こんばんわ、本日もまた遠蛮です。
ここ1ヶ月ほど毎日更新していますが、別に無理して書いているわけではないのです。自分の中には最終回、辰馬くんと瑞穗さんの息子(次男のほう。長男は夭逝)、乕が数十年経っても若いままの雫お姉ちゃんに鍛えられて立派な冒険者として旅立つというラストも道中のストーリーも全部完成しておりまして、あとは大枠すでにできあがっている幹から作品を削り出すだけ。遠蛮の更新スピードが異様なのはそういうことで、もし30年近く連れ添ったくろてんという作品以外を新しく作るとしたらこんな速度にはまずならないでしょう。
で。本日も画像がないのですが、話すネタはあるかなと。昨日はあっちゃこっちゃの歴史と神話の話をしましたので、「じゃあそういう知識を得るにはなに読めばいいわけ?」という、簡単に言うと書評です。ブックレビュー。とはいえ遠蛮の自室には歴史書の和書だけで2000冊ばかしあるので、さすがに全部語ることは不可能。とりあえずよさげなのをピックアップして、何冊か。
まず筆頭はヴェロニカ・ウェッジウッドの「ドイツ30年戦争」。実のところ100年ほど昔の本なのですが、これ以上わかりやすく30年戦争を理解するのは不可能、といっていいほどの必携書。体裁としてはノンフィクション小説で、三国志とか銀英伝がお好きなら間違いなく好きになる世界。ときは17世紀、というわけで戦車と戦闘機と爆弾がまだ登場しないのもいいです。あれが出ると途端に戦場が殺伐としますから。やはり火縄銃(マスケット)までが許容範囲だと思うのです。30年戦争関連だとほかに「世界史の名将たち」「リデルハート戦略論・上」「ヨーロッパの傭兵」「ルイ14世ーフランス絶対王政の虚実」とか「絶対王政主義と身分制社会」、あと「スウェーデン絶対王政研究」なんかも好著です。最後のはスウェーデンの歴史を扱う割りに、英雄グスタフ・アドルフ2世にはあまり触れないんですが経済のこととか書いてあります。近い次代で「スペイン継承戦争」やら「プリンツ・オイゲン・フォン・サヴォア」やら「イギリス・ピューリタン革命」なんかも。ほかにはウェストファリア条約関係ですが、たぶん条約とか法律とか、そのあたりは興味もたれないであろうということでカット。
次は……イスラーム行きますか。理由は単純に遠蛮が好きだからと言うだけですが。「イスラーム原典叢書-世界征服史1~3」まずこれ。歴史書というかイスラム文学だろという文章です。もしかしたらうちにある10000冊のうちで一番格調高い名文かも知れません。ただし、その名文の端々に訳注が入ってなんか台無しな気分になりますが、訳注なしでは意味をなさないので仕方ない。やはり1巻が最高峰で、ハンニバル以上の包囲殲滅の天才、ハーリド・イブヌル・ワリードの活躍が余すところなく日本語で読める、これだけで英訳の手間が省けます。似た分野(イスラーム)の本としては「ティムール帝国支配層の研究」「ティームール朝成立史の研究」、「マムルーク朝」「イスラームの英雄サラディン」「アジアの帝王たち」なんかでしょうか。ハーリドは天才ですがティムールだって天才。世界で2番目の大帝国ですからね。中央・左・右の三翼をそれぞれ前後の六翼に分けることで機動力と突破力を兵士たちに与えたのは有名なところ。
イスラームの好敵手だったローマ史は書籍がやたら多いです。まず外せないのはギボン「ローマ帝国衰亡史」現在ではかなり時代遅れになった考え方も散見されますが、まずこれなしではローマ史全体がつかめない。塩野七生先生による「ローマ人の物語」も名著ですが、甲乙つけがたいです。「あと古代ローマ名将列伝」はっきり言えばコルブロの為だけに買った本ですが、ほかの部分もまあまあ。他「ジョン・ホークウッド(くろてんに登場する傭兵隊長「ジョン・鷹森」はこの人の名前をもじりました)」やら「ボルジア家風雲録」も。ボルジア家のほうは著者、アレクサンデル・デュマです、三銃士の。あとローマというかローマを破壊した側ですが、「ノルマン騎士の地中海興亡史」。これにはロベール・ギスカールというこれまた天才戦術家が出てくるのでぜひ。
