家に帰ると、とある黒猫さんからお手紙が届いていた。
すぐさま電話をかけて、再配達をお願いする。
最近は一段と冷えてきて、冬の到来を告げるかの如く吐く息は白い。そんな寒い夜をひた走る黒猫さん。
ほどなくして、無事に届けられた荷物。中身は分かっている。ポストに投函された手紙に、差出人の名前(通販サイト名)が書かれていたから。私はまるで、待ち望んだクリスマスプレゼントを開ける子供のごとく、その荷物を開封した。
そこには、東京銀経社アンソロジーという一冊の本が収められていた。
東京のどこかにあるという東京銀経社。裏面を見れば、ロゴマークが中央にポンと配置されている。シンプルながら、実に良い。惑星とそれを取り巻く円環。惑星と円環が重なる部分には星々が散りばめられ、後述する星の煌めきを表現しているかのように感じられた。惑星のてっぺんには、ポツンとビルが建っている。惑星そのものに比べれば、主張は控えめと言わざるを得ないものの、決して引けを取らないその存在の大きさには目を見張るものがある。白く縁取りされた明朝体のフォントで書かれた「東京銀経社」の文字もシンプルかつ、惑星との親和性も非常に高く感じられた。何を言いたいかというと、「素晴らしい!」の一言に尽きるのである。
さて、話を戻そう。裏から表に返そう。表裏一体。
改めて、表紙を見てみれば天文台? を模したような建物から見上げるような形で、息を飲むような銀河が広がっている。東京の地から見上げた銀河なのか、はたまた郊外の地か。そんなことは、些事だと、天に向かって匙を投げてしまいたくなる(銀だけに)。そんな、天に向かって投げた匙が私の頭に直撃する前に、ささっと場所を移動して。
九頭見灯火様主催の企画にて、選考を突破した全16作品。それはまるで、九頭見様の導く灯火の下に集まった、星々の煌めきのよう。あれが、一等星、これは二等星。なんて、野暮だ。どの作品もそれぞれの輝き方があるのだから、そもそも比肩すること自体が無意味であるし、九頭見様がアンソロジーに収録した(採用した)という点において、作者の名前一覧に(比べるのではなく)肩を並べているのだから。
なんてことをつらつら書いてきたは良いものの、現時点ではまだビニール袋を解いてすらいない。この後、じっくりと最高の一枚を撮影して、X上で上げるつもりだ。
……おっと、もう一つ。大事なことを忘れていた。他の方々の到着ポストを拝見してすでに知ってはいたものの、その厚さには現物を見ると改めて驚かされた。個人的には「良いぞ、もっとやれ(オイ」なんてことを冗談と本気半々で思っていたのだけれど、現実を手に取ってみると、そんな軽口はしっかりとチャックをしておこうと思った。(ちなみに、厚さだけを見て『食パンの4枚切り(3枚切り?)位かな?』と思ったことを、こっそりとここに書き加えておく。間違っても咥えたりはしないのでどうか安心してほしい。……いや当たり前なのだけれど。)
さて、そろそろ筆をおこうと思いつつも、着地点を見失ってしまって、これでは不時着しかねない状態なので、副題である
いつかあの空を越えて から感じたことを添えて、どうにか軟着陸させようと思う。
いつか、ということは、決して少なくない時間がかかることを示唆しており、あの空を越えていくということは、何か飛行機なり、熱気球なり(←?
が必要になるということで。ともすれば、途中に様々な障害が待ち受けているのかもしれない。(事前に知っている場合もあるだろうし、未知のアクシデントに遭遇する場合もあるだろうし)
それでも、あの空の向こうには何か登場人物たちにとって、待ちわびた何か・望む何かがあるということで。
それはともすれば、このアンソロジーに収録されている作家の方々なのかもしれない。その導き手となるのが、九頭見様。その灯火で以て、作家の方々、果ては読者の一人一人に至るまで一人残らず、新世界へ連れて行くような。
そんなワクワク感が詰まった、大ボリュームの一冊。贅沢に味わいたいと思うのである。