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くろてんゲーム化エッセイ21.世界包括神話ー5.メソポタミア編(2)

 どうもおはようございます、くろてんゲーム版、主人公および女性キャラフルボイスにすると少々軍資金が足らず、どうするか思案中の遠蛮です。ワード数を減らすか、ボイスをメイン4キャラのみに絞るか、最後の手段として融資に頼るという手がありますが、実のところ借金なのでこれはできる限り避けたいところ。使える金額が広がるという点においては、融資にも多少の魅力はあるのですが。

 さて、本日は世界包括神話-6.メソポタミア編の2回目ということで有名なギルガメシュ叙事詩。そこそこ長いお話だし、途中はしょりすぎてもお話として意味が通じなくなるので2回に分けての1回目、ギルガメシュとエンキドゥの冒険、そしてエンキドゥの死まで書きたいと思います。

ギルガメシュ叙事詩-1
 ギルガメシュはウルクの王です。父はルガルバンダ王、母は女神ニンスン。生涯については叙事詩において結構描かれてますが、生誕に関してはほとんど記述がないあたり特異といえば特異です。その身の内は三分の二が神、三分の一が人間で、神々に言祝がれて祝福された東方一の勇士でしたから彼と組み討ちで勝てる者も、槍を取って撃ち倒せるものもいませんでした。ただまあ、その強さを鼻にかけて驕慢になり、ウルクの暴君として君臨します。若者をこき使い、娘たちをわがものとしました。誰一人として、ギルガメシュにたてつくことはできませんでした。

 人々はやがて耐えられなくなり、天に救いを求めます。天帝は女神アルルに命じ、粘土から人を造らせます。アルルという女神はちょっと変な人だったのか、天帝から「人を造りなさい」と言われながら「怪物のような」獣毛に覆われた蓬髪のエンキドゥを造りだしました。このエンキドゥは野にはなたれ、獣たちの中で生活しますが、この時点でウルクの民は誰一人エンキドゥのことを知りません。しばらくして一人の狩人が「野獣めいた化け物」を発見、その翌日には罠のことごとくをひきちぎられ、さらに見ると獣たちを罠からら解放しているのを発見、これに恐ろしくなった狩人は父に相談し、父はギルガメシュに相談するがいいと教えます。

 こうして伝え聞いたギルガメシュは、臣民を脅かす存在を除くために行動を起こします。狩人に町娘の一人をつけて野獣の水飲み場に行かせました。

「エンキドゥが現れたら着物を脱いで誘惑させよ、ひとたび女を抱擁するところを見たならば、野獣たちはエンキドゥが仲間でないと知って彼を捨てるだろう」

 ギルガメシュのこの指示を狩人は忠実に守り、野獣が水を飲みに来るまで三日待ちます。三日目、エンキドゥがやってくると町娘は全裸になり、彼を誘惑しました。女というものを知らなかったエンキドゥはたちまち籠絡され、1週間、彼女と過ごし、その間に野獣たちは彼を離れます。それと気づいたエンキドゥが獣たちに追いすがろうとしても、それまでのような動きはできなくなっていました。彼はもはや獣ではなく、人になっていたのです。それも美しく立派な勇士へと変貌していました。

 町娘に諭され、ウルクの町に参りましょうと誘われたエンキドゥは「連れて行ってくれ」と応えます。

「ギルガメシュの大暴れはわたしがたちまち変えてやろう、わたしは彼に挑戦して、田舎の若者が弱虫でないところを証明して見せよう」

 そしてウルクに二人が帰り着いたのはちょうど大晦日の夜であり、祭りの最高潮でギルガメシュが女神との結婚式の花婿役を務めるため、神殿に導かれる途中でした。狂騒の中を割って進むギルガメシュ、その前にエンキドゥは立ちはだかり、挑むような叫び声を上げます。

「王もようやく、好敵手に巡り会われたらしい」

 人々は口々に言い交わしました。彼らに曰く、ギルガメシュと人になったエンキドゥは、エンキドゥの背がやや低いもののまったくうり二つであったということで、いかにも強そうに映ったということです。

