たぬきを食べた。
京都でたぬきと言えば、刻んだおあげさんが入った熱々のあんがかかったうどんの事だ。
くたっとしたコシのない京うどんをすりおろした生姜とおあげさんとネギと一緒に食べる。【絶品の美味さ】とは言えないものだが、京都に住まう人にはほっこりする味だ。京都以外でたぬきと言っても出てこないコイツは、京都のソウルフードと呼ぶには少し弱い。地味だしな。
私は一時、讃岐うどん原理主義みたいになっていた。【うどんはコシが命】みたいな。そして、讃岐うどんの対極にある伊勢うどんを【あんなもの、うどんじゃない】みたいに思ってた。
でも、今は讃岐うどんも伊勢うどんもどっちも好き。個性が立っていて、人に喜んでもらおうと生まれたものは全て愛おしい。
京都のうどんはコシがない。伊勢うどんほどじゃないけど、くたくただ。
でも、それがいい。
ほっこりする味っていいもんだ。
そう言えば、四半世紀程前に亡くなった祖母の好物はたぬきだった。
「ばあちゃん、今もやっぱりたぬきはくたくたで、ほっこりする味やで」と心の中で語りかけた。
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