***** 瑠璃の家庭 *****
瑠璃の父は大手銀行頭取……
母の涼子は母子家庭に育った苦労人……
成績優秀だった涼子は、子供が大好きで将来の夢は小学校教諭でしたが、母が病気がちだったので生活を支えるため仕方なく、高校を卒業して最大手菓子メーカー〈大昭〉に一般事務員として勤務していたのです。
ですが⁉弟が成績が優秀だった為に、自分の荷の前だけは絶対に踏ませたくないと、会社には内緒で夜の世界に入っていったのです。
何としても優秀な弟の希望する大学まで出してやりたかった涼子は、どうしようか⁉考えあぐねています。
ある日六本木駅の改札口を出た所で、和服姿の年の頃は40代前半位の水商売風の美しい女性が階段を踏み外して……
「大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。」
あわや大惨事の所を、とっさの所で涼子が支えて難を逃れることができたのです。
実はこの女性は六本木にクラブを構える、クラブ̪シャトウのママ弥生なのです。
それからというもの、何かにつけて涼子の事を気に掛けてくれるのです。
「何か困った事があったらいつでも相談してネ」
そしてクラブシャトウのママ弥生を助けた事が縁で、ママの店の裏方を手伝う事になったのですが???
やはりホステスさんとは、収入にはかなりの格差があるので、ある日ママに相談……
「ママ弟の為にも、もっとお金が必要なんです。だから私もお客さまの接待の仕事させて下さい。」
「あなたの事妹のように思っているのよ、だから余りこの世界に引きずり込みたく無いのよ」
「大丈夫です。がんばりますから」
ママの心配をよそに、日本人形のような緑の黒髪に、おかっぱ頭のストレ-トヘア-のそれはそれは清楚な、こんな夜の世界には到底似つかわしくない、汚れの無い神秘的な涼子はアッという間にお店のナンバー1になったのです。
そこで瑠璃の父武45歳とまだ23歳の若さの瑠璃の母涼子は出会ったのです。
{嗚呼…な~んて綺麗な女性なんだ!}
父武は、大手富士岡銀行部長、お客さまの接待で度々このクラブを利用していたのです。
父の武は純粋培養された涼子を一目見るなり、こんな夜の世界には、到底相応しく無い、場違いな、華奢な控え目な、粗相とした美しい日本人形のような母の虜になったのです。
ですが父は本妻さんとは、絶対別れる事は出来ないのです。
本妻麗子の父は富士岡銀行の頭取……
目に入れても痛くない一人娘の麗子と、瑠璃の父武は恋愛結婚ですが⁉
頭取の父は会社をより万全なものにする為に、政略結婚を望んでいたのです。
その為猛反対……
「絶対に許さん❕お前はゆくゆくこの富士岡銀行を継ぐ身、会社のためにもならん只の社員なんかと絶対ダメだ――!」
武に夢中な麗子は「武さんと結婚出来ないくらいなら死んでやる‼」と脅かすものですから渋々両親も承諾、そして現在に至ったのです。
富士岡銀行頭取になれたのも妻麗子のおかげ……
その為、妻には到底頭が上がらないのです。
いくら愛する女の為とは言え離婚等あり得ないのです。
郊外に、母の涼子と娘の瑠璃と妹の真理が住むには、充分過ぎるお洒落なヨーロピアン風の瀟洒な一軒家を建てて貰い、何不充無い生活を送っているのです。
ですが、瑠璃は父と母の事を恥ずかしい、隠しておきたいと思っているのです。
父は、水曜日に週1の割合でやって来るのです。
本宅には、歌集同好会が有りその後は、「皆で一杯やって帰るから」 と言って瑠璃の家にやって来るのです。
そして、明け方帰って行くのです。
本妻の子供達は、燦々と降り注ぐ太陽の下で、それを当たり前に生活して!
私と妹はと言えばパパとママと4人揃って出掛けた事など皆無に等しく、父親参観など以ての外、友達には「パパは銀行頭取」とは言っているのですが、日陰の身、銀行名は伏せているのです。
瑠璃は、{私は本当に父に愛されているのかしら⁉ただ美しい母を抱く為だけに、我が家にやって来ているのでは⁉}
何故こんな歪んだ気持ちになったのか?
友達のお家に遊びに行けば、優しいお友達のパパとママが出迎えてくれ、仮初めにも一瞬擬装家族体験をする事があり
{こんな家族だったらどんなに幸せか?}
と羨ましくも、妬ましい激しい嫉妬に駆られるのです。
母の、父がやって来る日のウキウキした、素でも美しい母が、厚く化粧を施し、真っ赤なルージュをまるで娼婦そのものの、いっそう淫らに美しく 💛⋆*
♡・。*💋そんな母が大嫌いなのです。
続き*