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分配交換の儀式

熟した果実のような太陽が西の空に沈んでいく。砂漠は一面燃えるように赤く染まり、その中に黒い点が七つ見える。やがてその点は徐々に大きな人影に変わり、黒装束に身を包む七人がラクダに向かって進んでくるのがわかる。彼らはセーカに向かっていた。
 セーカでは、地上の砂漠でまもなく分配交換の儀式が始まろうとしていた。

 砂漠の熱砂が立ち込める中、奇岩群が魔物のようにうごめくように見え、儀式の場が異境であるかのような錯覚を起こさせる。その奇岩群の中、東の砂漠に面して石積みの祭壇が設けられている。祭壇の石積みは、古代の巨人が積み上げたかのような荘厳さを誇り、かがり火が勢いよく燃えて天まで届きそうな熱気を放っていた。日没が迫る砂漠の広大な空に滲む赤やオレンジの陰影に火の粉が散り、星のように瞬く美しさの中、夜が神秘的に訪れようとしている。

 祭壇の周りには老主を筆頭とするプレーナ教徒の長老たちが厳粛な面持ちで立ち並んでいる。彼らは日没で急速に気温が下がる中、冷えていく体に震えながらもじっとりとした緊張の汗を額ににじませていた。彼らの下で働く罪深き信仰者たちは、厳かな表情で儀式を執り行う準備をしている。セーカでは貴重な地上の穀物や色とりどりの織物、牛や羊などの家畜が捧げものとして祭壇に積み上げられ、中央の銀の器には夕日が反射している。

 やがて訪れるヴェルダの御使いが銀の器に水を満たすと、満月の光が水面で玲瓏と輝く。老主はその前でプレーナへの感謝の祈りを捧げる。黒装束の民たちは、祭壇の脇に横並びに立った穀物などの食糧を積んだらくだを従え、厳粛な表情で儀式を見守る。老主の両脇には空になった二つの大きな素焼きの水瓶が置かれる。その二つの水瓶に黒装束の民たちが運んできた水を移す。

 これが分配交換の儀式だ。

 以前は、プレーナへの捧げものとされた乙女たちが感謝の舞と祈りの歌を捧げたが、今は老主に選ばれたプレーナ教徒の娘たちが列を成し、高く澄んだ音を響かせる石琴の音に合わせて祈りの動作を繰り返す中で儀式が執り行われる。彼女たちは、厳粛な雰囲気を一層引き立てるように、プレーナ教徒としては似つかわしくない肌を顕にした服に刺繍をほどこしたヴェールをまとう。彼女たちの姿は、砂漠に咲いた花のように美しく、儀式の厳かさと壮大さを一層引き立てている。

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