読者は戦闘シーンが好きなわけではなく、求めてもいないんじゃないか?
そんな意見をSNSで見かけた。
それに対し色々な意見、感想も寄せられていた。
ぶっちゃけ「読者」はクソデカ主語なので人によるとも言える。
しかし「人それぞれ」は前提であって結論ではないので、もっとよく考えてみた。
そもそも「面白い」とはどういう感覚なのか?
大雑把に分類してみる。
「冒険的面白さ」と「安住的面白さ」だ。
冒険的面白さは新しい物や意外性に対して感じる面白さ。独創的な世界観や、興味深いキャラクターなどに感じるドキドキワクワクする感覚だ。摂取カロリーの高い面白さ。
安住的面白さは、見知ったものや予測可能な安心感に基づく面白さ。共通概念やミーム、期待通りの展開や記号的要素などに感じる「こういうのでいいんだよこういうので」という感覚。カロリーの低い面白さ。
両者は緊張と緩和でもあり、安全なセーブポイントから少しずつ未知の世界を探索していくように相互補完の関係でもある。
小説ではどうか?
流行りのジャンル「異世界モノ」「チート」「追放」「無双」などは、基本的に安住的面白さである。というかジャンルとかタグという機能自体が安住的面白さを提供するための補助機能だろう。
異世界チートを読む読者は、強い主人公が敵や苦難を鮮やかに打開するさまを見て安心したいのだ。そこにちょっぴり、斬新な設定や能力などがあれば冒険的面白さは満たせる。
偏見に満ちた分析だけど、完全に的外れってわけでもないと思う。
というか、安心感のある面白さって「王道」と名付けられた普遍的なものだし。時代劇がひたすら同じフォーマットなのに面白いのと同じ。みんな上様が灯籠の影から出てきたら「キター!待ってました!」ってなるでしょ?
で、安心感の礎になるものが「らしさ」。
作者が提示して、読者が脳内に構築した「らしさ」に沿ってたら安心できるし、飲み込みやすい。
それは世界観も雰囲気もキャラクターも全部そう。「らしさ」をうまく再現して「らしく」アニメや実写にすればファンも納得できる。らしくなければそっぽ向かれる。
で、戦闘シーン。
ただ戦闘の描写を淡々と書き連ねても、面白くはない。戦ってるキャラの思惑や意図が伝わり、かつそれが「らしい」ものになってないといけない。
だから地の文やモノローグで戦闘シーンの実況と解説が必要になってくる。なぜそのキャラはその時その技を使ったのか、あるいは使わなかったのかを読者に伝えて「なるほどコイツらしい」と納得してもらわなければならないからだ。
そういう意味では、殺し合いも試合も競技も討論も、なんなら会話や一人で料理して食べるシーンも「らしさ」が出てれば面白いのは一緒!
それは言い過ぎか……
まとめる。
読者が求めてるのは意外性に基づく冒険的面白さと、安心感のある「らしい」安住的面白さ。
その二つをちょうどよく配分すれば、どういうシーンも面白くはなる。
戦闘シーンも「らしさ」が分かる適切な実況と解説がなされていれば問題無い。
自分で執筆するときも、読者が安心しつつ、ちょっと冒険心を刺激されるような作品を書きたいと思いました、まる。