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「夏休み短篇小説大賞2025」結果発表!

自主企画「夏休み短篇小説大賞2025」
https://kakuyomu.jp/user_events/16818792437414613619

皆さん、夏休みは如何様にお過ごしだったでしょうか。帰省して旧交を温めた人もいれば、仕事でそれどころじゃない方もいらっしゃったことでしょう。私は後述しますが死んでいました。どんなかたちであれ、この企画が皆さんの夏の思い出になっていたようでしたら幸いです。
早速ですが、今年の結果は下記の通りとなります。

【大賞】
『冷房の神様』九十九 弥生

【佳作】
『家庭用エアコンディショナーの故障に伴う緊急対策会議』かぎろ
『57秒の彼女』秋来一年

【特別賞】
『県境腐海のスタァライト』広咲瞑

《選考理由》
今回のテーマは「線香花火」「エアコンが壊れた」「公衆電話」からの選択制でした。テーマ採用数はそれぞれ複数選択もカウントして、「線香花火」5作品、「エアコンが壊れた」6作品、「公衆電話」6作品でした。しかし、見事に分かれてくれたもんだなぁ……主催者としてはテーマ選びが偏らないことはかなり嬉しいポイントです。

各作品書評は後述しますので、ここでは大賞・佳作の選考理由だけ。
今回の選考基準は「面白さ」「テーマの必要性」「夏らしさ」です。「夏らしさ」については事前にレギュレーションに記載しているわけではないので、あくまで私の中で同率で困ったときの判断材料程度となります。
そんな中で上記選考基準すべてで高い水準であったと思ったので、九十九弥生さんの『冷房の神様』を大賞として表彰させていただきます。そして次点として、面白さとテーマ性の高かったかぎろさんの『家庭用エアコンディショナーの故障に伴う緊急対策会議』、秋来一年さんの『57秒の彼女』を佳作として選出させていただきました。

また、予定から特別賞を増やしました。広咲瞑さんの『県境腐海のスタァライト』が私個人として今回飛び抜けて面白かったのですが、今回の参加作品の中で大賞にしてしまうと異色さが目立ってしまい(かぎろさんも大概ですが)、自分の中で収まりが悪くなるため枠外にすることにしました。よって、特別賞での表彰とさせていただきます。

選外としてしまった作品についても、レベルが高く粒ぞろいでとても読み応えがありました。改めまして、皆さんご参加いただきありがとうございました。
最後に各作品の書評と、拙作のあとがきを添えて終わりとさせていただきます。
参加した皆さんもぜひ、他の参加者の作品を読んでみてください。

《各作品書評》※参加順
①『1997年の線香花火』ひなもんじゃ(線香花火)
https://kakuyomu.jp/works/16818792437416647521
開催から1日で投稿いただいた早業にまず脱帽。地元での同級生との儚い思い出を、線香花火の淡く灯る光・すぐに消えてなくなってしまった過去の思い出として繋げており、今回のテーマを上手く活かされているところが高ポイントでした。蒸し暑く、描写されなくともセミの鳴き声が聞こえてくるような夏を感じさせる一作です。

②『夏への扉を閉めなさい』金澤流都(エアコンが壊れた)
https://kakuyomu.jp/works/16818792437609145233
エアコンが贅沢ではなく生命維持装置となってしまった現代、その中でもペットのいる家庭は余計に深刻な問題だよなぁ……と読みました。日常の中のトラブルとバタバタをリアリティ高く書いた、夏そのものな作品でした。チャットGPTがエラー吐いてて笑っちゃった。

③『線香花火』志乃亜サク(線香花火)
https://kakuyomu.jp/works/16818792437852698233
会話文主体のがっつりコメディで、今回の参加作品の中でもかなり好みのテイストでした。迷走した結果異文化交流のキメラになって訳が分からなくこと、あるよね。方針転換後があまりにも局所的で、「それでいいのかお前ら!」とツッコミました。純粋に面白かったです。

④『公衆電話』苺 迷音(公衆電話、エアコンが壊れた)
https://kakuyomu.jp/works/16818792437874098644
夏といえば怪談、ということでホラージャンルからの参加。電話というものを「ここにいない誰かへの交信」として、幽霊が他者に干渉するために使う場所として組み込むのは上手いなと思いました。風の公衆電話、地元からすぐ近くなのでそのうち足を運んでみようかな。エアコン人も怪異とのコミュニケーションを面白く仕上げていて良かったです。

⑤『もう見えないあなたの手』凪紗奈(線香花火)
https://kakuyomu.jp/works/16818792437860568961
なんというかもう、胸が苦しい。これ以上苦しめないでくれ……と思いつつ、でも読まないことは許されないと思いながら読みました。含まれた意味のうち、いくつを私は受け取ることができたのでしょうか。

⑥『エアコンが壊れた』テマキズシ(エアコンが壊れた)
https://kakuyomu.jp/works/16818792438195782917
エアコンがメインですが、今回のテーマすべてを取り入れた意欲作。追い詰められた人間の思考回路が上手いこと描写されていたと思います。人間追い込まれると何するか分かりませんね。

⑦『冷房の神様』九十九 弥生(エアコンが壊れた)
https://kakuyomu.jp/works/16818792438539771247
“今年の夏は、どうやら地獄から直輸入されたらしい。”という書き出しは今回の作品の中で一番好きでした。全体を通しても軽快な文章であり、ストーリーもとても面白いものでした。エアコンを壊しておきながら、しっかり涼しくなれる納涼の一作です。

