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ラノベと認知傾向

読むものと書くものは必ずしも一致しない。俺は読むものはかなり雑食だ。

だから、今のラノベで求められているスタイルも知っている。
情景描写はいらない、感情描写もいらない。悲しんだとかでいい。セリフを読むだけでストーリーがわかるようにするべき、とか。

そういうスタイルを否定する気はさらさらないし、受ける理由もわかる。短い時間でタイパよくストーリーを摂取したいからだ。
それならプロットでよくね? ってなるかもだけど、実際、描写とか時間無駄でうざいだけだからどうせ読まないしプロットでいいって読者もいる。

これって、カレーとラーメン比べるようなものでどっちが良いとか悪いじゃないと思ってる。でも世にあるカレー屋がぜんめつしたら嫌じゃん。
いちいち隣の土俵に竹槍もって突っ込んでいかないなら棲み分けしてりゃいいわけです。

古いところで、まおゆうみたいなセリフしかない戯曲タイプの作品にも、俺の好きなものはあるし。

食べる分にはさ、ラーメンの気分の時もあればカレーの時もあるし中華の時もあるから、読む麻薬みたいな耽美な情景描写ばりばりダークファンタジーも、セリフの掛け合いだけでサクサク進む楽しいやつもどっちも世に存在して欲しい。

あとな、この問題でよく読解力が取り沙汰されるが、ステレオタイプに「情景描写好むのは頭でっかちな文章オタク」みたいな意見にだけは反論したい。

正直これって読解力より認知傾向の差がデカすぎると思ってる。

自分みたいな小説も脳内で映像化しながら読むタイプだと、情景描写とか主人公の容姿や所作が長時間出てこないとずっと豆腐背景に豆腐マンのままでストレスがすごい。
特に主人公が全く想像できないまま何話も進むとブラバ要因になりかねない。

(よっぽど話で惹かれるとか、主人公は実は〜だったみたいな叙述トリックならいいけど。あとわからないならわからないって情報を出してくれー。アサクリの主人公みたいな格好なら顔見えない方が自然なわけだし、それはそれで癖。情報で映像を埋められるかどうかが本質なので、髪の色とかがわからなくても所作が描かれていて脳内再生できれば満足)

ぶっちゃけ視覚優位すぎて読解力が低いからこそ、情報がないとついていけないとも言えるわけで…

特に映像として情報化しにくい、人間関係とか複雑な感情(拗れた嫉妬とか)を長文で説明されると全然頭に入ってこなくて頭がヒヨコになる。
女性向け令嬢ものとかで頭がヒヨコになって挫折するの大体それな……
ピヨピヨ
仮想戦記で地図つけてくれる作者には頭上がらない。
だから、読解力あるないみたいな単純な話だとは思えない。

逆に文章に長けた言語優位タイプの人の方が、文章を文章のまま読んでいくので視覚的な描写がなくても置いていかれない。文字と情動の結びつきが密だから、悲しんだの一言で同情できたりする(視覚タイプにこれは難しい。涙が溢れて肩が震えたとか書かれた方が同期できる)
そんな感じで、文章オタクの方が情景描写好むって理解はちょっと乱暴過ぎると思ってる。

あと小説に何を求めてるかの差。
俺は読む麻薬やりたい時は MV みたいな小説楽しいし、世界の車窓からみたいな小説読みたいときもあるし。
でもストーリーを手早く摂取したいなら そういうの見ないのは当たり前。

あと Web 媒体ならプロットみたいな小説でストーリーだけ追いかけるのもありだが、書籍化するとなると金を出すわけだし読まれ方の形態も違うから必要最小限の描写はあった方が良いという意見もあると思う。

まぁ、読む分にはそこそこ雑食になれるが、書くとなるとこれがちょっと異なってくる。
どうしても自分の得手不得手に左右される。

ぶっちゃけ俺は喋るの苦手で会話経験値も低いから楽しい会話文とか作るの苦手だし。自衛隊経験も格闘技経験もないから戦闘シーン面倒だし。今の自分の目的が「読まれることより、自分が気持ち良くなれる楽な書き方で一作完成させたい」なので「情景描写でしか書けないので情景描写しよ」になる。それがラノベにおいて悪手だと知った上で、今、自分が書くことを楽しむためにそうしてる。

手を描くのが苦手な絵の初心者が手を見えないポーズばっかり描くあるあるあると同じ。どっかで書けるようになっとかんと後がキツいのはわかってるんだけど。

なので、毛玉のスタイルは読まれるラノベではやってはならないことの塊みたいなもんです。
そんな中、合う人の所に届いて紹介してもらった奇跡には大変感謝しています。

まー、ひたすら情景描写あるし、最終話はそれをはっちゃけて好き勝手やってるので殆どの人にとっては最終話は読む価値ないと思ってる。

むしろ裏表紙かな?
そもそも文章で絵を描いてるだけだからね。実際裏表紙かもしれん。
綺麗な装丁にしたいから最終話を書いてる。

中の人のステ振りがおわってんだよ。
リアルで極振りはどうかと思うの。
小説書くのに向いてないだろこのステータス。

(音の点数低いのは、感音性難聴持ちのため)

2件のコメント

  • 私がラノベ界隈に戻ってきたのは、今から3年くらい前で
    「年の差、溺愛、イケオジ」という、スコッパー様なら必ず目にしたであろうタグの作品を求めてさまよいました。
    供給の多い活況ジャンルだったと思うのですが、私のイケオジと溺愛の感性が偏向しすぎていたのか、求める作品に出会えず、思い余って書いたというのが執筆遍歴となります。

    そのさまよう3年の間にも、タイパを求める傾向というか、ざまぁの加速感を感じています。
    最初は、ワガママな妹に長らく虐げられた姉令嬢が、いわくつきの年上貴族に嫁がされるけど、溺愛スタート、のちにざまぁという展開が多かったのですが

    昨今は、いじめられる前のシンデレラが夜会に乗り込んで、ガラスの靴をメリケンサックに、義姉に右ストレートみたいなスピード感ですよね。速い。

    何かしらあの速度感を楽しむコツみたいなものがあるのだと思うのですが、未だ習得できておりません。

    でも、リィンと毛玉の世界には、こんなに幸せにとびこめましたから、タイパ特化能力はしばらくお預けでもよさそうです。
    素敵な裏表紙を楽しみにしておりますよ!

    ガオンって一部かじられたみたいなステータスすごいですね。視覚情報ツヨぉ……。サムライみたいなステ振りです。

    音の点数が低いと仰っていますが、路面電車で走った町のざわめきとか、わくわくステーキのガヤガヤ感とか、川遊びの水音や虫の鳴き声とか、結構環境音が聞こえてくるタイプの話をお書きになると思うのですよ。
  • 右ストレートわらいました。
    趣味があっていればスピード展開も楽しめるのですが、書くとなると別だなぁという感じですね。

    無駄を削ぎ落として極限までスピード展開を高めるのはあれはあれでスキルが必要だとおもうのです。ストーリーの骨子のごまかしが効かないので。

    音はですね…
    かなり意識的に書いてます。意識しないと無音になりがちなので。普段いかに音に頼っていないかを痛感する。

    読み込んでないと出てこない感想をもらえて内心ぴょんぴょんしてます!
    裏表紙がんばります。

    (11日に返信、修正して再投稿)
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