「キミガタメ」の多層的な意味:
「君がため」——「あなたのために」という直接の意味
百人一首(光孝天皇)——「君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ」
百人一首(藤原義孝)——「君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな」
特に義孝の歌は「あなたのために、惜しくなかった命さえも、今は長くあってほしいと思う」——あなたと共に生きたいと願う恋の歌です。
昭和初期の教養ある若者なら、百人一首を諳んじていた。恋人はこの歌を知っていて、「キミガタメ」という一行を鏡の裏に刻んだ(あるいは書いた)——和歌の世界の、言葉にならない思いを、一行に凝縮したものです。
しかも、母の名前ではない。 贈り主は、母に「キミ(君)」と呼びかけている。母がどんな名前であろうと、恋人にとって母は「キミ」だった。