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消して尚も残るもの

消したと思っていた小説が残っていた。
ちょっとびっくりしながらも、その話を読む。消したと思っていたのは私の記憶違いなのか、それともWordは消していたのでこちらも消したと思っていたのかは分からない。

小説を読みながらついつい読み耽る。自分の文章なのに、或いは自分の文章だからか、たまに読み返しながらついつい読み込んでしまう。

消したはずの小説は決して愉快な話ではない。
これは私が戦争を調べながら、多分、私の中での赦しという言葉を見つめようとした小説だ。

戦争の本はどれも淡々としている。そこには深く書かれることのない戦争によって被害を受けた人の言葉がある。たった二文字。それでも忘れることの出来ない言葉を前にして、戦争の惨さに目を閉じる。

読み終えた時、自分の小説なのに手が震えていた。
自分が書きながら、読者のように読んで震えていた。
だけど、最後には自分なりの、ある種の救いは書けたのだと思う。

赦すか赦さないかは、当人が決めることだ。
赦さなくていいこともあるんだよ。
小説の最後の老いた女性の微笑みを前に、私はしばらくこの作品を残そうと思ったのだった。

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