 ギルガメシュはエンキドゥの勇姿にも雄叫びにも、みじんのたじろぎも見せませんでした。彼は夢占いによってこれからの未来を知っていました。ギルガメシュも彼には敵わないが、二人はやがて友になるだろうと。ギルガメシュの方から進み出て、二人はすぐさま組み討ちをはじめます。「二頭の雄牛のごとく」戦いあった結果ギルガメシュは組み伏せられ、ついに本当に、好敵手があらわれたことを知ります。

 いっぽうでエンキドゥは強さだけでなく、節義と優しさを兼ね備え、今や自分が組み伏せる相手は暴君ではなく心身すぐれた勇士であり、ひるむことなく自分の挑戦を受けた正々堂々のことであることを好ましく思い、ギルガメシュに「王よ、貴方は自ら女神の息子であり、天から玉座を与えられた人であることを証されました。わたしは二度と名貴方と戦うことはいたしますまい。さあ、友となりろうではありませんか」こうして二人は抱擁を交わし、以後無二の親友となったのでした。

 ギルガメシュはもとより大層な冒険好きで、危険な誘惑に抗いがたいひとでした。ある日彼は神の森にある杉の木を切り倒し、勇気を天下に示そうと思い立ちます。それが危険であり、また神々への不遜でもあることを知ってエンキドゥは「それはまったく困難なことです」と諫めましたが、困難をこそ愛するギルガメシュは退きません。森の番人であり声は暴風、口から炎、吐く息はペストをまき散らすフンババの危険さを説かれても、むしろ戦意をかき立てられ、

「きみのような勇士が死を恐れるのか? もし君の子供たちに『ギルガメシュが死んだとき父上はなにをしていたのか』とたずねられたら、どう答えるつもりだ」

 とやり返されたエンキドゥは説き伏せられ、冒険の準備を始めます。長老たちに計画を明かすと危険だと止められたので太陽神の神殿に向かい、太陽神もこの話を拒絶するとギルガメシュは彼の母、天の女王ニンスン女神にとりなしを頼みました。ニンスンは一番美しい衣を纏い、衣冠をただして太陽神に懇願、涙ながらの懇願に太陽神も心が揺れ、二人の勇士を助ける約束を取り付けます。天から帰ったニンスンはエンキドゥに、彼女をあがめる者がみなつける護符を与え、ギルガメシュを案内するようにと申しつけました。長老たちもエンキドゥが護符を身につけていることで前言を撤回、ギルガメシュに冒険の祝福を与えます。

「エンキドゥは女神が守り給う。王の身を、安んじてエンキドゥに委ねよう」

 かくて二人は出陣し、普通の人間が6週間で乗り越える道程を3日で踏破、山々を抜けて神の森へとたどり着き、その門前に。エンキドゥは細い隙間から中をのぞき、今ならフンババの不意を突けると言っている間に扉が跳ね返り、手を挟み込んでしまいます。この痛みにエンキドゥは12日間苦しみ、ギルガメシュにやはり無謀な冒険はやめようと説き続けましたが、ギルガメシュを翻意させることはできませんでした。

 二人はなお森を進み、ついに杉山に到達します。ここは神々の集会所であり、世界で最も神聖な場所でした。長旅に疲れ切っていた二人は木陰に身を横たえると、すぐ眠り込んでしまいます。

 その夜中、ギルガメシュは山崩れの下敷きになり、その後二度とないような立派な人に助けられる夢を見て目を覚まします。悪夢ではないかと心配するギルガメシュに「それは吉兆です。フンババと戦ってもわたしたちが勝つでしょう」と答えました。二人はふたたび眠りに落ち、今度はエンキドゥが夢を見ます。これはエンキドゥが死ぬことの預言でしたが、ギルガメシュは友にそれをいうことができませんでした。

 さらに進んで、ギルガメシュはついに禁断の杉を切り倒します、すると早速、門番フンババが猛り狂って飛び出しました。この、見る者を意思に変える単眼をもつ化け物の恐ろしさに、ギルガメシュは生まれて初めて恐怖を覚えますが、このとき約束を忘れていなかった太陽神は二人の勇士に力を貸します。フンババの目に向けて焼けつく突風を吹きかけ、その単眼を閉ざさせたので、ギルガメシュとエンキドゥはフンババを取り囲んで殺しました。フンババは慈悲を乞いましたが、二人は聞き入れず、その首を切り落とします。

