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満開の春

枯れ枝に春

満開の春

諦めることなかれ。

氷河期が過ぎ去り、春が訪れる。

一際の暗闇の後に日輪が水平線を突き破るように

春が来る。

暁を背に東から春が来る。

颯爽と裾をはためかせ、春が、来る。


嘆き悲しむことなかれ。

今はまだ冬なのだ。

その悲しみは糧に

その苦しみは肥に

来たるべき春の為に。


悲嘆することなかれ。

永久凍土の氷河期にも

いずれ果てが訪れるのだから。


その涙の一雫が

人知れず枯らした声が

南極に海を運ぶのだから。


咲き誇る者達よ。

散ることを厭うな。

咲き誇る者達よ。

散り際を失うな。

永遠の中の一ミリ秒。

砂時計の一粒。

刹那の中に散り、永遠を想うことを忘れるな。


咲き続ける花は無く

散りゆくことが桜の美学。

居座ることなかれ。

君散り給え美しく。


その花びらは声となり新たな花の糧となる。


満開の春が来た。

万雷の喝采を浴びながら春が来た。

最後の拍手と春風と雨。

その時まではひたすらに輝き

見る者の心に春を謳う。

命に満ちた春となれ。

4件のコメント

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