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くろてんゲーム化エッセイ-14.世界包括神話⁻ケルト編(3)

昨日はほとんど1日中出先だったもので、更新できず済みません。それではケルト編のラスト、フィオナ神話をやっていきます。なんかインド・イラン系は頭の中にあったので簡単だったのですが、ケルトはうろ覚えで調べ直しつつ書いたので大層労力を使うことになりました。小説一話書くのと変らない……。

さておき。今回フィンとオシァンの二人は絶対必要として、ディルムッド・オディナも語りたいですが……先日のノイシュみたいに竜頭蛇尾で終わる予感も。

ともかくまず、フィン・マックールことディムナ・フィン。この名前すごい有名ではありますが、フィンというのは「美しい、美貌の」という意味で、自分の顔が大好きでそう名乗っていたという、相当のナルシストです。ナルキッソスか。実際金髪の腰まである長髪で、肌は白く、神々しいまでの美貌であったと伝わりますが。ちなみな母マーナは神王ヌァザの孫に当たるので、フィンもまた半神的英雄でした。いやまあ、「ケルト民話物語集」という作品があってその中でフィンは頭でっかちのもやしっ子で蛮族なクーフランに喧嘩売られて腰抜かすとか、そういう説話もたまーに、見受けられるんですが、一応は堂々たる「フィアナ騎士団」の団長。

師匠はフィネガス。といっても武芸のではなく、知恵の方です。ボアーン(ボイン)川ほとりに住むドルイド僧、フィネガスは全知を与える「知恵の鮭」を7年間探していましたが、これを見つけて喰ったのがフィン。フィネガスは「お前、ディムナゆーたばってん、他に名前は?」フィン「フィンゆわれとります」この名前にフィネガスは大いに驚き啓示を受け……フィネガスは知恵の鮭のことをフィンと呼んでいたので……「お前は聖なる知恵の人になるんや!」と改めて鮭をフィンに与え、それによってフィンは勇気プラス知恵までをも身につけたというお話。

父クール(故人)の地位を継ぎたいと願ったフィンは父の仕えたターラ王の元に単身、向かい、その放胆からターラ王より騎士に叙任されます。こののち人々を苦しめる妖怪……竪琴の音で眠らせ、炎の吐息で焼き殺すというバケモノ……がターラを脅かし、フィンはこれを討伐してフィアナ騎士団の頭領に任命されました。このとき使われたのが「魔の槍」というもので、たぶん原語では「○○ボルグ」とかそれに連なるものだと思われますが、これは必中必殺、ということではなく「竪琴の魔力を払う」ために使われました。かくしてフィアナ騎士団団長となったフィンは男には寛容、女には優しさを示し、万民に暖かみを向ける騎士団長としてフィアナ騎士団を最盛に導きます。詳述は避けますがフィアナ騎士団入団試験というのは非常に厳しい上、それを優雅に独創的に決めなければならないとあってなかなか、なれるものではなかったとのこと。

ちなみにフィンは二匹の猟犬ブランとスコローを飼っていましたが、この二匹はフィンの母の妹チレンの子です。妖精に一方的に恋情を向けられたチレンは魔法で犬に変えられた上でレイプされ、この二頭を産みました。まあともかくこの二頭がフィンをある場所に連れて行きます。そしてフィンが気づけば美しい女性が。女性の名はサヴァ、妖精の求愛を断ったため鹿にされた女性でしたが、フィンに遭うことで……じっさいもっと細かい条件ありですが……呪いが解けるとされていてここに解呪されたわけです。事情を聞いたフィンはサヴァに惹かれ、同情もあり、求愛してやがて二人は結婚。フィンが七日間戦場に赴く間にサヴァは偽物のフィン(妖精が化けた)に連れ去られ、七年が経過。サヴァは貞節を守って自分とフィンの間の子を育て抜き、フィンはようやく自分の息子に巡り会いました。この子がオシァン(子鹿)です。もうひとりファーガスという息子もあるのですが、戦士として勇敢でフィアナ騎士団の語り部としても有名なのがオシァン。そのものズバリで「オシァン」という、オシァンその人の口述によるとされる、ケルト・フィアナ騎士団の問答集みたいな著作があるくらいです。

