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『椎名なのかは探偵なのか?』執筆メモ

キャラクターの設定等をメモしておきます。本編のネタバレは無しです。本編中ではっきり明かされなかった、あるいは使われなかった設定というのが少々あるんです。



 万人向けの探偵物の枠組みを借りたコメディをやろうとして、どうすればコメディになるかということを考えた結果、ポンコツ探偵とポンコツ怪盗が対決すれば放っといてもコメディになるだろう、という目論見で書き始めました。また、椎名探偵の『キャラミス』でもあるため、椎名探偵のキャラクターがある程度濃く書かれています。これほど推理しない探偵は珍しいと思います。
 多数の探偵小説から借りてきた『お約束』やイメージがごちゃごちゃと混ざっているのがこの作品です。しかし主人公の椎名探偵には意外にも元ネタのイメージがありません。探偵ものの主人公は天才型がほとんどなので、ここまでのポンコツ探偵に一致する適当なイメージがなかったのかもしれません。




【主人公?椎名なのか】

 主人公の『椎名なのか』という名前は、『死なないのか』のアナグラムです。絶対に人が死なない探偵物なので。死にません。容姿は宇佐見刑事が言っている通り「農協のキャンペーンガールが似合う」という感じで、愛嬌はあるが決して垢抜けた美人ではないという設定です。コメディなので美少女設定ではありません。

 ちなみに2話で警部が言っているように、彼氏はいないようです。これには椎名がいまいち芋っぽいという理由もありますが、男に言い寄られると逆に一歩退いてしまうからでもあります。椎名はイケメンに遭遇すると彼氏いないアピールするくせに、男がいざアプローチするとごめんなさいしてしまうので、一向に彼氏ができません。愛嬌はあるし、変に周囲に気軽にアプローチしまくるため、決してまったくモテないというわけではないのですが、だいたいは結局自分から振ってしまいます。相手の性癖が読めるという謎能力を持っているがゆえに、実はちょっとした男性恐怖症なのです。BLに興味があったりするのもその辺りが影響しています。

 宇佐見刑事には歳が近いわりに警戒心を抱いていないのは、宇佐見が別にイケメンではないからと、宇佐見本人も気づいていない自身のBL傾向を椎名が感じ取っているためです。あれ、意外と設定が細かい?

 この異能の設定は、椎名は推理能力皆無という酷い設定の探偵なので、推理能力を引き上げないけど死ぬほどどうでもいい感じの洞察力を持たせようとしたためだった気がします。それでも作中では、この異能は結局犯人逮捕の決定打にならないものの、他の要素と絡みつつ微妙に犯人を追い詰めるのに役立っていたりします。

 作中にあるように椎名探偵は料亭でアルバイトをしているのですが、料亭の庭の池にいる鯉に名前を付けて可愛がっていて、ちょっと鯉が好きという謎設定も。館長ほどのマニアではないのですが、作中で鯉を見たがっているのもそのせいですし、館長に話しかけたりしたのも単に世辞というわけではありません。本当に鯉が好きだし、博物館の鯉には感銘を受けているのです。

 作中に何度も鯉が出てきますが、作者は別に鯉マニアではありません。この小説で最初に考えたのは最初のシーンですが、この怪盗の予告文の内容のせいで、作品全体に鯉が感染しました。






【縦溝警部】

 縦溝警部は名探偵コナンに出てくるあのヒゲの警部のイメージだったんですけど、よく考えたらあれは横溝警部ではなく目暮警部でした。この警部の命名は、この作品の登場人物の中で最もテキトーです。もっさりした風貌で未婚ですが、美人ニュースキャスターの彼女がいるというどうでもいい裏設定があります。素朴な人柄のためか、実は結構モテます。
 メインの三人で「私」「僕」「ワシ」と一人称を使い分けるために、この人の一人称は「ワシ」になっています。目暮警部っぽいイメージはむしろこの一人称が原因で後付けされた感もありますが、作者としては目暮警部はちょっと違うなという感じもしてます。別に太ってはいませんし、ヒゲもありません。機械音痴でダジャレが趣味という設定はなぜ付けたのか忘れました。椎名と宇佐見だけでは何かと迷走しがちですが、そこに縦溝がリーダー役で入ることで何とか物語は進行していきます。



