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  • 現代ファンタジー

★【レガシオン】外伝02話「野原花糸」



 ――SIDE:野原花糸――


 暗ぁい、暗い。

 真っ黒な視界の中で、私は一筋の光を見た。

 それは蒼い閃光だった。

 闇夜を斬り裂く、真っ青な空の蒼。

 "あの人"の色。


『良かった――』


 私は思わず安堵した。
 これで漸く、終わる事が出来る。

 "未来"を託せる――

 託した相手が"あの人"なら、私はもう安心だ。
 呉羽さん、赤城君、皆――

 私、頑張ったよ?
 泣かなかったよ?

 これから先、きっと"あの人"は苦しむだろう。現実が厳しくて立ち止まる事だってあると思う。

 けれど大丈夫。
 あの人ならきっと、成し遂げる。

 一人でも、戦える――

 心配事があるとすれば、それは……呉羽さんのこと。赤城君を抜いて――"塔"の中には七つの気配を感じていた。けれど、彼女の魂は何処にもない。

 "カレ"が連れ攫った?

 でも、何で彼女だけを――

 ……分からない。

 分からないから、それだけが不安。

 私が言える事じゃ無いけれど、

 気を付けてね。

 ソーマさん――





「えぇー!? 惚れたァァッ!?」

「……ちょっと、美登里。アンタ声がデカいよ? 周りの客にも迷惑」


 都内某所。

 喫茶店の一角で、私達は『黄泉比良坂』の女子会を行なっていました。言い出したのは、屋代美登里さん。何でも春のボーナスが出たとかで、私達にお洒落なアフタヌーンティーを御馳走すると言ってくれたのです。「日がな一日ゲームばかりしているアンタ達に、私が女子らしい一時をプレゼントしてやるわ!」……と。言ったのは、屋代さんの言葉です。実際、地味な私では気後れしちゃって、こんなお洒落なお店には入れなかったかも知れませんね?

 メンバーは5人。

 某有名大学出身の鶺鴒呉羽さん。ジャズバーの店員をしているという漆原刹那さん。大手IT企業に勤める屋代美登里さん。出身は謎ですが、兎に角可愛いペトラ=アンネンバーグちゃん。

 そして、都内の一般的な女子大に通う私。

 何もかもがバラバラな私達が『レガシオン・センス』というゲームを通じて、こうしてお茶を飲んでいるのですから、不思議です。

 現在の話題は呉羽さんの爆弾発言についてですね? 隣で聞いてて、私も思わず驚いてしまいました。眉目秀麗。才色兼備な呉羽さんが、まさかゲームの中で出会った人に恋をするだなんて……!!


「だって呉羽だよっ!? 黙ってりゃ優良物件が選び放題! 玉の輿放題な呉羽が、よりにもよってあの"亡霊"に惚れるだなんて……!?」

「……うぅ」


 美登里さんの言葉に、耳まで真っ赤にして俯く呉羽さん。こう言った所も可愛らしいんですよね? きっと、本気でその人が好きなんだと思います。


「へぇ? マジなんだ……? 私はてっきり、呉羽は御剣とくっ付くんだと思ってたよ……」


 紅茶を飲みながら、刹那さんが呟きます。
 相変わらず冷静で格好良い。


「それな!? 赤城とは有り得ないとは思ってたけど、御剣と呉羽は私も"有る"と思ってたのよね!? いやぁ、当てが外れたわッ!!」

「ソーマは、格好良いよ?」

「そっか、ペトラちゃんは何度かリアルの彼と会った事があるんだもんね?」

「幼女とばかり遭遇する謎の亡霊男……ワンチャン、ただのロリペド野郎かと思ってたんだけど、まさか呉羽がねぇ……?」

「――で? どういう所が気に入ったの?」

「前に助けられたからとか、そういう理由!?」

「えぇっと……それは……」


 二人に迫られて、困惑する呉羽さん。
 助け舟を出した方が良いのかなぁ?

 でも、私も気になります!

 躊躇った呉羽さんは、手元の紅茶をぐいっと飲むと、カップをソーサーに勢いよく置きました。

 まるでお酒の一気飲み。

 アレで勢いを付けたのか、呉羽さんは迫る二人を見詰めながら、伏し目がちに口を開きます。


「ぜ、全部――……」

『……』


 思わず、沈黙する私達。
 想像以上に、ベタ惚れです。

 この答えは、予想外――


「……あーしくった。今の発言録音して、赤城の奴にでも聞かせてやれば良かったなー?」

「泣いちゃうから止めなさい。彼、可哀想よ?」

「え、えーと、その、だから……!」

「はいはい、御馳走様ー。ケーキの食べ過ぎかしらねー? お姉さん胸焼けして来ちゃったわー?」

「……若いって良いわね?」



 お姉さん組から揶揄われる呉羽さん。

 ペトラちゃんは眠っていました。

 良いなぁ……私も、あんな風に誰かを好きって言えたなら良かったのに。思い浮かんだのは、御剣さんの姿だ。何の取り柄も無い私を『黄泉比良坂』へと誘ってくれた人……私みたいな地味な女じゃ、きっと彼には釣り合わないよね……?

 軽い片想いは、夢に消える。

 それに、御剣さんは呉羽さんの事が好きなんだと思う。……何となくだけど、私はそう感じました。

 この恋は実らない。

 だけど――良いんです。

 私は皆が好き。
 黄泉に居る皆が大好きだから。

 それだけで充分でした。

 こんな毎日が――


「ずっとずっと、続けば良いのに……」

1件のコメント

  • 前世の因縁に決着を着けるんやな( ̄□ ̄;)!!

    外伝エモいんじゃ( ;∀;)

    本編がより楽しみになりました(`ω´)ガンバってくださいソーマさん(翔真くん)(っ`・ω・´)っ
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