「ふたりの王国」にこめたもの

昨日(12/18)から「ふたりの王国」を書いていました。
タイトルは「ある冬の日に」→「再会」ときて「ふたりの王国」になりました。
感染症のせいで二年ぶりに再会する女性ふたりの短い物語です。

12/18夜中に、神田沙也加さんが札幌のホテルから転落したというニュースが入りました。
ミュージカル「マイ・フェア・レディ」の札幌公演のために宿泊していたホテルでした。
札幌市民にはなじみのある有名ホテルですし、私も友だちの結婚式で何度も行っています。
神田さんが亡くなった時はダブルキャストの朝夏まなとさんが代役で出演していました。

いま宝塚にはまっているのですが、その中で贔屓とは別に大好きになった公演「エリザベート」があります。1996年雪組の初演から、何度も何度も宝塚で上演されてきた名作。そのエリザの素晴らしさを最初に気づかせてくれたのが、2016年宙組の公演で、主演は当時のトップスター、朝夏まなとさんでした。死の帝王を表情豊かに演じ、彼の嫉妬、恋、悲しみ、傲慢さ、純粋さが私に届き、胸を震わせました。

トップスターの頃、彼女は「宙組の太陽」と呼ばれ、その温かな人柄で宙組を照らし、引っ張っていました。そういったものがエリザにも出ていたからこそ、私の胸を打ったのだと思います。
彼女のインスタなどをフォローし、大の仲良しである神田沙也加さんとダブル主演を務めるマイフェア公演もひっそり応援していました。
札幌にいらっしゃったまなとさんは雪におおはしゃぎでとても楽しそうにされていたので私も嬉しかったのです。

そんな中に突然起こってしまった悲しい事件。しかもこの札幌で。
降り続く雪が神田さんを悲しみの世界に誘ってしまったのか。発見されるまで、雪の中でどれほど冷たかったことか。

何が真相なのかわかりませんが、ただ残されたマイフェアカンパニーの皆様の悲しみを思うと私まで気持ちが塞ぎ込んで涙が出ました。
太陽のようなまぁ様(朝夏まなとさんの愛称)、どれほどお辛いか。

そんな中でどうしても今日この小説を書き上げたいと思いました。

生きるとは、絶え間なく変化が起こり続けるということだと思います。望まなくても勝手に起こってしまう変化。
私に起こる普段の変化は、悲しいけれど衰えが多くなりました……
基本的には穏やかに変化なく生きていきたいものですけれど、そうもいかない。望まない変化に心が傷つくこともある。

それでも。
あなたとなら死んでもいいわなんて冗談で言うとき、だめよと優しくたしなめてくれる人がいるなら。
あなたとなら何があっても一緒に生きていきたいと思えるなら。
なんて幸せなことでしょう。
それがどんなに小さな空間でも。
あなたとなら。

そんな思いを、冬の白い北海道を舞台に書き上げました。

これからもきっと変化は続いていきます。世界も、日本も、私も、あなたも。
でもきっと生きていきましょう。

しんどい時、心が疲れた時、私の小説が少しでも癒やしになればこの上ない幸福です。
そうできるよう、精進していきたいです。


神田沙也加さんのご冥福を心よりお祈りすると共に、いつか、朝夏まなとさんが冬の北海道の思い出を優しく温かなもので上書きができる時がきますように。

2件のコメント

  • 「二人の王国」の、おおきた様のメッセージ、受け止めることができたように感じました。
    このコメントを書くかどうか、ずいぶん迷ったのですが。若い時分、マンションの高層階に立った時、ふいに下を見下ろしたことがあります。なにげなくです。そして、ここから落ちたら楽になるのかなと、心にふわりと、そんな言葉がとても静かに浮かんだんです。その時、独りだったら、宙に吸い込まれていたかもしれません。

     「でも、きっと生きていきましょう」の言葉が、とてもうれしいです。
    おおきた様の小説を読むとき、おおきた様の優しい気持ちを感じます。
    素敵なメッセージをありがとうございます。



  • コタローさん
    こちらこそ私のメッセージを受け止めようといろいろ考えて下さりありがとうございます。私は死と生って近しいものなのかなと思います。

    私も若いときにパワハラに遭っていて、地下鉄を待っていても飛び込むことをいつも想像してしまう時期があったり……じゃあなんで踏みとどまって生きていたのかそこもよくわかりませんが(あるときにその人より私の方が仕事はできなくても人間的には劣っていないと思ったりして)、それからも色々あり、基本的には前向きな気持ちなのですが、何もかも終わらせてしまいたいと思うこともあります。そのたび、なにか些細なことや大切な人たちのことを思い今ここにいますが、やはり今後も生きていきたい。

    みなさんにも、勝手ではありますが、生と死の、実は低い垣根を越えないで欲しい。ふたりの王国にはいつもよりその気持ちを強く込めました。丁寧に読み、考え、受け取って下さりとても感謝しています。ありがとうございました。
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