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ラーメン2

ーーその記憶は小学生の頃まで遡ります。
私は北地区に住んでいるのですが、ある日別の東地区に住んでいる友人が「こっちの駄菓子屋にはもんじゃ焼きがある」と言うのです。私は驚きました。もんじゃ焼きはお好み焼き屋さんでサイドメニュー的に食べるものであって駄菓子屋で食べるものではないからです。それに北地区の駄菓子屋はお湯に十円取るアコギな商売をしており、当時食べログがあったら星マイナスレベルの悪徳企業でした。ちなみにもう一店舗駄菓子屋があるのですがそこは、賞味期限切れを堂々と売りさばく食品衛生監査員御用達の店でした。前門の虎、後門の狼となった北地区から、いち早く抜け出すべく即友人と約束を取り付けて行くことにしました。

友人に連れて行かれた東地区の駄菓子屋は、確かに店の真ん中に鉄板が置いてありました。それを車座に囲んで駄菓子を食ったりもんじゃを焼いたり出来るということなのですが、店頭に座るババアの視線を常に浴び続けなければならない、というのはたいへん居心地が悪かったのをおぼえています。

しかし来たからにはもんじゃを食べずには帰れません。友人は私の居た堪れなさなどつゆ知らず、慣れた様子であれこれトッピングを注文していきます。一方私が注文したのはチーズです。前述の通り私はもんじゃ焼きはお好み焼き屋さんのサイドメニューぐらいに考えており「チーズもんじゃ」といえば、キャベツとか紅生姜とか卵とか、最低限入っているものが提供されるのだとすっかり思い込んでいました。

ババアが持ってよこしたのは白濁したただの液体でした。
しかも粉チーズて…。

こうなるともはや小麦粉焼きでしかありません。どうやらこの店では、自分なりにアレンジするのが暗黙の了解だったようで、駄菓子屋のババアは私が何も言えず小麦粉焼きを量産するのを見て「そんなもん食っても美味かない」と言いました。そりゃそうだ。チーズの味なんかしやしねえ。背後の棚に陳列してあるうまい棒を見て「これにくるんで食べたら美味しいかも」とか、よくわらないことを考えていたのをおぼえています。

私は店の料理に客が味付けをすることに否定的な人間でして「店として提供する以上最善を尽くせ。おれは黙って食うだけだ」とか考えている人間でして、こういう不測の事態にはすこぶる弱いのであります。

そういうわけで、前置きが長くなりましたが、件のラーメン屋ももしかしたらあの手この手で自分好みの一杯を作ることを旨としているのかもしれないなあと、ふと思った次第です。

ラーメン屋のババアが、私が素ラーメンを啜るの見て「そんなもん食っても美味かない」と言っているような気がしてなりませんでした。

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