100年戦争とか第3次十字軍、モンゴルの嵐とかあのあたりはご紹介の必要ないでしょう、いくらでも本屋さんに転がっていますので。次はいよいよヤン・ジシュカ関係。くろてん3章で敵の騎兵前に荷車を並べ、突進を止めたうえ地面に古着や下着をまいて足を取らせる、という描写やりましたけども、あれは独創ではないのです。実際ジシュカがやってのけた偉大な戦術の、微小な模倣。というわけでご興味持たれましたら一番参考になるのは「チェコの歴史と伝説」これにズバリ、ヤン・ジシュカの物語が入っているのでぜひ。ほか「プラハの異端者たち」「フシーテン運動の研究」「近世軍事史の震央」とそれにあと決定版になりえるものとして、漫画ですが「乙女戦争」というものがあります。詳しいことはネタバレなので控えるべきでしょうが、ジシュカがフス派・ターボリストの指揮官として登場します。渋い爺さんで。この時代の辺縁として「ドラキュラ公ヴラド・ツェペシ」なんかがありますね。個人的には「カルパチアを越えた鷹」ことシュテファン大公が好きなのですが、この人主役の作品はまだ。ただしシュテファンの血縁であるヴラド・ツェペシの漫画ならありますね、「ヴラド・ドラクラ」です。とにかく絵柄が恐ろしく精緻で、考証も確か。これは乙女戦争も同じですが。
歴史愛好家、あるいはここから歴史に入ってくる方にいい本を紹介したいわけですが、他となると戦術概要書ばかりになりますね。まずクラウゼヴィッツ「戦争論」。もともと完成した作品ではないので本来、評価されるべきではない代物なのですが西洋では孫子ばりに評価されてます。あと「戦闘技術の歴史」1-5巻もなかなか。資料としてのイラストが豊富で「この時代の鎧ってこんなか」と思えるのがよいです。「世界戦争史」「戦略思想家事典」あたりも鉄板。「現代戦略思想の系譜」にスヴォーロフの詳しいことが載っているのですが、まあ戦略思想家事典のほうにも少々載ってるし、洋書なら持ってるしと売却。今にして後悔しています。さらには古いですが人物往来社の「世界の戦史」というシリーズもためになりますので、古書店が近くにあったら見つけてみてください。
ほかにもたくさん‥日本史と中国24史合わせたらえらい数になってしまうので、まあこちらも皆さまご存じのこと多いであろうということで割愛。とりあえず中国もの=24史全読を絶対条件にしてしまうとたいへんなので、興味があるところだけでも原文を読みましょう。「宋史」なんかだと40冊にもなりますが、「新五代史」なら3冊です。学生気分に戻って漢文の勉強だと思えば、大体どこを切ってもしっかり、軍略兵法のお話と英雄豪傑がでてきます。ほかに和書だと東洋歴史大事典と、全訳武経七書シリーズ。小説で読みたいという方は陳舜臣先生の「中国の歴史」に勝るものなしです。日本史は戦国時代以外ほとんど無学なので、そこから選ぶとして九州人なので「黒田官兵衛と24騎」あるいは「島津4兄弟」さらには「肥前の熊・竜造寺隆信」あたりでしょうか。とくに竜造寺は島津のような血統書つきではなく、ぽっと出の成り上がりというところがまたよきです。
だいたいこんな感じですが、エロゲ制作エッセイなのに今回エロ要素まったくゼロでした、申し訳ありません。まず明日か明後日には絵師様にお渡しする「こんな絵描いてください」の拙いラフがまず1つ完成します。それをお渡しして2週間日ぐらいで、広輪様の「ラフとは思えないラフ」が届くのではないでしょうか。なのでそこまで、お付き合いいただけると幸いです。