とかいうタイトルは近況ノートに限らず、ブログとかツイッターだったりとかでもあると思うけれど、
そんなん絶対に寂しい結果になると思うのでやりませぬ。
すげえですよやれる人って。意見募集系とか恥ずかしい結果に陥るという不安が強くてできないです。
タイトルと全く関係のない近況ノートを今日は目指しています。
今日はあれです読書感想文です。
公害裁判だとかの本はとても勉強になりました。
ですがそろそろ物語が読みたくなりました。教養書シーズンが終わって次は小説が読みたいのです。
かーみーのーほーんー
でかい月だな 水森サトリ
10年以上前の小説すばる新人賞受賞作です。
中2の主人公、ユキちゃんこと幸彦は、友人である綾瀬と夜間にドライブをしていた。
廃工場で出会った少し特殊な友達。
帰ろうという幸彦を、綾瀬は突然
崖から突き落としたのだ
幸彦は一命はとりとめるが、もう二度とバスケができない体になってしまう。
わけのわからぬまま突き落とされた不幸への道。けれど綾瀬を完全に憎みきれなかった。
周囲の温度。わかったようことをいう周りとの軋轢。
徐々に進行するやさしさ共和国の魔の手。
痛いほどに複雑な心情を繊細に綴る、少し不思議な青春の物語。
いやー面白かった。
こういう言い方もどうなんだろうと思いますが、カクヨム上の評価指針であれば迷いなく☆みっちゅだします。
やっぱりバリバリアクション性のある描写よりも、繊細で少しめんどくさい心理描写よの方が好みのようです。それでもやりすぎのものを見るとくどいわよ!と一瞬オネエが垣間見えますが。
微妙にくどかったり、現代ベースと考えると大袈裟な描写もありましたが、許容範囲です。
感想も一通り読んで皆んな言いますが、主人公の友人となる中川くんは確かにいいキャラしてる。ある意味よくいる天才変人キャラなのですが、彼はとても優しい。優しさを押しつけないところにあるんだろうなあ。
家に泊めてあげたり、居場所を提供してあげたり、かなり優しさを発揮するけれど、それを決して誇らないし押しつけない。これは確かにいい男というよりは宗教開いて教祖とかやりそうですわ。
で、邪眼を封印しているというクラスでは誰とも喋らない孤高少女、横山かごめもやりますね。重要なキーであることは最初から示唆されていましたが、まさかあそこでの役割が彼女とは。前半から後半にかけて大きく物語の毛色が変わるので、もう少し前半からピックアップしてた方がすんなりと変化を受け入れやすかったんだろうなあとも思ってしまいました。
だって、現代ドラマかと思ったらSFだったでござる、といった具合です。騙されたぜ。
他にも家族や大人たちとの関係については投げっぱなし感はありますし(物語のテーマや主軸の関係でわざとそうしているのかもですが)、ある程度完璧な決着を終えているわけでもなく、賛否両論の意見がありました。
もやもやとしたものが残る。完全にスッキリとはしない。
そんな感想もあった中、私は思います。
この物語にとっては、これ以上を思いつかないくらい相応しいラストだと思います。
物語内で主人公は足が思うように動かなくなった苦痛を味わいます。
それだけであれば、障害を乗り越える的な成長ストーリーなのですが、主眼は決してそこではないのです。足を失ったことで周囲の反応は変わりますし、その出来事に対する心の葛藤がとても見どころです。
自分を突き落とした綾瀬を憎み切れない。違う、自分にも非があったんじゃないかと思ったり、それでも憎んだり、やっぱり前みたいな友達でいたい気持ちがあったり。様々な気持ちは色々な形で現れて、思春期特有の不安定さに繋がります。改めて気持ちというものの複雑さに唸らされました。
綾瀬を恨んでいいのは両親でも兄弟でもなく、自分だけだ。
気持ちはわからないけどどこかわかる気もする。多元的な心のあり方の表現がとても見事です。
そしてクラス内だったり世界を覆い尽くすやさしさ共和国の侵略!
誰もが協調性を持ち始めて誰かにやさしくしようと思いにかられる出来事があります。
これがこの作品特有のSF要素でもあるんですが、主人公たち含めた数人はやさしさの渦にはのまれません。異常なことだと感じ取ります。
みんな仲良く!
みんなにやさしい世界に!
それのどこがいけないことなのでしょう。
みんなが幸せになれるようにやさしさで満たされることは、いいことのように思います。
でもねー私も幸彦くんと同じように思うんです。
なんだか気持ち悪いって。
専門学校時代、福祉職を志す人ばかりだったので、みんなかなり優しい人ばかりでした。
そりゃあ多少の衝突や意見の食い違いはあれど、それでもかなり平和だったのです。
幸せな反面思ってました。
なんか違う。気持ち悪いって。
この気持ちをうまく説明して内心をあばきだすことは出来ないです。
ただこの物語で表現された、影響されたやさしさが嫌いということにとても共感できました。
横山かごめはある意味とても好きなキャラなように思いました。
ひねくれているめんどくさい子ですが、芯があるひねくれかたです。絶対簡単には幸せになれないしなろうとしないあり方がとても好きです。桜が散るところを好きだと思うみたいなものですかね。
椿の花の散りかたが、まるで首が折れる様、といった方が近いかもですが。
それにしても、SF要素がエヴァじみているなあと思うのは、これもエヴァの呪いかもしれないです。
まあでもこの物語は、まだまだ一区切りであって決着ではないのです。
でかい月だなあに込められた想いの一端に触れて、その触れ合って形が変わった今、もう前みたいには戻れないのです。
形が変われば、新たな触れ合い方が生まれる。
そんな変化の虚しさを味わいながら進んでいく青春の物語です。
とても面白かったです。
でも恋愛要素だけはとってつけた様だと思ってしまう!
いやいるけど! でももっとこう序盤から欲しかった!
そういえば、かごめってめっちゃア◯カっぽいな←コラ