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エンジェルハートの高利貸


(取材メモ1)「ベビーカーを購入してもらって満足のピーナはフードコートで何かを飲もうと言う、3人はそれぞれドリンクを手にして席に着く ピーナはおもむろにスマホを取り出すとアボガドシェイクや娘には目もくれず傍若無人でスマホに集中している。オッサンは意に介さず 想定内の流れであった。オッサンは00さえ出来ればよかったのである、
とっさに娘は奇声を上げピーナのアボカドシェイクをフロアーに叩きつける!フードコート内に緊張が漂う中百戦錬磨のオッサンの心拍数は変わらなかった

(取材メモ2)商店街の裏のコーポの横に黒のクーペが停車している。
コーポからピーナが出てきて車に乗り込むとオッサンはスムーズに発進させる。
コーポはタレントの社宅でクーペのステアリングを握る初老のオッサンはこの日タレントとブランチのやくそくをしていた。約束を守るとは何と珍しいピーナであろうと感動しながら。
川の土手を法定速度で走行中のクーペはラブホテルに滑り込んで行く ステアリングを切ったオッサンは無言でパーキングに停止する、タレントはゆっくりと「バカな日本人、いつもこんな事やってんの!」と静かだがキリリとたしなめるような口調で問いかける、オッサンもゆっくりと口を開くと「どしたんな?わしゃあここでうどん食おうと思っただけじゃが」と冷静を装う。
それで会話は終わり2人は車を降りる。
(取材メモ3)
関西発lccエアアナルの機内最前列右側のエクストラレッグシートに両山が身を潜めていた、必ず意図的にこのシートを選択している 鹿児島湾上空で開門岳が見たいからだった、
175センチ65㎏体脂肪率は1桁の浅黒い51歳 眉間や顎には傷があり頭はマダラにハゲている 初めての盗みは4歳だった その両山の水晶体に開門岳が映っている昼下がりのフライト この日は薄曇りだが窓の外を眺めながら英霊に想いを馳せる、
何度この風景をみただろうか両山は痩せた横顔で回想に入っていった、
3年前、深夜、ある地方都市の繁華街 重度のアルコール依存症の両山は酒が飲める場所を探して歩いていた 日曜の深夜 人通りも無く開いている店も無かった 少し歩くとポツンとネオンが見えた、フィリピンパブだった Clubヘルプステージプラチナム、店のある地下へと降りていったフィリピン人生の入り口とも知らずあの時は階段を降りていた 自動ドアが開き笑顔の店長が出迎える客の無い店内ボックスに座りビールをオーダーした薄暗い店内 控え室から女が出て来てこっちに向かって来るロングブーツに短パン アナベル23歳ガパンcity出身だった フィリピンにまったく興味がなく酒をあおる時折アナベルが話しかけてくるが適当に返事して流していた、つづく!
(取材メモ4)
PM20:00、千葉市のオフィス街にある雑居ビルの3階。50m2ほどの殺風景な部屋のデスクで金を数えているのは両山だった。その日最後の仕事は,物流倉庫でフォークリフトオペレーターをしているオヤジへの融資2万円だった。その日の集計のため,銀行よろしく金を数え終え金庫に収めオフィスの外に出てロックする 同じフロアーに有る住居のダイニングルームに入って行く。コロナウィルス対策で世間は自粛モードだが、キッチンの前に立ち石鹸は使わず手を洗う。まな板をセットする。冷蔵庫から合挽き肉と卵を、棚からパン粉、ナツメグパウダーを取り出しボウルに入れて素早く混ぜる。今日はハンバーグを作るつもりだ。豚挽肉と牛挽肉は差し詰め男と女。パン粉は両者を合体させるマネーというところが。ん、ナツメグパウダーは何だ?ピーノは考えたが、いい例えは思いつかなかった。ピーノのイメージしたハンバーグは肉汁が溢れ出すものであったが、出来上がったハンバーグはバサバサで一滴の肉汁もなかった。ふっ、まるでわしとピーナとの関係のようじゃ。ババーグまでドライな関係にしかならん。
食器を洗い終えた両山はもらい物の薬用養命酒を取り出して年代物の備前焼の猪口に注いだ。養命酒は甘かった。重度のアル中で酒が飲めない両山は薄暗い部屋の中,養命酒をあたかも前戯のときのように舐めるように味わっていた。アルコールと甘みが五臓六腑にしみわたり。まるでシャブのようだ。
 「 ぴこん!」 家具のない部屋だからラインの間の抜けた着信音が部屋中に響く。ガスコンロの上に猪口を置きスマホを見る。 「i miss you💏」。ピンパブのタレント,21歳のヘルピーナからだった。両山はスマホを置き,再び養命酒を入れた猪口を手に取った。ヘルピーナが店に来て欲しいというサインだ。
 ピーナが送信してくる「i miss you💏」には,いくつかの意味が込められている。それはhello!であろうとhow are you?であろうと同じだ。i miss youは本来あなたに会えなくて寂しいという意味だが。ピーナイングリッシュでは必ずしもそうとは限らない。
まずは単なる営業活動である可能性が大きい。指名がないから早く来いとか、ノルマが達成できないから協力しろということだ。英語ができないピンパブ初心者のオヤジはこれを間に受けて魔界に落ちていく。
それは意味のない暇つぶしかもしれない。明日に備えた営業も兼ねているだろう。
さらには他のタレントに対する体面だ。自称プライドの高いピーナには。カモオヤジのアドレスをなるべく、多くゲットしようという闘争心がある。営業メールを送れるオヤジの数が多ければ多いほどプライドが満たされるということだ。
多く場合がこれらのミックス形態であり,それぞれの割合は,ピーナごとに,また,それぞれの客からのプレゼントの値段により。株価やアメーバ🦠のように日々刻々と変化する。客は自分の言動が性欲なのか愛なのか,はたまた他の客とのピーナ獲得競争のためなのか、タレントは,そのメッセージが欲望(マネー)のためなのか、暇つぶしのためなのかを気にすることもなく。本能の赴くまま行動する。
ピンパブ界の有識者と呼ばれる両山の調査によると,客がお気に入りのピーナの店に行くのは。週に一回2セット2時間というのが平均だ。それは。昼間にタレントを外に連れ出すという闇のシステムを発動した場合,その日の夜には,少なくとも2セット2時間は,ピーナのために店に行かなければならないということだ。それがピンパブ界という魔界の掟だ。ピーナには,週2回ほど買い物などのための外出が許可される日があり,その日にだけ会い,店には行かない客もいるが,それは掟破りというものだ。魔界の住人であるピーナはそのようなケチなオヤジを軽蔑する。両山は今週末ヘルピーナとカモ道楽で鴨鍋を食った後,2セット2時間だけヘルピーナの店に行く予定にしている。 つづく

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