📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」
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https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346📖第544話 道は1つではないんだねえ。
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https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346/episodes/16818093077499622161+++++
📄「驚いた。僕は専門家じゃないが、なかなかの腕前に見えるよ。修行を始めて1年だって? 大したもんだ」
掛け値なしでジェラートは言った。武術を学んでいると言っても1年未満だと聞いた。まねごと程度の腕前だろうと、ステファノの武術を侮っていたのだ。
「僕に武術の深奥はわからないが、仕事柄筋肉の使い方には敏感なんだ。弛緩から緊張へ一瞬で切り替わる、君の動きには一流の切れ味があるね」
「|そこ《・・》ですか。俺の場合は武術の実力よりも、イドの制御から来るものですね」
感心するジェラートにステファノはイドとは何であるかを説明した。
「武術家が気功と言っているものだね? それを濃くすると、そんな風に筋肉まで制御できるのか。そういうことだったんだね?」
ジェラートは今初めて気功というものを自分が知る筋肉制御と結びつけることができた。
「恐らくですけど、ふつうの武術家は肉体の制御からイドの制御に至るんじゃないでしょうか。俺の場合はその逆をたどっているわけです」
「ああ。そう言われると良くわかるよ。それなら僕も筋肉の制御をもっと極めれば、気功を操れるようになれるのかな」
のんびりとした口調だったが、ジェラートは興奮していた。「縛り屋」と馬鹿にされる自分の捕縄術にも、一流の武術に通じる「道」がある。
「道は1つではないんだねえ」
「ある人は『|一人一流《いちにんいちりゅう》』と言ったそうです」
「面白いね。君の師匠たちが始める『ウニベルシタス』というものも、色とりどりでさぞかし刺激的なんだろうね」
微笑みを浮かべてジェラートは言った。ステファノは笑顔の下にある一抹の悲しみを見逃さなかった。……
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お楽しみください。🙏😊