創作論なんて偉そうなことを語る柄でもないですし、そもそも私のような面倒なやり方をしている人などいないだろうなとは思うのですが……。(^^;
ちょっと自分のための記録も兼ねて、書き始めるまでにやったことをここに記しておこうと思います。
おこがましいのですが、たとえば、長篇を書いてみたいけど、まだ思いつくままに一人称の短篇や掌篇しか書いたことない、なんていう方の参考になれば幸いです。
1️⃣ アイデアの種をあたためる
当たり前ですが、こんな話を書きたいな、と思いついたときにメモ。
今回の場合、シリアルキラーの話に登場したFBIコンビのスピンオフをそのうち書きたいなという思いがあり、『FBIを定年退職したサムが探偵事務所を開く そこにネッドがやってくる?』とだけ、メモに書いてありました。ずっと数ヶ月のあいだ、メモはこれだけでした。
そこへ、なにか思いつくたびに書きたい要素やシーンなどを書き足していきました。ここは次作のネタバレになるので、詳しくは書けませんが(笑)
この段階ではストーリーはまったく浮かんでいません。三題噺のお題だけ書いてあるようなものです。
2️⃣ ふっとストーリーの一部が浮かぶ
お話が浮かぶのは、インスパイアされるのか映画を観ているときのことが多いです。パクっているわけじゃないですよ(笑)
たとえば、メインとなるストーリーに、それとは別のなにかを絡めるとか、キャラの置かれている状況(プライベート)とメインストーリーの事件と重ね合わせるとか……そういった構成のヒントを得て、こういう話にしてみるとどうだろう、と思いついたことをメモします。
3️⃣ プロットを練る 第一段階
浮かんだ、まだ朧げでおおまかなストーリーに、もともとあったアイデアなどを組み合わせて輪郭をはっきりさせていきます。
メインストーリーとなる事件とその展開、それに絡めるサブプロットとしてのキャラクターの背景と、その物語、他のキャラクターの設定など、ああでもないこうでもないと考えながらひとつひとつ書き込み、捏ねまわします。
キャラの設定を決めてからストーリーをいじって、ストーリーをいじってから再びキャラの設定を変えたり。しっくりくるものになるまで、その繰り返しになります。
4️⃣ 資料集め&付け焼き刃な知識の叩き込み
プロットがある程度まとまったら、その内容に必要なことを調べて、資料を集めます。
いつもやっているのは、舞台となる土地の地理、気候、主要な交通手段、名所、街の雰囲気、ご当地グルメ、よく飲まれている酒などを調べて頭に叩き込むことですが、今回はアメリカが舞台なので、ざっとおさらいする程度でした。これがモロッコを舞台に書くぞ! とかだったらめっちゃ大変になります(笑)
ただ、シリアルキラーのお話のスピンオフなので、アメリカはアメリカでも一九七〇年代後半です。なので、その頃のアメリカについて片っ端から読めるものを読みました。今回の場合、そこで「ハーヴェイ・ミルク」の名前を見て、ああそうだったと思いだしました。
そして、ハーヴェイ・ミルクについてしっかりと読みこみます。ショーン・ペンの映画を観ていないことに歯ぎしりしながら……(笑)
ここで、ハーヴェイ・ミルクと、いつもの私の音楽の趣味から、何年に起こった何処の話なのかと、サブプロットのアイデアが新たに浮かびました。
5️⃣ プロットを練る 仕上げ段階
調べ物をして集めた資料や知識など、サブプロットのアイデアで肉付けしながらプロットを練り直していきます。
今回の場合、メインにと考えていたストーリーを脇に避け、サブプロットを活かす新たな事件を考え、メインに据えました。いや、ダブルプロットかな? 要するに、ふたつの事件が同時進行して――おっと、この先はネタバレになるので云えませんが、まあそんな感じです。
この段階がいちばん時間と手間暇がかかります。
詳細なプロットに仕上げるために、すべての登場人物の設定や抱える背景、動機、心情などをプロットに手を入れながら詰めていきます。お話のなかで触れない部分まで、しっかりと詰めます。そのほうが人物の描写に奥行きが出る気がするのです。なんていうか、読んだ人が、これ、この人がこうなのは実はこうだからじゃないのかな、とか想像してくれたときに、当たりです! と云えるくらいの感じ。
そうして、ストーリー展開を考えて書いて、そのキャラの行動の裏にあるものを考えて書いて、またプロットに手を入れて……と、どんどんプロットを納得のいくものに仕上げていきます。
ここの展開時にこういうシーンを入れたいなども、あれば書き加えておきます。そうしないと書いているときに忘れちゃうので(笑)
そうして詳細なプロットを仕上げたら、構成を見直して演出を考え、「この事実はここまで明らかにしない」「この時点では◯◯はそれを知らない」「この前日、◯◯が起こっている」など、要所の注意点も書いておきます。
6️⃣ 設定をしっかり詰める
登場人物の名前や年齢、育ちや環境、性格など、まだ埋めていない部分の設定を決めます。
このとき、名前はなるべく有名な人物やフィクションのキャラクターと同姓同名にならないよう、検索して確かめます。一般の人ともなるべくならかぶらないに越したことはないですが、まず無理です(^^;
あと、お話のなかで描写すると思われるものは、厳選して決めておきます。趣味がもろに出るところです(笑) サムとネッドの乗っている車、使用している銃など、七〇年代後半ということを念頭に置いて選びました。
探偵事務所の間取り図も準備しておきます。サンフランシスコの、あの坂道沿いに並ぶヴィクトリア様式の住宅が素敵だなあと思っていたので、検索して適当な画像を探します。それを参考に、家具の配置などを決めたかんたんな間取り図をペイントソフトで作成しておきます。
これを作っておくことで、部屋の中でのキャラの動きなど、描写がすごく書きやすくなるのです。
7️⃣ タイトルが決まっていたほうがいい
あくまで私の場合ですが、先にタイトルが決まっていたほうが書きやすい気がします。
もちろんいつでも何度でも変更していいですが、こう、タイトルが決めてあると目的地をしっかり目指せるような気がするんです。タイトルがないと、あっちふらふらこっちふらふらしそうで……(笑)
ということで、ここでいきなり次作のタイトルをお知らせしてしまいます(大丈夫か)
いちおうまだ仮題ということにはしておきますが、たぶんもう変えません。
〈MISSING:探偵サム・マクニールの事件簿〉です。
早ければ年末、時間がかかっても来年の春頃の公開を予定しています。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!<(_ _)>