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物語が始まらない『ゾンビ2 ~ 対ゾンビ砲 ~』

パスパスパスパス

 軽快な音と共に、赤い布がひらめく。
 どういう仕組みなのか。10㎝ほどの短い矢がゾンビ群へ向けて軽快に放たれる。括り付けられた赤い旗が薔薇の花びらのように眼下を舞っている。

パスパスパスパス

 矢はゾンビの頭や腕、胸など手当たり次第刺さり続ける。
 複数の旗をつけ、固まっているゾンビも見える。

パスパスパスパス

「見たかゾンビ共!!これが技術力だ!!」

 隣で中指を立ているのはトーテム。対ゾンビ砲を開発した、優秀な技術者だ。
 ゾンビを識別し旗付きの矢と弾丸をお見舞いする対ゾンビ砲は、本部への報告は識別時に完了しているという完全自動型ゾンビ撃退マシーンだ。

 眼下で次々と崩れ落ちるゾンビに、ずんだの口からも感嘆の声が漏れた。

「どぉだぁ?ずんだぁ。凄かろぅ?まぁすべてを消せるわけではないが。それでも視界が綺麗になったと思わんか?ん?」

「ええ。相変わらずすごい技術力ですね。」

 ぼんやりと眼下を眺めながら、ずんだは相槌を打った。
 完全無差別かと思っていたが、ゾンビの隙間を走るガゼルが撃たれていないところを見ると、しっかり識別されているのだろう。

「なんだ?なんだ?えぇ?貴様も使いたくなったか?」

「え、いや俺は・・・・・・」

 しまった、とずんだは跳ね起きる。トーテムの話は長いのだ。

「まぁ、見てみろよぉ。」

 がっしりと肩を組まれ、視界が端末に覆われる。

「いいかぁ?最初にここを選んでだな・・・・・・ん?なんだぁ?」

 赤い「Block!!」の文字が浮かんだと思うと、あっという間画面いっぱいに広がった。

「なんだ?なんだ?なんだぁ!?」

 画面は赤色に染まり、トーテムの操作にも反応していない。

 ぼすんっ!

 振り返ると、対ゾンビ砲が矢を抱えたまま、その機能を停止していた。

「本部めえええええ!!!止めやがったなあああああ!!!!」

 黒い空にトーテムの叫び声が空しく散っていった。


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