 この冒険にひとまずの区切りをつけたギルガメシュが沐浴斎戒、身嗜みをととのえると、その美貌は女神も凌ぐがごとし。森の主人であり美の女神でもあるイシュタルはさっそく彼のもとにやってきて、誘惑のささやきをかけます。しかしギルガメシュは応じません。お前はわたしを金持ちにしてやると言うが、引き替えに途方もないものを求めるのだろう、また、お前の淫蕩と不貞をわたしは知っているぞ、わたしもほかの愛人たちと同じ目に遭わせるのだろう、と。

 この言葉にイシュタルが怒るまいことか。ひどく腹を立てたイシュタルは天上の父母のもとにかけつけ、ギルガメシュから受けた侮辱を報告しました。しかし娘の不貞と淫蕩に手を焼いていた父神は取り合おうともせず、当然の報いとたしなめます。イシュタルは泣き落とししながら父に天の雄牛……一暴れすれば大嵐と大地震を起こすとされる……をギルガメシュに向かわせてくださいと哀願。

「聞き入れてくださらないなら、地獄の門を打ち破って死者を解き放ちます」

 というのですから、この女神の性根も相当のものですが、父神はやむなく天の雄牛を差し向けることを承知しました。しかし放たれた天の雄牛は、エンキドゥによって暴れる前に仕留められてしまい、太陽神にその心臓を捧げられてしまいます。イシュタルはまた降りてきてギルガメシュに自分を侮辱したこと、そして天の雄牛を殺したことについての怒りを告げますが、このときエンキドゥが天の雄牛を殺したのは自分であると応じたため、彼の運命は極まることになりました。

 しかしいかに悪辣な性根とはいえ、神というものはあざけられてよいものではなく。因果は応報。エンキドゥはある日、夢に神々の会議のさまを見ました。議題はフンババと天の雄牛を殺したエンキドゥとギルガメシュ、どちらの罪が重いか。罪の重い方が死ぬべきと、神の掟に定めてあったのです。天神アヌはギルガメシュの罪が重いと言いましたが風神はエンキドゥが悪いといい、侃々諤々、議論は紛糾して決着はつきませんでした。目覚めたエンキドゥは自分が死すべき定めにあることを悟ります。

 エンキドゥはその晩、昔、野獣としての気楽な暮らしを思い出し、自分を見つけたあの狩人を思い出し、人間社会へと引き入れた町娘を思い出し、杉の森での冒険を思い出し、そしてあの扉に挟まれた腕の痛みが、生涯最初で唯一の痛みであったことを思い出して、狩人を呪い町娘を呪い、激しくあの扉を呪いました。

 やがて明けの明星。朝の光のいろどりは、エンキドゥにこう語りかけます。

「人間社会でのお前の生活のすべてが闇であったわけではない。今、お前が呪っているものはかつては光であったものだ。あの狩人と女がいなかったら、お前は今でも野の獣のままであったろう。しかるに今、お前は王侯並みの食事をし、豪華な寝床に眠っている。そもそもあの二人がいなかったなら、お前はギルガメシュという、生涯の友に出会うこともなかった」

 そう語るのは太陽神であり、エンキドゥは心が解けていくのがわかりました。今や彼は狩人も町娘をも呪わず、あらん限りに、あの二人に祝福あれと願いました。

 その後、エンキドゥは病を得てみるみる衰弱し、10日後に死にます。ギルガメシュは一枚の布を取り、婚礼のブーケのようにしてエンキドゥの顔を覆ってやりました。ギルガメシュはあちこち歩き回り、子を失った母猪のように泣きわめき、そして輝かしさ、美しさを失った友の亡骸に、「ああ、今こそわたしは死を間近にし、そして恐れる。いつかわたしもこのエンキドゥのようになるのだ」とおののくのでした。

 ひとまずここまでで、次回はギルガメシュが不死を求める旅と、その顛末を書きたいと思います。それでは本日これにて。

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