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物語が始まらない『STOP症候群』

「STOP」この4文字を認識している間、僕は動けなくなる。
 ただ立ち止まってしまうだけじゃない。指の1本どころかまつ毛1本も動かせなくなる。目は乾くし声も出せない。道行く人が不審そうに見つめてくる置物と化す。

 解除する方法は、単純で難しい。STOPの文字から目を放す。それだけだ。
 さて、親切な人が近くにいると解決はとてもスムーズだ。なぜなら親切な人は皆目を見て話そうとしてくれるからだ。僕の症状を知らない人でも、目を覗き込むように僕の前に立つことがほとんどだ。
 幸いなことに僕は身長がそれほど高くない。相手が子どもじゃない限りほとんどの確率で僕の視界は遮られる。つまり動くことができるようになる。

 さてさて、問題は僕が今一人でいることと、誰も通らなさそうな山道にいることだ。
 油断した。地面にわざわざこんな小さい文字でSTOPと書いてあるだなんて。僕専用の罠としか思えないな。

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