この度、「マジカルルート000」を何とか最後まで書き切ることができました。
中、長編作品を完結させたのは、カクヨムでは初めてです。
それにしてはよく書けたなと思います。
まず、本作品は亜未田さん(@abky-6102)という方が原案です。
彼が開催している自主企画、「この作品の続きを書いてみませんか?」の欄をたまたま発見したことが、筆を執るきっかけでした。
元々ファンタジーには全く縁がなく書いたことはおろか、同ジャンルの作品は小学校時代まで遡ってようやく思い当たるくらいのもの。
少年が村を出てドラゴンを倒しに行くようなテンションのやつだけ。
ではなぜ取り掛かるに至ったのかと言えば……現実逃避です。
ファンタジーってのはそのためにある、と言っても過言ではないですから。
書こうとしていた恋愛物が遅々として進まず、気分転換に飛びつきました。
やる前は当然、苦手意識がありました。
特に情景描写や、人物造形。
ファンタジーってもちろん現実じゃない想像上の世界ですから、そういう土台の部分をしっかり描写しないと、空転してしまう。
かといって説明口調の地の文でウダウダやってるとファンタジーの爽快感がなくなる。
ややこしい現実から目を背けて空想に浸りたいから読んでるのに、かえってストレスフルじゃないか……となってしまうわけですね。
この辺の味付けはどうしたものかと悩んだ結果……最後には諦めました。
悩んだところで技量が伸びるわけでもなし、勢いでとにかく書き始めてみる。
細かい部分はとりあえず投げ置いて。
すると想像していたよりかはすらすら出てくるもの。
結果として大満足、とはいかないけれどそこそこの二話が産み出されてました。
今から振り返れば、この二話こそが一番私の予定に近いものになっていて、
三話以降は良くも悪くも私のクセや味みたいなものが強い。
それが何か、簡潔に言うなれば人間ドラマ。
内面の葛藤やすれ違いをガッツリ書いてるんですが、完全に私の趣味です。
本当は二話みたいに、もっと言えば原典たる一話のように、あっさりした日常的ファンタジー世界を描きたかった。
ゆるやかに、穏やかに成長していく温かい物語を紡ぎたかった。
しかし気付けば、大げさなくらいのドラマ性が隠しきれなくなってました。
なんか三話とか、昼ドラみたいな雰囲気すらありますよね。
あと全編通して、ファンタジーなのにあまりキャラが動かない。特に六話。
主人公が街を散歩しながら考え事してただけ。
いや、本当はそんな狭い話ではないつもりなのですが……。
一番気に入っているのは四話です。
ストーリーラインをしっかり据えて、その上にうまく乗っけていけたかなと。
私自身夕暮れも大好きで、寂しげな雰囲気に没頭しながら書けました。
本作のテーマの話をします。
大きな柱はもちろん「成長」。
その周りに「家族」「種族を超えた愛」「自由意志と選択」などなど。
ただ最も描きたかったのは、「現実への回帰」です。
それって結局、ある種の自己否定を内在しているんですが、そんなファンタジー作品があってもいいんじゃないかと。
しかし、単に空想や夢の世界を否定したかったわけではないです。
私はアリッサに、現実を諦めてほしくなかった。
現実を空想や夢みたいな理想に、近づけてほしかったんです。
幻想や夢は美しいものですが、いつかは覚めるもの。
絶対に、現実に戻らなくてはならない日が来る。
という命題を私が信じていることが、この物語の始点です。
その夢が覚めた時、夢の中で得たものに強く焦がれ、現実の方を変えてしまう。
そういう前向きな話を、書いてみたかったんです。
次に、書いてみて初めて気づいたファンタジーの利点を挙げます。
ファンタジーは現実を舞台にするとシリアスになりすぎるテーマを、オブラートに包んでくれますね。
人種や家族なんかのことです。
残酷さやえぐみをうまく中和してくれて、大事なところだけを伝えられるポテンシャルを感じました。
もっとも、私がそれを活かせたかは別として。
あと、懐の広さにも限りがないですよね。
やろうと思えば大戦争も起こせるし、神と戦うことだってできる。
私はあえてか図らずか、ファンタジー世界でごく現実的な話を展開しましたが、それもまた一興。
予想を裏切ることの意外性やギャップで見せる余地がありそうです。
最後に、亜未田さんに多大なる感謝を伝えたいと思います。
一話アップする度に押してくれたハートマーク、めちゃくちゃ心強かったです。
あなたが描いていた青写真にどのくらい近づけられたかはわからないけれど、
私は凄く楽しんで書けました。
今回の事を通して、共創という言葉の意味を始めて体感できた気がします。
誰かのアイデアを育て上げるという行為は、とても新鮮でした。
言い訳日記読んでます。読むなと釘を刺されてはいますが。
ファーストコンタクト、今から読みます。楽しみです。
亜未田さんならいつか必ず、『本当に書きたい物語』見つけられると思います。
これからもお互い励みましょう。