📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」
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https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346+++++
📖「第557話 ヨシズミ師匠に魔法を学びたいと言う人がいます。」
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📄「ふん。世の中とうまくやれているとは言えないからな。臆病にもなるさ」
ドイル自身、己の欠点を重々理解していた。アカデミーを追放されて以来、何年も世捨て人の暮らしをしていたのだ。人と交わることが得意なわけがない。
ドイルの高飛車で独善的な物言いは、人間関係で傷つくことから身を守る「鎧」でもあった。
「僕に言わせれば、誰とでもつき合う人間の方がどうかしている。一歩表に出れば、馬鹿と泥棒だらけだというのにね」
「お前が馬鹿と呼んでいるのは普通の人間のことなのだがな。まあそれは良い。あんまり騎士をコケにして、命を狙われたりせぬようにな。冗談では済まされないぞ」
「心得ているさ。議論でかなわないとなるとすぐ剣を抜きたがるのが騎士という連中だからな」
「議論ができるなら上出来だ。お前の言う『疑う心』が芽生えたということだからな」
ドイルにすればそれほど単純ではない。|既存秩序《ステイタス・クォー》を鵜吞みにし、支配階級の価値観を闇雲に墨守する人間は多い。
信念があっても批判精神を持たない輩とは、議論をしているように見えても異なる言語で会話しているのと同じことだ。
「入学させるのはなるべく若い人間が良いな」
世間の「常識」に染まり切る前の柔軟な頭脳を、ドイルは求めた。
「良いのではないかな。王立アカデミーが18歳未満の条件なら、こちらは16歳未満までとするか」
ドイルの発案にネルソンが同意した。
それを聞いていたステファノの顔がわずかに曇ったのを、マルチェルは見逃さなかった。
「ステファノ、どうかしましたか? 考えがあるなら言ってみなさい」
「年齢制限があると、アランさんやネロさんが入学できないと思って……」
2人はジュリアーノ王子暗殺未遂事件の際、ステファノと親しくしていた王立騎士団員だ。1年前のあの時、彼らは22歳だとステファノに語っていた。……
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お楽しみください。