【宇佐見刑事】

 宇佐見刑事は、高木刑事と『三毛猫ホームズ』の片山刑事のイメージが混ざっています。宇佐見刑事は細マッチョなのに作中で何度か撫で肩になりかけてるのも片山刑事のイメージのせい。この人にも別にイケメン設定はありません。
 またこの人には作中で匂わされているような結構大きな伏線というか設定があるのですが、これは続編でも書かない限り活かされることはないでしょう。この設定に付随して、機械に強いという本編であまり強調されていない設定もあります。
 ちなみに、基本的にはノーマルですが、作中で匂わされているとおり、彼の中には男性相手にもドキッとしてしまう本人も気付いていない傾向が眠っています。なんて設定だ。

 また、宇佐見はツッコミなので、自然と宇佐見視点の語りが多くなりました。宇佐見はもうひとりの主人公と言えるかもしれません。




【怪盗ストライダー】

 怪盗ストライダーはただの脳筋マッチョ男に若干怪盗キッドのイメージが混ざって出来ています。自分でも何だかよくわかりません。最も造形が謎のキャラクターです。そういえば、これを書く直前に『プリンス・オブ・ストライド』のアニメを見ていたことも幾らか影響しているような気がします。この作品は基本的にはファンタジー要素はないのですが、椎名の異能とこの人の身体能力のふたつに限っては、ややファンタジーじみています。

 作者の癖で、メインキャラクター三人の容姿はあまり詳細には描写されていません。元ネタにかかわらず、好きなイメージでお読みください。





【回収されきっていない伏線】

 あと、途中で怪盗の指紋の件が出てくるのですが、実はあれはプロットを調整したときに余った伏線です。あれは本当に怪盗がアホだったということでしかないので、あんまり意味を考え込まないようにしてください。

 椎名は推理力がないという設定上、最後の解決編で椎名が全部推理してしまうのはおかしいです。でも3人がうまく協力しながら全体像を推理していく会話を構成するのがとても面倒で、読んでいるほうもわかりづらくなってしまいそうだったので、椎名がががっと一人で推理してしまう形にしています。椎名探偵は事件が解決してから推理力を発揮する超スロースターター探偵という設定でひとつお願いします。






【『物語のポイント』について】

この作品にはいろいろと謎が含まれるのですが、この時点まで読み終えたら読むのを止めて推理してみてほしい、という明確なポイントがありません。いろいろな小さな謎が微妙に絡み合いながら進行し、突如終局に向かって転げ落ちていくので、物語をのんびり読み進めながら事件の全体像を把握するというのがミステリとして読者に問われる問題になります。

 いわゆるWho done it? や How done it? といった形式ではなく、事件の問題点がわかりにくいため、『物語のポイント』として読者が想像力を働かせるべき部分を明示しています。初心者向け、なるべく親切にというモットーで書かれた作品です。

 まあそもそもがミステリというよりコメディ寄りに書かれた作品です。コメディとして楽しんでいたら、読み終えたらミステリとしての面白みもあった、というような感想を抱いて頂けたら、作者の意図通りになっているんじゃないかと思います。




【続編について】

 縦溝警部の彼女の設定や、宇佐見刑事の過去の設定は、実は続編向けに検討されたものだったりします。続編を書くかどうかは全く未定ですが、もし読んでくれる人がたくさんいるようなら、ぜひ書いてみたいと思います。続編について確実にわかっていることは、続編でも絶対に人が死なないということ、椎名探偵は本当にどうしようもないほどポンコツだということだけです。


【矛盾!?】

そういえば、物語の根幹に関わる部分で、矛盾にしか見えないという部分があります。よく考えると、『生蔵丸』を狙うのは不自然なのです。実は理由があってこれは矛盾でないのですが、これについては動機について犯人の詳しい供述がないとわからない情報で、読者が補間しようがない理由付けなので矛盾に見えると思います。ネタバレになってしまうので詳しくは書きませんが、どう加筆しようか迷っています。



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