第四回創元ミステリ短編賞に応募し、二次選考を通過(三次選考にて落選)した短編小説です。
四年ほどかけて『紫ヶ森湖で起きたこと、そして起こらなかったことのすべて』という長編本格ミステリを執筆しました。その作中に登場させたマーダーミステリーが手前味噌ですが面白く、似た試みができないかと頭を捻らせるうちに奇妙なシチュエーションが閃き、こんな形になりました。
以下、本作の結末について触れます。未読の方はご注意ください。
この結末はNHKの番組『100分de名著』から、キューブラー・ロス『死ぬ瞬間』を採り上げた第四回からヒントを得ました。
死が間近だと宣告された患者の精神状態は否認、怒り、取引、抑鬱、受容というプロセスを経ます。一方で患者は、その初めから終わりまで希望を抱き続けているというのです。新しい治療法がみつかるかもしれない、他の人と診察結果を間違えられているかもしれない。そんなふうに、なんとか死を回避できるのではとずっと望みを抱いている。
創作とは無関係に興味本位で視聴した番組でしたが、思いがけず作品に奥行きを与えることができました。人の心に思いを馳せるのはなかなか難しいものですね。