ちなみにフィアナにはディルムッド・オディナという騎士がいて、美貌と勇敢を兼ね備えた理想的な騎士でしたが、フィンが後妻にと見初めたコルマック・マックアート王の娘グラーニャと駆け落ち(当時祖父さんになっていたフィンを嫌って、グラーニャの方からディルムッドを口説いた)しますがフィンはここで寛容さをかなぐり捨てて執拗に二人を追跡、ディルムッドを殺し、グラーニャを妻とします。いやまあ、そうなるまでグラーニャはディルムッドと自分の息子たちにフィンの命を狙わせたりするんですが。

ディルムッドの話はさておき、フィンの息子オシァンです。母は前述通りにサヴァで、シーという、妖精というか半妖精というか? そういう存在でした。バン・シーとかケット・シーとか、そういうとわかりやすいと思います。それで、妖精で悪のドルイド僧ドゥル・ヴァハによって鹿に変えられたサヴァを、フィンが救って妻にしたのは前述通り。

成人したオシァンはフィアナ騎士団最高の詩人にして最強の騎士の一人になり、フィアナ騎士団がほろびさらにずっとずっと時間が経ってキリスト教の聖パトリックに出会うまで長生きすることなります。これについては後述。

フィアナ騎士団の最激戦と言われるガウラの戦い、これにも生き延び(息子オスカーはここで戦死)たオシァンですが、このとき妖精の女王ニャヴという女性が、オシァンを迎えに来ます。妖精の国……正しくは常若の国であるティル・ナ・ノーグの主マナナン・マク・リルが、娘婿に王座を奪われるという予言から美しいニャヴをブタ顔の女性に変えていましたけども、オシァンと結ばれれば呪いは解けるという条件がついていました。本質を見るオシァンは彼女を受け入れ、たちまちニャヴは本来の美貌を取り戻します。

本来の姿に戻ったニャヴを見て、オシァンは一発で参ってしまい、そしたらニャヴは「一緒にティル・ナ・ノグにいくことをあなたのゲッサ(誓い=ギアス)とします」ということで常若の国に行くことに。ちなみになんでダーナ神族がティル・ナ・ノグなんて僻地というか隠れ里に住んでいるかというとこの時期、ダーナ神族はミレシウス族……おそらくはローマ=キリスト教圏の種族と思われます。確か古代秘教のどこかにミレシウス派ってあったはず。この時期から旧来のケルトの神は排斥されて「妖精」に堕とされ、かつてあったケルト神話の代わりに押しつけられたのがアーサー王伝説、という流れが始まりつつありました。かつての神々は敗れてひっそり隠れ住む時代になっていたのです。世知辛い。

さまざまな冒険を経ながら、オシァンとニャヴは3年、一緒に幸せに過ごしました。しかしオシァンの心の中にはやはり、父フィンや仲間の騎士たちの様子を知りに戻りたいというものがあり。ニャヴもオシァンの真摯な願いは断れずこれを聞き入れます。ただし、「白馬から絶対に、足を地に着けてはいけません」というゲッサを付け加えますが。そしてオシァンは3年ぶりに地上(エリン)に戻るのですが、地上では300年間が経過していたという、浦島太郎状態。そして人々が大岩を動かそうとして苦闘しているのを見たオシァンはきやすく彼らを助けようとして、足を地に着け。その瞬間300年分の時間が経過して老人になってしまいます。で、このときすでにアイルランドを征していたキリスト教の聖パトリックが彼と出会い、オシァンの後述を元にありし日のフィアナ騎士団の様子を著した、とされています……けれども聖パトリックが実在ではないという説がかなり強く、アイルランド人が過去の栄光を伝えるために創作した架空の人物といわれています。それでも「オシァン」の文学的価値が下がるものではないですが。

以上早足でダーナ神話、アルスター神話、フィアナ神話でした。他にもブランウェンの話とかタリシエンの話とか語りたいところはたくさんありますが、その辺は原書房「マビノギオン」をお読み下さい。

昨日更新できず済みませんと冒頭に書きましたが、今日も役所関係に渉外担当として行かねばならず、たぶん他にはなにも出来ません。今のうちに謝罪しておきます。申し訳ありません。

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