同人誌『ヘリオテロリズム』Vol.3(発行人 そらけい/2005年11月)に寄稿した作品です。この物語はフィクションであり、前頭葉賦活剤は架空の設定です。
文責は作者にあります。ですが、執筆が十年以上も前であること、精神医学や脳科学の発展は日進月歩であり、作中にある説明は古びている恐れがあることをご了承ください。
主要参考文献を紹介します。マシューの症状はA.R.ルリヤ『偉大な記憶力の物語 ある記憶術者の精神生活』(訳者 天野清/文一総合出版/1983年11月)を参考にしました。なお、この本は2010年に岩波現代文庫から再刊されています。
作中では簡単にしか触れていませんが、プロザックなど抗鬱薬の副作用についてはもう少し込みいった背景があります。興味があればデイヴィッド・ヒーリー『抗うつ薬の功罪 SSRI論争と訴訟』(監修 田島治/訳 谷垣暁美/みすず書房/2005年8月)を読んでみてください。
本作のテーマは、ラス・ライマー『隔絶された少女の記録』(訳者 片山陽子/晶文社/1995年7月)に影響を受けました。十三歳まで小部屋に閉じこめられ、誰とも言葉を交わすことを許されなかった少女を巡るドキュメントです。今回をきっかけに再読しましたが、私の作り話がいかに稚拙なものだったか思い知らされました。