⑧『線香花火』翡翠(線香花火)
https://kakuyomu.jp/works/16818792438605543039
直接的に線香花火を記述せず、人の命を花火の灯に例えた作品。しっかりとテーマが線香花火なのだということが分かる内容に仕上がっており、短い文章の中で技巧がうかがえました。

⑨『トゥルーデおばさんちの公衆電話は撤去されないぞって話』崇期(公衆電話)
https://kakuyomu.jp/works/16818622177255390163
公衆電話実況系ホラー。トゥルーデおばさんがフィジカル系の化け物なのがツボ。やっぱりね、一番怖いのはフィジカルだからね。読者をも置いていきかねないほどのスピード感が魅力な作品でした。

⑩『57秒の彼女』秋来一年(公衆電話)
https://kakuyomu.jp/works/16818792438931787399
相変わらず設定したテーマをそう使ってくれるかぁ、という感嘆が出る作品を提供してることに感謝。公衆電話視点での、使われなくなっていく過程とその後まで綺麗に描いてくれて大満足な作品です。

⑪『納涼ドライブ』時任しぐれ(線香花火)
https://kakuyomu.jp/works/16818792439542694982
会話劇のテンポ感は流石の出来栄えです。内容も行き当たりばったりな青春のエネルギッシュさがあって、夏休みかくあるべし、というものでした。高校は諦めていても、大学くらいこんな青春を体験してみたかった。とても面白かったです。

⑫『家庭用エアコンディショナーの故障に伴う緊急対策会議』かぎろ(エアコンが壊れた)
https://kakuyomu.jp/works/16818792438191810339
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

⑬『例えば僕らの主演映画が、』古川(エアコンが壊れた)
https://kakuyomu.jp/works/16818093083525388868
戻ってきてくれてウレシイ、ウレシイ……。小学生の思考から直接垂れ流しのワードセンスが再現できているところが光ります。勢いの中に書き手の人間の善性が見える、とても夏休みな作品でした。

⑭『2011年の公衆電話』夏鎖(公衆電話)
https://kakuyomu.jp/works/16818792440657380019
夏だなぁ、郷愁だなぁ、学生だなぁ、青春だなぁ……。そんな気持ちになる、完成度の高い作品でした。高校の頃そういうのほとんど無かったので縁遠い遠くの世界のフィクションにしか見えないのが惜しいところです(こちらの落ち度)。

⑮『県境腐海のスタァライト』広咲瞑(公衆電話)
https://kakuyomu.jp/works/16818792438346888314
純粋に文章が好きです。もうこのままラノベ一冊始まるだろ――と思わせるような盛り上がりなのに、扱うネタがあまりにも短編用過ぎる。東北の民なので実態を全然知らないのですが、町田ってそんなに町田なんでしょうか。


⑯『夏の公衆電話は実質誘蛾灯』緒賀けゐす
https://kakuyomu.jp/works/16818792438354862248
今年の夏はイベントだらけでした。かなり良くない方向で。
主要部分を抜き出しますと、

1.お盆中も自宅でパソコンと仕事の電話をする。
2.お盆明けにふと電話に出られなくなり、そのまま無断欠勤かまして寝込む。
3.通っている精神科で適応障害診断貰う。
4.積読チャンネルの影響で自己理解のために言語化しようと紙とペンで書き殴るモードになる。
5.「俺は一人になれないと狂う人間だ」という結論に至る。
6.兄と初めて二人で飯を食べに行き、人生相談で過去5年の総会話量より喋る。
7.彼女と今後について相談し、現状の生活の維持はお互いのためにならないと判断された結果、同棲を解消する方向で引っ越しに向け動き始める。←New!

……というわけで、現在遅めの夏休みです。思い切って今回ノートPCを新調したこともあり、大学生以来の完全集中モードで執筆することができました。もう切り替えて生きていきます。
今作も、本来は喜劇で仕上げる予定でした。ただ書いている本人がこんな状態だったので、現実の鬱屈を創作で吐き出した結果、自然と暗くて重い話に変わってました。電話出られなくところのリアリティはあったと思いますよ(実体験)。後半は近所の図書館で書いたのですが、途中から苦しさでしかめっ面となっていたと思われます。また後で気が付きましたが、携帯へ掛けるのだと10円で15秒ですね。公衆電話エアプがバレてしまった。この発表の後に手直しします。

そういうわけですので、皆さんも心身の健康には気を付けててくださいね。
どうか、私のようになりませんように。


以上、今年もありがとうございました。


〈了〉

2件のコメント

  • 緒賀様
    ご企画お疲れ様でした。また講評もご丁寧にありがとうございます。

    個人的にはかぎろさんのお話がおもしろかったです。投稿した後忙しかったので企画に寄れず、こんなに参加作が増えていたのですね!

    エアコン、線香花火、公衆電話。いずれも人類の発明ですが、私たちの生活を彩ってくれるものたちに感謝したいです。

    改めて、企画に参加させていただき、ありがとうございました。また楽しみにしています。

  • ›祟期様

    ご参加ありがとうございました!
    来年も何かしら開催できればと思いますので、ぜひともお願いします!
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