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新春 グエムル ––漢江の怪物––!

新年おめでとうございます。海野しぃるさんの初めてでもよく分かるクトゥルフ講座で、ご紹介というか豪快な無断外注をいただいたので、新春早々グエムル 漢江の怪物の話をします。今年初の映画レビューがコレかぁ……
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880900124/episodes/16816927859173634121

本作は2006年の韓国映画で監督はあのアカデミー受賞作パラサイト 半地下の家族を撮ったポン・ジュノ。

内容はSFモンスターパニック映画に近い。突如、漢江に冒涜的な両生類っぽい形をした化け物がひとびとを捕食し始め、川辺でひなびた露店を営む男の一人娘が怪物に攫われてしまう。
政府や軍は事実を隠蔽に必死でまともに取り合おうとしない。携帯で娘からのSOSを受け取った男は家族とともに自力で救助に向かおうと怪物の住む下水道へ繰り出す。

とはいえ、ハリウッド的なアクションを求めるとだいぶ違う。
まず、怪物が何か弱そう。トラックで轢けば何とかなりそうだ。
家族もアベンジャーズみたいにカッコいい集まりではない。貧乏な中年親父とその父、長所は火炎瓶を作るのが上手いこと短所は火炎瓶を投げるのが下手なことみたいな男と、常にダサいジャージで微妙な戦歴のアーチェリー選手の女。ちょっともう駄目そうでしょ。

この話の主眼はパニックというよりパラサイトなどにも通じる、貧困層の足掻きの虚しさだ。守ってくれない政府や米軍への不信感や、社会の核心に近づいてもそれを変革する力は何もない徒労感がずっと漂っている。

海野さんが講座でご紹介くださったクトゥルフTRPGのシナリオでグエムルが取り上げられているそうで、確かに甚大な被害を及ぼす怪異が日常の隣にあり、それに気づいたものは狂人扱いされたり一歩間違えば二度と戻れない恐怖は、力の及ばない邪神との戦いに近いかもしれない。

あと、グエムルにはところどころ反米軍の風刺がある。そもそも冒頭で化け物が出る原因は米軍が川に薬品を不法に流したせいだが、これは本当に漢江に米軍がホルムアルデヒドを不法投棄した事件がある。
また作中に出てくるエージェント・イエローという薬品は米軍がベトナムに散布した枯葉剤エージェント・オレンジの皮肉だろう。
白日の下に晒されない真実や軍への不信感は、徴兵試験に落ちた劣等感を抱え続けたラヴクラフトにも通じる……かも?

モンスターパニックではなくブラックな笑いと悲痛さのある社会派ホラーとして観ればとても面白い映画だ。観ましょう。
新春に観るものかわからないけど……

相変わらず近況ノートで映画の話しかしないと叱られてるので自作の話も。
クトゥルーよりだいぶショボいけど何か変な神がボトボト落ちてくる田舎の寒村と役所の人間のホラー領怪神犯と、クズと狂人か竜を戦闘機代わりにパニック映画的化け物と闘うドラゴン・ドッグファイトを書いています。よろしくどうぞ。

令和4年も良き冒涜ライフを!

1件のコメント

  • なんてことでしょう……私の無断外注が大変なことに……
    こちらのリンクも紹介させていただきますね……
    ありがとう……!
    本当にありがとう……ありがとう……!
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