三木露風作詞・山田耕筰作曲の「赤とんぼ」は、2007年に「日本の歌百選」に選ばれた日本を代表する童謡である。大正10年に雑誌「樫の木」で発表された当初は、題名が漢字の「赤蜻蛉」であり、歌詞の一部や構成も現在のものとは異なっていた。例えば、1番の「山の空」が後に「あかとんぼ」へと改められ、1番と2番の末尾が入れ替わるといった変更を経て、現在の形に定着した。
昭和2年に山田耕筰が作曲した際、そのメロディの一部がシューマンの楽曲に酷似しているとの指摘もあるが、昭和36年の映画挿入歌や昭和40年のNHK「みんなのうた」での採用を通じて、広く国民に親しまれるようになった。
歌詞の背景には、露風自身の孤独な幼少期がある。両親の離婚により祖父の元で育った露風は、北海道の修道院にいた32歳の頃、郷里の校歌作詞を依頼されたことをきっかけに過去を回想した。
歌詞の解釈には誤解も多い。1番の「負はれて」は追放ではなく「背負われて(おんぶ)」を意味し、3番の「姐や(ねえや)」は実の姉ではなく、彼を背負っていた子守の少女を指す。「十五で嫁に行き」というのも、姐やの年齢のことである。また、4番のみが現在形で、1番から3番が過去形であることから、この歌は「竿の先にとまった赤とんぼを見た大人の露風が、幼少期を追想した構成」といえる。夕暮れの中、消息の途絶えた姐やを想うノスタルジーが、この詩の核となっている。