紳士淑女の皆さま、先月の100分de名著をご覧になりましたか?
100分de名著というのは、、、
古今東西の名著を、たった100分で解説しようとする、
なんともはしたない番組で御座います。
んで、先月の名著は「古今和歌集」。
日本で初めて天皇の命令によって作られた、和歌集です。
なんで天皇が和歌集を作ったのか? という話は置いといて。
まあ素晴らしい回でした。
番組では、何個か歌をピックアップして、
その歌が詠まれたいきさつと、歌の中身を解説をしてくれる。
私は百人一首なんて漫画「ちはやふる」の知識くらいしかないわけです。
だから、説明を聞いたとき「嗚呼すごい」と。
感嘆してしまったわけです。
小野小町とかいろんな有名な人の歌がピックアップされていたんですが、
なかでも私が舌を巻いたのは在原業平(ありわらのなりひら)の一句。
歴史アレルギーの人に誰やねんってのを簡単に説明すると、
源氏物語の主人公、光源氏のモデルになった人です。
そらもう、めちゃくちゃにモテた。
そんな業平の一句。
ちはやふる 神代も聞かず 竜田川 からくれないに 水くくるとは
まず、ちはやふる、というのはめっっちゃ早いという意味。
歌の最初を聞いた読者に「とっても早いものって何だろう?」と提起する。
そうして、「神代(かみよ)」と続く。
神代っていうのはいわゆる神話の時代、神様たちがいた時代という意味です。
「ああ神様がいるようなそんな遠い話の世界かー」とフリを作っておいて、
「聞かず(=聞いたことがない)」と裏切ってくる。
神様の住まう世界を引き合いに出して、わざわざそれを否定する。
なんと大胆なことでしょうか(感嘆)
早くて、神話でも聞いたことがないような話、
「一体何が!?」というのを引っ張る、引っ張る。
そうして、満を持して登場したのが竜田川。
ここでようやく川が主語ですよ~ってのが明らかになる。
で、最後に下の句ですよね。
からくれないに 水くくるとは
「からくれない」というのは漢字で唐紅と書く。
つまり中国でしか取れないような真っ赤な紅色のこと。
1000年以上前の昔の話です。今ほど色染めの技術なんて発達してない。
当時の日本では鮮やかな朱色なんて滅多にお目にかかれなかった。
からくれないに水くくる、っていうのは、
水という布を真っ赤に染め上げる、ということです。
ここで勘の良い人なら多分想像がついたと思うんですが。
これ、紅葉の歌なんですよね。
紅葉の赤い葉が川一面を埋め尽くす景色を読んでいる。
まあ厳密なことを言うと、業平は、屏風の絵を見ながらこの歌を詠んだわけです。
屏風の川と紅葉の絵でこれを詠む。
いやいや、表現力すごすぎるでしょ。
現物を見ずにこんな風に詠めてしまう。
川が色染めをしているっていうおしゃれな擬人法とか、
普通の語順なら、唐紅に、水を染める、神代も聞かず、って語順になるところが、
さきに「神代も聞かず」とフリを作って、読者を引き付けるところとか、
いろいろな技術も駆使されているんだけど、
やっぱりにシンプルに、下の句で一気に情景を広げるところが流石ですよね。
光源氏のモデルにあっただけあって、業平って浮名をはせたことで有名なんですが、
まあ、そりゃモテるわなって感じ。
これ以外の歌も解説が面白かったので、
興味ある方は何かしらの方法で観てみてください。
私も漫画「ちはやふる」を読み返したくなりました。
といっても、1~3巻と最終巻しか持っていないんですが…