女性の選択と願望の物語性
ハーレクイン(好きなんだが)が女性向け恋愛小説として人気を集める理由は、物語の中で現実的な制約や社会の期待を超越し、女性の願望や理想を叶えるからです。そこでは、ヒロインに選択の負担を背負わせず、代わりにヒーローに究極の決断をさせることで、女性読者が抱える葛藤を代理的に解決しています。これは、現実ではしばしば「結婚かキャリアか」「恋愛か自己実現か」と迫られる女性たちにとって、大きな共感ポイントなのです。
究極の選択を超えた存在としての美鶴
一方、わたしが描く美鶴の物語はさらに深刻な設定を持っています。彼女の前世では、「選択肢」という概念すら存在しないほど追い詰められた存在です。すべてを奪われ、希望もないまま弟の魂を取り戻すためだけに生き続ける彼女は、茉凛と出会うまで怨霊のような存在でした。この絶望的な状況を描くことで、美鶴の物語には圧倒的な喪失と執念が刻まれています。
希望と選択肢を与える物語としてのグロンダイル
だからこそ、グロンダイルは美鶴に「生きる選択肢」を与える物語です。茉凛の存在や、美鶴が再び自分の人生を選べるようになる過程は、彼女にとっての救いです。しかし、その選択には対価が必要であり、代償として多くのものを失うことになります。それでも、美鶴が未来に幸せを掴める可能性を信じたい──この願いは、現実の葛藤に抗う物語として描かれているのです。
現実の葛藤と物語の希望
現実の世界では「仕事か妊娠か」「キャリアか結婚か」といった二者択一の選択が重くのしかかります。特に女性にとって、恋愛と他の目標を両立することは難しく、少女漫画や乙女ゲームでも「すべてを手に入れる」ことは稀です。しかし、この物語はその枠を超え、「すべてを奪われたからこそ、すべてを取り戻そうとする美鶴」に焦点を当てています。