「長い冬の話」
少女が見上げた空は闇だった
男が見上げた空も闇だった
少年が見上げた空は青かった
少女の隣にいるのは闇で
男が追いかけているものも闇で
つまりは少年が闇だ
闇のそばには光があって
だから少女は光で
男も光で
なんにもしてくれない空も明るかったのだ
思い出に積もる雪が
溶け残って氷になったのは短すぎる夏のしくじりで
転ぶ覚悟のない者は立ち入り禁止の氷雪道ができた
少年は行く
汚れなき罪を背負って
男は辿る
篤き信条を胸に宿して
少女は進む
折れぬ心を灯りにして
道が埋もれる前に
涙が凍りつく前に
* * *
「スノーウィ・ハンド」に添える詩です。
この詩を単独で投稿するのは気が引けたので、こちらに載せます。
あらすじがこの詩に凝縮しています。
時代は19世紀、産業革命の波が押し寄せる北欧の、架空の国でのお話です。
架空の国って何だ、と気になった人に打ち明けます。パラレルワールドのノルウェーです。
なぜ実際のノルウェーではないかというと、当時のノルウェーについて調べきれないところがあったからです。想像で埋めている部分が多いし、たぶん実際とは違うんだろうという設定も含めてしまっています。それなのに「ノルウェーが舞台です」と言うわけにはいかないなあ、と。
パラレルワールド云々という設定(?)は物語に一切関係ないため、作中では触れません。
ということでSFではないし、現代ファンタジーでもないし、剣も魔法も出てこないし、かといって歴史ものでもない……恋愛、のお話でもないし。
ふさわしいジャンルが何かわからず、消去法でミステリージャンルを選びました。
週に1回のペースで更新していきます。
お時間がある方は、どうぞ彼らの旅路におつきあいください。