長編の準備に没頭するだけで今年が終わるだなんて思いもしなかった。
手間取ってるんです……でも楽しんでます。
とはいえ、このまま一年が終わるのはいやなので、引き出しにしまっていた過去作を含め、息抜きに書いた短編を公開しました。
ザッと紹介します。
「ドブの幽霊」
ホラーというか幻想というか、心象風景。
書く直前まで言葉はなにも浮かんでいなくて、amazarashiの「匿名希望」だけが響いていた。ふと指を動かしたら言葉が溢れてきた。そんなふうに書いたものです。
8年前の作品ですが、明らかなミス以外は特に修正せずに載せました。
「醜い王子」
先月に書いたものです。
主人公を取り巻く状況についてはいろいろ省略していますが、これでちょうどいいかと。
川端康成の『掌の小説』のなかの「写真」を耳で読んだときに浮かんだお話です。「彼はこの醜さゆえに」の部分が頭に残ったわけです。
耳で読むってどういうこっちゃ、と思った人!
AmazonのAudibleです。運転中とか掃除中とかに聴いてます。
「荷物持つ手」
これは以前、記事を読みまして。
「小学四年生の女の子が、父親の暴力で妹が死ぬんじゃないかと危機感を抱き、突発的に弟と妹を連れて、離婚した母親の住む家まで電車を乗り継いだ」
という実話でした。この記事と、私の友人の話とを参考にして作ったお話です。
16年前に書きあげた作品でして。
昔に書いたものって、内容を忘れているものもあるのですが、これはしっかり頭に残っていました。ということは人に見せる価値もあるのではないか、と思ったのです。思ったのです、が。
当時の原稿を読み返したところ、あまりにも下手くそな文章に思わず天を仰ぎました。そのままでは読むに堪えないため、修正しています。
「こえてゆけ」
これも書いたのは16年前。思い入れがある作品ですが、やっぱり下手くそな出来だったので修正してから載せてます。
新しい世界に飛びこむときの、「行きたいけど怖い、怖いけど行きたい」という心理がメインで、そのために用意した世界です。
当時これを執筆する際に影響を受けた作品があります。
開高健の『流亡記』という短編。万里の長城を建設するために駆り出された主人公が、城壁の外側にいる匈奴(遊牧民)に惹かれていく経緯を書いたもの。
最後の一文は真似してます。というよりこのラスト一文を真似したいがために書いたようなものです。「壁」と「荒れ地」(=砂漠)といった設定も、「~ていく」ではなく「~てゆく」という表現になっているのも、影響受けまくりです。
そういえば、『流亡記』がきっかけで匈奴に興味を持ち、調べまくって長編を一本書いています。でもあれは、お蔵入りです……。
「ノケモノ」
今月に書いたものです。
子供のころ我が家には猫が何匹もいましたが、だいたいはある日ふらっと姿を消して戻りませんでした。そのうちの一匹だけは、車道で血を流して死んでいるのを見つけることができました。父が運転する車で出かけようとしていたときのことです。
あれはうちの猫だと真っ先に気づいたのは、助手席の母でした。車を止めた父が急いで猫を抱き上げるのを、私はなにも言えないまま見つめていました。
そんなことを思い出しつつ。
じつは上記四つの短編では登場人物に名前がないんです。
それを踏襲しようかとも思ったのですが、この作品では不自然だな、と。でも猫の名前は出せないまま終わりました。
以上です。
今年の更新はもうありませんが、来年からスローペースで5話ずつ更新していきます。
レビューも書きたい。書きたいんだけど、カクヨムではないところでの読書が増えてて……
体がふたつあればいいのになあ……