📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」
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https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346📖「第560話 こんにちは。ごきげんよう――。」
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https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346/episodes/16818093079832232043+++++
📄翌日、ステファノは休みをもらった。旅の疲れをいやすためではない。|呪《まじ》タウンに「飛ぶ」ためだった。
ドリー受け入れのストーリーができ上がったので、それを早速本人に告げようというのだ。
アカデミーを出る際、ドリーには|魔耳話器《まじわき》を渡していなかった。手紙を送っても良いのだが、それでは日にちがかかる。自分で行った方が早いと、ステファノは判断したのだ。
直接会えば、ドリーに|魔耳話器《まじわき》を渡せる。今後の連絡が楽になるはずだ。
朝日が昇るよりも早く、ステファノはウニベルシタスの中庭に出た。夏の季節とはいえ、日の出前の空気はひんやりと引き締まっている。
清新な空気を鼻から吸い込み、ステファノは|陽炎《かげろう》の術を使った。未明の薄明かりに浮かんでいたステファノの姿がぼやけ、朝もやに溶け込む。
(――天狗高跳び)
|飄《ひょう》と風を切って見えない塊が、天空に飛び出した。
◆◆◆
馬車で丸2日かかる行程をステファノは半日で飛んだ。街中に降りるのははばかられたので、手前の木立に降りてわざわざ歩いて|呪《まじ》タウンに入る。
手に馴染んだヘルメスの杖を置いて来たので、今日のステファノはどこにでもいる平民姿だ。
普通の身なりをしたステファノは、人ごみに溶け込んでまったく目立たない。
ついでとばかり目についた雑貨店で買い物をしつつ、ステファノは王立アカデミーへと向かって歩いた。
(さて、どうしようかな)
アカデミーは関係者以外立ち入り禁止だ。春に卒業したステファノは既に関係者とは言えなかった。
(卒業生ですと言っても、簡単には入れてくれないだろうなあ)
用事があると言ってドリーを呼び出してもらうのは、どうにも大仰な気がした。ちょっと|物《・》を渡すだけで、5分で済む用事なのだ。……
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お楽しみください。