、時折おせっかいが過ぎることもあります。それでも、彼のために笑顔を絶やさず、自分の感情を抑え込んでいる茉凜は、彼の幸せを最優先に考え続けます。

　弓鶴と明の仲直りの際も、茉凜は彼らの関係を修復するために自分を押し殺しましたが、その過程で抱いた不安や嫉妬は、彼女の心を揺さぶります。それでも、弓鶴のためにと自分を犠牲にし続ける茉凜の姿は、彼女の深い愛情と自己犠牲の精神を象徴しています。

　最終的に、茉凜がこの真実に直面する時が訪れるのか、そしてその時に彼女がどのように反応するのかが、この物語の重要な転機となるでしょう。