九官鳥村役場、広報課です。
本日、我が村唯一の中学三年生である瀬戸内新作(せとうちしんさく)くんが修学旅行に向かうために乗り込んだ漁船「ゆーらしあ大陸号」が、無事、目的地のアメリカ、カリフォルニア州の港に到着しました。
漁船を操縦していたのは、新作くんのおじいちゃんである瀬戸内旧作(せとうちきゅうさく)さん、八十歳。
旧作さんは、村民の皆さんご存知の通り、操船暦六十年を超える大ベテラン漁師。
この度、自慢のMy漁船を駆って見事に領海を侵犯し、米国海軍の追跡を振り切ってアメリカへの不法入国を果たしました。
新作くんは当初のスケジュール通り、カリフォルニア州をヒッチハイクで横断し、そのままお隣のネバダ州にある夢と虚栄の都ラスベガスのカジノへ、人生の修学に向かう予定です。
まだまだ道のりは遠いですが、ご近所に住む猟師の官能助兵衛(かんのうすけべえ)さんが貸し与えてくれた猟銃さえあれば、きっと無事にヒッチハイクを成功させて、ラスベガスにたどり着けることでしょう。
新作くんにはこの数ヶ月間、戦後の賭博場で腕を鳴らしてきた元・玄人(ばいにん)のおじいちゃんたちが、つきっきりでギャンブルの英才教育を施してきました。
正直、新作くんがラスベガスでぼろ儲けして帰ってくることができなければ、財政難の我が村はお終いです。
村民の皆さん、新作くんの大勝利を願って、三分間の万歳三唱を捧げましょう!
ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい!!
(以下、三分間これが続く)
……はぁはぁ。きっと、我々村民の声は、海を越えて新作くんの心に届いているはずです。
万が一、新作くんが勝つことができなかった場合は、寄合の公正なる審議(じゃんけん)によって選出された、新作くんのお父さんである瀬戸内駄作(せとうちださく)さんが、黒いスーツを着てその道を極めた方々に内臓を提供する手はずになっています。
しかし、これはあくまで最終手段!
新作くん、頑張れ! お父さんも(泣きながら)キミの勝利を祈っているぞ!
以上、九官鳥村役場、広報課からのお知らせでした。
(※この村内放送は、フィクションです)