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「着物のおばあさん」まえがきのようなあとがきのような

 物騙る楽しみを知ったのは、小学生の時だ。
 学校が終わると数人の友達と連れだって一緒に帰る。そのメンバーの中にYちゃんという子がいた。

「ねえ、怖い話、して?」

 Yちゃんはいつも私に怖い話をせがんだ。
 目をキラキラさせながら怖がるYちゃんの様子が面白くて、私はできるだけ怖そうな話を選んで語った。

「ねえ、怖い話、して?」

 当然ながら、レパートリーは尽きる。もう私が知っている「怖い話」はすべて話してしまったのに、それでもYちゃんは期待に目をきらめかせて話をせがんでくる。
 Yちゃんの期待にどうしても応えたかった私は、即興で「怖い話」を騙った。Yちゃんの反応を見ながら「怖い話」を創作したのだ。
 Yちゃんは、ちゃんと怖がって、満足してくれた。
 物騙る楽しみに触れた瞬間だった。

 あの頃の私は知らなかった。
 自分のまわりに、作り話ではない怪異が本当に在ることを。

  ***

「着物のおばあさん」を投稿しました。
 実体験をもとに書いています。
 寝苦しい夜の退屈しのぎにでも、どうぞ。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883785914

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