まず、三作品の作者様、ご参加ありがとうございました。
批評を書いた順にタイトル、ペンネーム、作品URLを掲載させて頂きます。
すみれ一人のレボリューション(ショートショート版) 保仁谷 裸羅様
作品URL
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888262355グリム・ロッジの妖精騎士 雪菜様
作品URL
https://kakuyomu.jp/works/1177354054886686296希望の街 鴉様
作品URL
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885342845まさか三作品とも優れたものが集まるとは予想しておらず、大変楽しく行うことができました。
しかも短編、中編、長編という図ったかのようなバランスのよさ。
ジャンルはコミカルな風刺もの、シリアスな現代ドラマ、王道ダークファンタジーが順番に、それぞれ対応します。
「グリム・ロッジ」のみが未完作で、他二つは完結済みです。
後ろ二作品は物事の暗い面を隠さずに描く部分で共通しています。
対して、前者の方もネガティブさはありますが、それを温かく包み込んで提示している印象。
やはり高いレベル物語はその起伏を作るために、窮地や困難、後ろ向きの感情をうまく起点にするものなのだなと思いました。
それから実は、文体は三者ともに少なからず似ていました。
全て三人称を用い、シンプルに事実を伝えるという方向性において。
しかしもちろん、三様の個性も大きくあります。
「すみれの~~」においては皮肉やユーモアを交えながら。
「グリム・ロッジ」は場面転換や伏線配置を多用して。
「希望の街」は荒々しく混沌とさせつつ。
作者様によってこれだけの幅があると知れただけでも、やった価値があるというものです。
また、三作品とも重みのある真剣な作品であったことも記しておきます。
私は、カクヨムには転生ものやラブコメが多いはずだからと予想していました。
しかし蓋を開けてみればライトなものは一切なく、純文学的とも言える作品達が集結。
もちろんライトな作品も大好きですが、批評し甲斐でいうと間違いなくヘビーな方が勝ります。
考察や検証の入り込む余地が大きいですからね。
さて、ここまでは三つの作品を合わせての批評をしてまいりました。
転じて、ここから先は私の批評を批評する、いわばメタ批評を行います。
まず読み返して感じたのが、全て似たような構成になっていること。
整然と三段論法的に展開されていますが、読み物として見た時それはどうなのか。
批評とは比較芸術の一種、すなわちれっきとした文芸作品の一種です。
視点の鋭さや洞察の深さも求められますが、それが全てではない。
もっと彩り豊かに、緩急をつけて、作品の雰囲気を踏襲した批評を書くのが現在の目標と言えるでしょう。
良くできた点は、やりすぎない範囲で主観性を持たせられたこと。
私は完全に客観的な批評を書こうとすることは傲慢なのではないか、と考える批評家の一人です。
初めからもたらせやしない一般性を求めるのではなく、個人的な読書体験としての感想を元に、それに至った理由を冷静に紐解く。
さながら謎を巡るミステリー小説のように、私は書きながら私自身の感情の所以を探します。
なので始点は主観的かつ感覚的に、理論は客観的かつ理性的に組み上げているつもりです。
一番気を使ったのは、干渉すべきではない事を見分けること。
どこまでが作者様の個性であり、どこまでが自分の苦手分野なのかを試行錯誤し、立ち入るべきではないと思った要素には触れませんでした。
これはカクヨムにおいて、作品と批評がとても近いために起こるリスクです。
今までゲーム、文学、音楽、映像等々の商業作品に対し批評を行ってきましたが、それらは作者にまで届かない前提で無責任に論じられてきました。
しかし今回は作者様の目に入り、未完作品であればその後の展開にすら影響を与えかねない……。
これは責任重大です。
作り手に伝わる批評、というのがこれほど緊張感を生むとは想像だにしていませんでした。
ですが委縮して当たり障りのない指摘に留まれば、今度は参加していただいた意義が怪しくなる。
そのため、作品の一番の個性は絶対に肯定することに決めました。
核の部分、と言い換えてもいいです。
幸い今回の作品群は全て秀逸な核を持っていたのでもとより、批判されるべくもなかったのですが、
核を意識することにより作品の構造の全貌が見え始めてきたことは嬉しい誤算でした。
批評しやすくなりましたし、今後の自分の創作全般に活かせそうな哲学を手に入れることができました。
まさに批評をしていて一番うれしい瞬間です。
全ては参加して頂いた方々のおかげ。
批評への反応が即座に帰ってきたのも最高にエキサイティングでした。
今一度、多大なるご協力に感謝します。
これからも批評企画は続けていく予定です。
次回どんな作品に巡り合えるのか、もうすでに楽しみでなりません。